解法 中国の三つの宗教の違いを明確にし、時代ごとのそれぞれの傾向をとらえる。 | |
a 儒教 | 孔子の教えを奉じ、礼・徳の道徳を重んじる宗教であり、儒学とも言われ、倫理学・政治哲学の面もある。 漢で官学とされて隆盛し、主として支配階層の思想的基盤となる。 |
b 道教 | 中国古来の信仰を源流とした不老不死などの現世利益を求める民間信仰。後漢で太平道、五斗米道が 教団として成立し、反体制的となる。金代に全真教・正一教が成立し、民間に定着し現在に続く。 |
c 仏教 | インドから渡来した大乗仏教が中国独自に発展。北魏以来国家の保護を受け、唐代に隆盛。宋代までに 多くの宗派が成立。次第に民間信仰と融合し、元・明・清では反体制運動とも結びつくようになった。 |
1.春秋・戦国時代 a 諸子百家 | |
前5〜3世紀 | 背景:A 富国強兵策をとる各国の王が、学者や思想家を優遇した。 |
b 儒家 | c 孔子 (前6〜5世紀):春秋時代の魯国の曲阜の人。仁と礼を重視する徳治主義を説いた。 = 『春秋』で周代を理想社会と描く。言行録が『論語』。 → 儒教の祖とされる。 d 孟子 (前4〜3世紀):性善説を説く。家族道徳を重視。王道政治と易姓革命。 e 荀子 (前3世紀):性悪説を説く。礼を重視し、後の法家につながる。 |
f 墨家 | g 墨子 :万人への無差別、平等な愛(兼愛)、戦争否定(非攻) |
h 道家 | i 老子 :孔子の説く仁や礼を人為的なものとして否定、無為自然を説く。 j 荘子 :老子の説を発展させる。道家は、民衆に受け入れられ道教となる。 |
k 法家 | l 商鞅 (秦に仕える)・m 韓非 :法と術策による社会秩序の建設を主張。 |
その他 | 名家(公孫竜)、兵家(孫子・呉子)、j 縦横家 (蘇秦・張儀)、 k 陰陽家 (鄒衍)、農家など。 |
2.秦 a 法家 思想による国家統一 | |
b 始皇帝 | c 李斯 を採用し、d 焚書・坑儒 を行い、儒学を弾圧。 =理由:B 法による統一支配を目指すため、徳治主義を採る儒家を排除した。 |
3.漢 a 儒学 の官学化 | |
b 武帝 | 儒者のc 董仲舒 の意見を採用。 =理由:C 礼と徳を重視する儒学の思想を統一国家を支える理念とした。 d 五経 =(e 易経 ・f 書経 ・g 詩経 ・h 礼記 ・i 春秋 )を定め、 j 五経博士 を置き、研究・教育機構を整備。 |
前漢末 | 民間ではk 讖緯思想 が流行。 → l 王莽 がそれを利用して一時権力を奪う。 |
4.後漢 a 訓詁学 の始まり | |
前漢末の劉向、口頭で伝承された今文に対し新発見の戦国期の古文を整理する。 | |
2世紀 | b 鄭玄 :馬融に学び、党錮の禁の後、経書の研究に専念し、a 訓詁学 を大成。 =内容:D 儒学の原典(経書)の正確な解釈をめざす学問として発達した。 |
5.魏晋南北朝 儒学はふるわず、a 老荘思想 が流行し、b 仏教 ・c 道教 も広がる。 | |
魏〜西晋 | d 貴族社会 でe 竹林の七賢 (阮籍など)、g 清談 が流行。 =内容:E 老荘思想に基づき、政治や権力にとらわれない自由な生き方を求める。 |
東晋〜南朝 | 漢文化が継承され貴族文化が発展 = f 六朝文化 → 儒教・道教・仏教三教が、互いに論争を通じて、それぞれ民間に広がる。 |
4.隋・唐 儒学ではa 訓詁学 が隆盛 道教の他、仏教など外来宗教も盛んになる。 | |
隋・唐 | 儒学がb 科挙 の試験科目とされ、貴族の必須の教養となる。 |
c 太宗 | 儒学者のd 孔穎達 に、e 『五経正義』 などを編纂させる=五経の公式注釈書。 |
唐代の中頃 | → 内容的には固定化し思想の発達は停滞し、訓詁学に対する批判も起こる。 |
5.宋 a 宋学(朱子学) の成立 | |
10世紀〜 | 宋のb 文治主義 政治のもとで、c 士大夫 ※が台頭し、文化の担い手になる。 ※F 新興地主層出身で儒学の教養を身につけた知識人が科挙に合格し官僚となった支配層。 |
