7世紀はじめにアラビア半島に起こったイスラーム教が、1世紀もたたないうちにシリア・パレスチナ、メソポタミア、エジプト、イラン高原に広がり、西アジア(エジプトも含め)すべてを一つの宗教的権力のもとに統合された。そして、それ以後のイスラーム世界は、西アジアの範囲をはるかに超え、西はイベリア半島、北アフリカのマグリブ地方、北はバルカン半島、黒海北岸から中央アジア、東はインド、東南アジア、南はアフリカのサハラ以南までに及んでいく。
作業1 次の地図で上記の地域を確認し、イスラーム教圏の拡大の過程を理解する。
→ イスラーム世界の成立(8世紀) |
T イスラーム世界の形成<7世紀〜9世紀> 流れをつかむ ←クリック
@ムハンマドのアラビア半島統一 → A正統カリフ時代 → Bウマイヤ朝 → Cアッバース朝
以上は、イスラーム帝国が成立して、宗教的権威であるとともに政治的支配者であったカリフのもとにイスラーム教徒集団(ウンマ)が統一的に支配されていた時代。
U イスラーム世界の展開<9世紀〜14世紀> 流れをつかむ ←クリック
@アッバース朝の衰退 三カリフ時代 → Aトルコ系民族の自立 → Bセルジューク朝 → C十字軍時代 → Dモンゴルの侵入
9世紀頃からアッバース朝のカリフの権威は衰え、地方に独自の非アラブ人政権が生まれ、イスラーム世界は分裂。しかしイスラーム教そのものは神秘主義運動などによって拡張された。新しい主役となっていくのがイラン人やトルコ人。またイスラーム世界の分裂は、13世紀に十字軍とモンゴルの侵入という外敵を初めて迎えることとなる。
V トルコ・イラン世界<14世紀〜17世紀> 流れをつかむ ←クリック …… 詳細は次回
@ティムール帝国 Aオスマン帝国 Bサファヴィー朝 の各王朝が、イラン高原と小アジアに興隆。
T イスラーム世界の形成
1.イスラーム教の成立とアラビア半島統一 | |
6世紀後半 610年 k 622 年 630年 632年 |
a ササン朝ペルシア とb ビザンツ帝国 の抗争のため、「絹の道」・紅海貿易が衰退。 → アラビア半島西南部(ヒジャーズ地方)のルートか繁栄 → c アラブ 人(アラビア半島の砂漠で活動したセム系の遊牧・商業民族)の活動。 d メッカ などの商業都市の繁栄。 ※イスラーム成立以前の時代を、e ジャーヒリーヤ という。 メッカの有力な商人f クライシュ族 のハーシム家のg ムハンマド が h アッラー の啓示を受けi 預言者 として自覚し、j イスラーム教 を創始。 7月16日 l メディナ に移住=m ヒジュラ(聖遷) →n イスラーム暦 元年とする。 ムハンマド、d メッカ 征服。o カーバ の偶像を破壊し神殿に造り替える。 → アラブの諸部族、その支配下に入る。=p アラビア半島 を統一。 ムハンマド没。 |
2.イスラーム教のまとめ | |
・意味 ・特徴 |
「a アッラー への絶対的帰依」を意味する。 1.厳格なb 一神教 であること。 2.c 偶像崇拝を否認 していること。 3.d 祭政一致 であること(カリフによる統治)。 4.e コーラン にもとづく厳格な信仰(f 六信 )と生活規範(g 五行 )の遵守義務。 |
h 『コーラン』 ・ 六信 ・ 五行 |
ムハンマドに下されたアッラーの啓示。i アラビア語 で書かれる。 ムハンマドの死後、第3代カリフのウスマーンの時に成立。 j アッラー ・天使 ・啓示(コーラン) ・預言者 ・来世 ・宿命 k 信迎告白 ・礼拝 ・断食 ・喜捨 ・巡礼 |
3.イスラームの社会 | |
a ムスリム b ウンマ c 啓典の民 |
イスラーム教の信者のこと。神に身を捧げたもの、の意味。 広くは人間すべての共同体を意味するが、特にイスラーム教徒の「共同体」のこと。 イスラーム世界のアラビア人以外で、d ユダヤ教徒 と キリスト教徒 のこと。 = ムハンマドは旧約聖書・新約聖書も神の啓示の書として認めたので、この両教徒は e ジズヤ(人頭税) を納めることを条件に、その信仰が認められた。 → 正統カリフ時代には、ゾロアスター教徒・仏教徒にも拡大された。 |
U イスラーム世界の拡大
1.正統カリフ時代 | |
632年 i 642 年 661年 |
ムハンマドの後継者=a カリフ を選出。以後4代をb 正統カリフ時代 という。 カリフの指導のもと、大規模なc 聖戦(ジハード) を行う。オリエント全域を支配。 征服地に軍営都市(d ミスル )を建設。兵士と家族を入植させる。 =イラク南部のe バスラ 、イラク中部のf クーファ 、エジプトのg フスタート など。 初代h アブー=バクル ムハンマドの妻の父。 2代j ウマル k ササン朝ペルシア をl ニハーヴァンドの戦い で破る。 さらにm ビザンツ帝国 からシリア・エジプトを奪い、穀倉地帯を手に入れる。 3代n ウスマーン ウマイヤ家出身。(シーア派はカリフと認めない) → 征服地の分配、力リフの選出などをめぐり、イスラーム共同体の内紛起こる。 4代o アリー 、ムハンマドの従弟で、娘ファーティマの夫。 → シリア総督のウマイヤ家のp ムアーウィヤ と争う。 暗殺される(q ハワーリジュ派 による)。シーア派は初代イマームとする。 |
