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います。


― う〜ん……。劇場用でそのスケジュールはぼくのような素人でも信じられませ

んね。


大塚ところが一概にひどいスケジュール、予算とも言えないのです。どんなフ

ィルムを作るか、という考え方の違いですから ……。

これまでにぼくが言ったのは、ぼくや宮崎さんが志している種類の映画、アニ

メならアニメらしく「よく動いている」金のかかる動画のことで、そのスケジュー

ルで出来る程度の、紙芝居に毛の生えたような(悪口になっちゃったなあ……)

ものなら、そして局もスタッフもそれでいいと思っているのなら、ついでに言えば

お客さんもそれでいいと言ってくれているのなら…… それでいいんじゃないでし

ょうか。

モンキーさんはアニメーターではありませんから、動かすことより、ご自分のオ

リジナルの「絵」がそのままスクリーン上に展開することを望んでおられた。だと
すれば、「止め」(注1 6)だらけで、別に動いてなくても欲求不満は起こらない。それ

どころか、ご自分で直接フィルム作りを体験したことで、満足だったということ

だってあり得ると思います。「止め」だらけと言っても、今はそれを巧みに処理す

るテンポのいい演出手法が普及していますからね。


格好いい「止め絵」を楽しむ 日本人の文化的伝統と美意識

―そこを聞きたいですね。具体的にはどんな手法ですか?


大塚え〜と、たとえばですね…… ある男が怒号を発して飛びかかるというシー

ンを想定してみてもらえると分かります。まず顔のアップ止め、ロパクで「ウオ

ッ」と叫ぶ、二枚くらいで画面からアウト、二カット目はその男が宙を格好よく

飛んでいる「止め」流線付き背景を流す。最後に驚いている相手の顔にさく裂

するパンチ。全部で動画枚数十枚くらい。

二人の関係位置、地面を蹴って飛び上がる様子は見せません。見せるとすれ

ば足のアップだけです。

こうしてアクションをばらばらにしてテンポをあげる手法は、戦後アメリカのア

クション映画で流行ったのですが、日本ではアニメの省力のための方法として確

立した感があり、アクション・シーンだけでなく大袈裟にいえば九〇%の日本製

アニメのカット割りが、低予算でも出来るノウハウとして定着しているのです。

驚くべきことは学校の卒業制作などでも、生徒たちの作品は全てこの手法が受

け継がれていて、若い人の間で「格好いい!」と思われているのです。日本のア

ニメはこうした「劇画的」と言うか「コマ漫画的」とでも言うべき手法によって

低予算、大生産量を誇っていますが、そうした低予算映画を成立させているのは

誰かといえば、実は日本の観客大衆の美意識に起因するのではないかとぼくは思