北宋 | d 周敦頤 :道教と仏教を取り入れ、儒教の世界観を示す『太極図説』を著す。 → 程こう・程頤が継承。宇宙の根本原理を理、物質を形成する原理を気ととらえる。 e 司馬光 『資治通鑑』の大義名分論、f 欧陽脩 の古文復興と中華思想も影響。 |
南宋 | g 朱熹(朱子) :格物致知、性即理を説き、a 宋学(朱子学) の体系化を行う。 =意義:G 従来の訓詁学を批判し、宇宙の真理と実生活における道徳を重視した。 ・宇宙観 太極(真理=理)と無極(材料=気)を一体としてとらえる理気二元論。(性理学) ・実践倫理(道徳) =h 大義名分論 :君臣間の正しいあり方を説く。 i 華夷の別 :漢民族の文化を絶対化し、周辺民族を夷とする中華思想。 ・j 四書 (k 大学 ・l 中庸 ・m 論語 ・n 孟子 )を重視。 o 陸九淵 :朱子学の主知主義を批判、宇宙の理は個人の心にある(心即理)として、 人間の心性を重視。禅宗の影響を受ける。 → 明代のp 陽明学 の源流となる。 |
元 13世紀 | 科挙も中断され、儒教一時衰える。 東西交流の活発化。 |
8.明 a 朱子学 の体制化とb 陽明学 の成立 | |
c 洪武帝 | 民衆教化のため、d 『六諭』 を発布。 → 朝鮮、日本にも影響を与える。 a 朱子学 が科挙の必須の教養とされる。 |
e 永楽帝 | f 『四書大全』 ・g 『五経大全』 を編纂し科挙の基準とする。 → 朱子学の形式化。 |
16世紀初め | h 陽明学 の成立:i 王陽明(王守仁) が宋の陸九淵の思想を発展させ完成。 心即理・致良知を説き、朱子学を批判。主観と実践を重視し、j 知行合一 を説く。 |
16世紀後半 | キリスト教の布教始まる。 → イエズス会宣教師による西洋科学の紹介。 |
16世紀末 明末 | k 李贄(李卓吾) :儒学の礼教を偽善として非難、男女平等を説き投獄される。 ・宦官と官僚の抗争 反宦官の官僚は、l 東林書院 で朱子学による政治批判を強める。 |
9.清 a 考証学 とb 公羊学 がおこる。 | |
明末清初 | a 考証学 :陽明学の流行に代わり、 社会秩序の回復を図るための実証研究を重視。 b 顧炎武 :明の遺臣で清に仕えず、実証的研究に没頭。考証学の基礎をつくる。 c 黄宗羲 :清朝に使えず、『明夷待訪録』で君主の専制的なあり方を批判した。 |
乾隆帝時代 | d 銭大マ ・載震(たいしん)などが活躍。 ・思想統制 反清朝的な著作の取り締まり=e 文字の獄 とf 禁書 を行う。 → 考証学は実学としての性格は薄れ、文献学の性格強める。 |
清末 |
b 公羊学 がおこる。実証学に飽きたらず、g 経世実用 を主張した学派。 孔子の『春秋』の「公羊伝」を正当な解釈とし、改革派の理念となる。 |
1898年 | h 康有為 :日清戦争後、立憲制を目指し、i 変法運動 を起こし、政治改革にあたる。 → 戊戌の政変で弾圧される。その後、1905年にj 科挙の廃止 などは実現。 |
10.近代の儒教批判 | |
19世紀後半 1915年 | 中国の半植民地化が進む中で、封建的な社会の儒教道徳に対する批判が強まる。 a 陳独秀 、雑誌『新青年』で儒教を、専制政治を補完する思想として非難。 → 青年に「デモクラシーとサイエンス」を説く。 その後、b 魯迅 の『阿Q正伝』・『狂人日記』などで儒教道徳を批判。 |
1.道教の成立 | |
源流 | 原始的なアニミズム → 民間信仰としての原始道教がおこる。 |
春秋戦国時代 | 不老不死を願うa 神仙思想 ┐ 易、b 陰陽五行説 ┼─ が融合し、民間に広がる。 c 老荘思想( 道家思想 ) ┘ |
前漢 | 儒教・仏教の影響を受け、次第にd 道教 としての独自の宗教教団を形成する。 |
後漢末 | 社会不安の中で民間にひろがり、道教教団を形成する。 |
184年 |
・d 張角 のe 太平道 :神仙思想を発展させ、病人に符と霊水を飲ませて治療。 → 山東、河北に拡大。 f 黄巾の乱 を起こす。後漢滅亡の原因となる。 |
・g 張陵 のh 五斗米道 (天師道):太平道とも影響し合う。祈祷による治療。 → 四川、陝西で拡大。 | |
