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代々木アニメーション学院
96年 入学案内用資料より

専門学校は安全な砂浜プロダクション

の現場は大海


― そうすると、たとえば絵に自信もあるし、演技もうまい生徒

には不満ということはないですか?


大塚生徒にはかなりの幅があって、すぐに使えそうなうまい

人もいれば、ロクに絵が描けなくて、何となく憧れて来ている

人もいるわけで、中には「どうやったら絵が描けますか」など

という人がいたりします。それが学校なのです。学校は本当に

優しくて、決して厳しいものではありません。入って来る若者

は学校と自分の未来に夢を託して来ます。で、来て学んでみ

ると「あ、こりやぼくの、私の仕事ではないな ……」と思う人

と、卒業後現場に飛び込んでみて似たような判断をする人…

… ま、色々いると思いますが、プロダクションは違います。こ

こで飯を食わなければならない、という厳しい現実があります

から、構えが違っている。学校ではそうは行きません。厳しく

出来ないのです。

学校の基本的な課題は全体として、ごく初歩的なきれいな

線や、中割りくらいは出来るようにして制作現場に送り出すこ

とで精一杯ですから、ケタはずれにうまい人は、やや不満を残

す可能性はあります。もし天才のような人がいたら学校では扱

いにくいかもしれませんね。まだ出会っていませんが……。

でもね、ぼくに言わせるとそういう人でも学校できちんとし

た基礎から教わることを勧めます。ぼくたちのやっているアニ

メーションは集団作業ですから、集団の中で自分の位置を見

つけながら、その才能を集団によって支えられる訓練をしてお

く必要があるのです。学校はその予行演習みたいな感じがしま

す。

と言うのはね、小さい時からアニメが好きで、絵もたくさん

描いて来た。で、学校に入ってみて「自分よりうまい奴がこん

なにもいる!」とか「自分ではうまいとは思ってなかったが、

周りはもっと下手くそだ!」とか、言い換えると、同世代の間

での自分の位置を発見する機会に恵まれるのです。才能という

のは相対的なもので、他と比較しながら確かめることの方が多

いのです。

現場はそうは行きませんね。少々うまい人でもキャリアのあ

る先輩にはかなわないものですから、下手で当然と思って納得

してしまう。納得してはいけないのです。

大塚康生先生の講義風景