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在の若い人の役に立つ授業をしなければならないと悩んだりし

ます。アニメーターはもの言わぬ種族ですから教壇で考えを整

理して話すというのは新鮮な体験です。


― 是非、講義を聞いてみたいですね。


大塚とんでもない。来ないで下さい。最近では開き直って

少し気持ちを楽にして話すようにしています。でも何時も何

とかしてこの連中の中からベテランを輩出し、あとで、あの時

ぼくの話を聞いてて良かったと思ってくれることを夢見ていま

す。相手があるだけに自分で楽しみながら原画を描いていた

時よりキツい感じはします。それが先生の仕事なのです。


現役アニメーター引退の動機「後進に

席を譲る年」


― でも、ぼくたちファンとしては大塚さんにはまだ現役のアニ

メーターとして腕を振るってもらいたいのですが ……。


大塚繰り返しますが、アニメーターの仕事は六〇を過ぎた

ら無理です。ぼくはこの七月で六五ですよ!三〇代の頃、ぼ

くは、六〇代と言えばクソじじいで、早く引退してぼくらに映

画を作らせて欲しい!と思っていましたから、その自分が六

五になった今、いわゆる「後進に席を譲る」のが常識ではな

いでしょうか。

高畑さんや宮崎さんは演出ですから、うまいアニメーターを

養成しておけば、そんなに激務ではなくて続けられると思いま

す。しかし、アニメーターの仕事は這うような速度ですから、

はじめに言いましたように、いい仕事をしようとすれば、帰り

は毎日十二時、一時の世界です。これは体力的にも出来ませ

ん。

それに作画監督などという、人の絵を直すという因果な仕

事を何年も続けていると、自分が描いた絵でも際限なく直し

たくなるし、昔に比べてうまいかもしれませんが、活力はない

ことが自分で分かるのです。テレコムの若い諸君の絵を見る

と、思わず直したくなるような欠点もある代わりに、若さが持

つ活力のようなものがあって、それはそれで貴重なものに思え

て手を出しません。

「監修」とかいうのも考えもので、担当する人の個性を尊

重することなく、自分を押しつけるのは嫌ですから、人の絵を

見ると心の中で俺が描いたらなあ……と思うことが多過ぎて、

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― 映画「長靴をはいた猫」

より ―

大塚氏が原画を担当した魔王

ルシファの変身シーン