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原作者の個性を尊重して映像化するプ

ロの仕事


―ルパンの乗馬ずれというのは初耳です。動かすのは難しいで

すか?


大塚難しくはありません。研究する時間と、原動画に徹底
出来れば出来ますけど。「じゃりン子チエ」(注6 )
のなかで、お

やじのテツというキャラクターがいますね。孤独で、喧曄好き

で、ものすごく個性的な人物ですが、このおやじが歩く時は、

ちょうどナチ・ドイツ軍の分列行進のように、足をまっすぐに

前へ高く伸ばして、そのまま曲げないで降ろす。そうして腕を

組んだままダッダッと進みますね。あれは高畑さんが原作のコ
マのポーズをそのまま動かすように小田部羊一(注7)さんに指示

して、何度もトライしてみて決めたもので、そうすることによ

って、はるき悦巳さんの原作のテツがそのままでスクリーン上

で命を与えられているのです。高畑さんはその他のキャラクタ

ーについても原作の中のポーズをそのまま使って動かすことに

とても配慮していました。「チエ」の場合、その配慮が必要で

した。

ぼくはあれが原作者の個性を尊重して映像化するプロの仕

事だと思います。でも、出来ることと出来ないことっていうの

がありますねぇ……。ルパンでぼくが最初にやった仕事は、モ

ンキーさんの原作のポーズを選んで、そのまま拡大して原画全

員に配布することからはじめたのですが、その出来そうもない

ポーズは、外して選んでいますね。今見ると……ぼくたちは

動いてどうなるかで原作のキャラクターを見るくせがついてい

るようです.


― 顔や表情については?


大塚モンキーさん自身が描かないかぎり、別の人が模写し

ただけで、印象が違ってしまうものですが、ルパンでは何とか

してそのままスクリーンに出てくるつもりが、ずいぶん違っち

ゃったなぁ。

その原因はね、五右衛門を例にとりますか。「旧ルパン」の

五右衛門の眉は線一本ですが、今度のは二重線で太くなって

いますね。眼も「旧」では釣り目、切れ長で細い。今回はパ

ッチリしている。実は原作をよく観ると両方に解釈できるので

す。極論すると原作ではルパン、五右衛門、不二子、銭形は

同じ眼、同じ眉なのです。ルパンも五右衛門も銭形と同じ割

IMAGE imgs/oh_interv06.jpg

原作のルパンは確かに内股に描か
れている
(モンキー・パンチ著
「新・ルパン三世」双葉社より)
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右)
足をまっすぐのばして走るテツ
(はるき悦巳著「じゃりン子チエ」
双葉社より)