2.ウマイヤ朝時代 | |
a 661 年 680年 |
ムアーウィヤ、b ウマイヤ朝 を創始。カリフは世襲制となる。都c ダマスクス 。 →d スンナ派 とe シーア派 の対立が始まる。 カルバラーの戦い シーア派のフセイン(アリーの子)、ウマイヤ朝と戦い敗死。 |
※イスラームの分裂 ・d スンナ派 ・e シーア派 | ウマイヤ朝のカリフを認める多数派。ムハンマドの言行(スンナ)を守り統一を重視。 第4代カリフのアリーの子孫のみを指導者(イマーム)とする少数派。 → 穏健派のf 十二イマーム派 、過激派のg イスマイール派 などに分裂。 |
※領土の拡大 711年 732年 |
ウマイヤ朝のもとで、イスラームの勢力圏、東西に広がる。 ・東方:h ソグディアナ (アム川とシル川の間)とインダス流域に広がる。 ・西方:北アフリカ(i マグリブ 地方)のベルベル人を征服。 さらにj イベリア半島 に進出。→ k 西ゴート王国 を滅ぼす。 → l フランク王国 に侵入。m トゥール=ポワティエ間の戦い で敗れる。 |
※征服地の支配 ・o マワーリー ・r ズィンミー ※非アラブ人の不満 ※ウマイヤ朝の社会 |
アラブ人が帝国の支配者として特権を持つ。 → n アラブ帝国 と言われる。 ・アラブ人以外の被征服民で改宗した人々をという。ウマイヤ朝では改宗者に対しても、 p ハラージュ(地租) とq ジズヤ(人頭税) の負担が義務づけられた。 ・改宗しなくともp ハラージュ(地租) とq ジズヤ(人頭税) を納めることで、 その信仰と自治的な社会生活が認められた。庇護されるもの、の意味。 アラブ人以外のイスラーム教徒(イラン人、トルコ人など)の不満強まる。 → ムハンマドの叔父の子孫s アッバース家 の勢力が強まる。 t ホラーサーン 地方(イラン北東部)を拠点に、ウマイヤ朝打倒運動を始める。 695年 貨幣を発行 → u 貨幣経済 の発達 → v アター :官僚・軍人に、征服地の租税から現金で支給される俸給。 ・w ムスリム商人 の活動 →x ダウ船 を操り、アフリカ・インド・中国と交易。 |
3.アッバース朝 | |
a 750 年 751年 756年 762年 8世紀末〜 9世紀 ※アッバース朝の 特質 |
b アブー=アルアッバース 、力リフを称しc アッバース朝 成立。 d シーア派 と非アラブのイスラーム教徒らが協力。成立後はe スンナ派 を保護。 中央アジアに進出、f タラス河畔 の戦いでg 唐 と戦う。→領土最大となる。 ウマイヤ朝の一族、h イベリア半島 に逃れi 後ウマイヤ朝 を建国。 首都j コルドバ 。 → アッバース朝に対抗。 アッバース朝 第2代k マンスール が首都l バグダード を建設。(現イラクの首都) 円形の都市計画(「平安の都」と言われる)。イスラーム世界の中心として繁栄。 第5代カリフm ハールーン=アッラシード の時にアッバース朝全盛期となる。 → 学問、芸術を保護し、イスラーム文化の黄金時代と言われる。 ・n イラン人 などの改宗者を要職に登用、官僚制度を整える。 税制の平等化 アラブ人以外のイスラーム教徒のo ジズヤ を廃止し、征服地に 土地を持つアラブ人にはp ハラージュ を課すようになる。 ・「アラブ人の国家」から「イスラーム教徒の国家」=q イスラーム帝国 となる。 ・r マムルーク の始まり。s トルコ人 の奴隷を軍人として使用する。 |
V イスラーム世界の変質
1.アッバース朝の衰退 | |
9世紀後半 各地の独立政権 | カリフの権威が衰え、軍隊の地方司令官が独立してa アミール を称し、 軍事政権を各地につくる。 ・エジプト:b トゥールーン朝 (868〜905) トルコ系軍人のアミールが独立。 ・イラン:c サッファール朝 (867〜903) イラン系。サーマーン朝に滅ぼされる。 ・中央アジア:d サーマーン朝 (875〜999) イラン系。西トルキスタンに建国。都ブハラ。 →中央アジアのトルコ人のイスラーム化すすむ。 カラ=ハン朝に滅ぼされる。 南イラクでの黒人奴隷の反アッバース朝暴動e ザンジュの乱 が起こる。 |
2.三カリフ分立時代 | |
909年 929年 e 946 年 969年 972年 |
北アフリカ:a ファーティマ朝 チュニジアに成立。シチリア島なども支配。 過激シーア派のb イスマイール派 を信奉。 = アッバース朝のカリフの権威を否定。カリフを称す。 イベリア半島:c 後ウマイヤ朝 のd アブド=アッラフマーン3世 = ファーティマ朝に対抗して、力リフを称す。 イラン人の軍事政権がf バグダード に入城、g ブワイフ朝 の成立。 = シーア派。アッバース朝力リフからh 大アミール に任命されイスラーム法を 施行する権限を与えられる。 → i バグダード のアッバース朝カリフは名目的な存在となる。 a ファーティマ朝 エジプト・シリアを征服。首都j カイロ を建設。 → バグダードに代わるイスラーム世界の文化、経済の中心となる。 j カイロ にk アズハル学院 (モスク)を建設。 |
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