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っています ……。


―そこら辺りをもう少し詳しく伺えるとありがたいですが…

…。


大塚あくまで仮説としてお話しします。

日本人は静的な画面でも、その間に自分の想像力を重ねて

楽しむことが出来る能力があるとか、良く出来た「止め」の

絵を鑑賞したいと思っているとか、一寸他の民族と違った感

性を持っている― と考えてみると、こうしたことが受け入れ

られる土壌が見えて来ます。

ぼくたちの日本文化の伝統の中に、静的なものを受け止め

る何かがあるのでしょうね。歌舞伎や、能のようにキメのポー

ズが大事で、その間をつなぐ動きはむしろ邪魔だと思えるほ

ど、様式化してある。あれがいまでも、われわれ日本人の美

意識のどこかにあるんじやないかなぁ……。

今では日本のアニメーターのベテランといわれる人でも、止

まっていて格好いい「絵」を志すタイプの人が実に多いので

す。それはスケジュールがないから動かせないのではなくて、

もっと積極的に、動かしたくないと言ってもいいでしょう。ぼ

くでさえ良く出来た絵はもっともっと長い間止めて見せたいと

いう欲求にかられますから……。

そこには、観る側にも影つきの格好いい止めのカットがたく

さんあることを好む、という風潮があってのことで、観客の支

持なしには普及しないものだし、スケジュールがないからそう

している、と言うのでは成立しないのです。

あるアニメーターがアニメからイラストレーターに転向する

としますか ……。その時、彼はアニメーションに愛想を尽か

したのではなく、アニメでも出来るだけ自分の絵を止めて見せ

たかった。アニメとイラストの違いは媒体がフィルムか、紙か

というだけだった…… そうとしか考えられませんね。ぼくに

は。

これがアメリカだったら劇場はブーイングの嵐になるでしょ

う。アメリカの観客は貧欲ですから、アニメといえば、ディズ

ニーのようにぜいたくに動き回らなければ承知しません。最近

でこそ西海岸の一部のマニアが日本製アニメに親しんでいま

すが、一般の観客にはよく説明してからでないと、あの「止

め」のカットの洪水にはひどい違和感を与えると見えて、ハリ
ウッドで「オネアミスの翼」(注 1 7)の試写を見た人の話では、た

った六秒の全く動かないカットでさえ、客の何人かが映写機

が壊れたのかと思って後を振り返ったそうです。

長くなりますからやめますが……。いずれにしても、局も

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「オネアミスの翼
王立宇宙軍」より