215年 | → 魏の曹操に鎮圧される。 → 一部が江西に移り、教団を継続。道教の本山となる。 |
2.道教の展開 | |
魏晋南北朝 東晋 | 道教が民間から知識人に広がる。一方で仏教と競合する。 葛洪 :『抱朴子』を著し、神仙術(養生、煉丹など)を説く。 |
北魏 | a 寇謙之 がb 新天師道 を組織。五斗米道を発展させ、儀礼・祈祷を整え、 仏教の教義を取り入れる。北魏のc 太武帝 に信任される。 |
446年 | c 太武帝 、仏教を弾圧。道教を国教とし、教団が完成する。 ・道教では僧にあたるのがd 道士 (真人)、その居所をe 道観 (仏教の寺院にあたる)、 経典をf 道蔵 (仏教の大蔵経の編纂に倣ったもの)という。 → 次のa 孝文帝 は仏教保護に転じる。 |
唐 宋 | 道教も国教として保護。儒教・仏教・道教の三教が互いに論争しながら教義を深める。 道教の保護続く。 → e 道観 の大土地所有進み、次第に形式化する。 |
3.道教の継承 | |
金 | 華北でa 全真教 が起こる。b 王重陽 (王![]() = 道教を革新し、儒教・仏教(特に禅宗)の影響を受けて成立。 |
南宋 | 従来の天師道系道教は、c 正一教 (大師道)と言われるようになる。 → 漢代の張陵の子孫が天師を世襲。元代に江南で広がり、全真教と対抗。 |
元 | チンギス=ハンに仕えた長春真人は全真教の信者であった。 元は、チベット仏教とともに道教を保護。 → 元の滅亡とともに道教教団も衰退。 |
明〜清 日本への影響 | 教団としての活動は衰えたが、民間には根強く道教信仰残る。 → 不老不死、一家繁栄など、現世利益を追求し、様々な聖者を祀る。 平安時代の陰陽道、中世の修験道、民間のさまざまな迷信に道教の影響がある。 |
1.漢〜魏晋南北朝 a 仏教の受容 | |
後漢 魏晋南北朝 | 仏教の伝来 西域から伝えられる。(北伝仏教 =b 大乗仏教 ) 華北を中心に広がる。西方からの僧侶の渡来。 |
310年 | ・c 仏図澄 :(ブドチンガ) 西域の亀茲(クチャ)の人。洛陽で布教。後趙。 → 弟子の道安、戒律を作る。 → 東晋の慧遠、浄土教を始める。 |
339年〜 | ・東晋の僧d 法顕 :グブタ朝時代のインドに行きe 『仏国記』 を著す。 |
5世紀初め | ・f 鳩摩羅什 :(クマラジーヴァ) 父はインド人。母は亀茲王の妹。 五胡十六国の一つ、後秦の都長安に迎えられ、多数の仏典を翻訳。 |
446年 | ・北魏のg 太武帝 仏教弾圧=h 廃仏 (排仏、破仏ともいう)。i 道教 を国教とする。 =理由:A 華北の漢民族を統治するために在来の道教を保護した。 |
・j 孝文帝 仏教を復興させる。 → k 石窟寺院 が建造される。 西域のl 敦煌 ・大同のm 雲崗 ・洛陽郊外のn 竜門 m、nでは大仏造営。 =インドのガンダーラ様式・グプタ様式などの影響。 | |
南朝の仏教 | 梁の武帝の保護。貴族の学問的な仏教から、次第に民間に広がる。 |
2.隋・唐〜五代 a 仏教の繁栄 | |
隋・唐 7世紀前半 | 鎮護国家仏教として、朝廷・貴族の保護を受け繁栄。 b 玄奘 :陸路ヴァルダナ朝のインドに到達、ナーランダ学院に学び、多数の経典を 持ち帰る。その旅行記c 『大唐西域記』 →『西遊記』の原作となる。 |
7世紀後半 | d 義浄 :海路インドに到達。ナーランダ僧院に学び、経典を持ち帰る。 e 『南海寄帰内法伝』 を帰路のシュリーヴィジャヤ王国で書く。 |
・唐の外来宗教 長安では仏教の他に、ゾロアスター教=f けん教 ・g マニ教 ・ ネストリウス派キリスト教=h 景教 ・イスラーム教=i 回教 の各寺院が存在。 | |
8世紀 | ・仏教宗派の形成。仏教教理の研究も進み、多くの宗派がおこる。 →華厳宗(華厳経を重視)、天台宗(法華教を重視)、j 密教 である真言宗など。 |
k 禅宗 :インドから伝わり、坐禅により悟りを開くことを求める。 l 浄土宗 :末法思想が興り、念仏により阿弥陀如来のいる極楽浄土への往生を願う。 | |
9世紀 | ・民間では道教が盛んで、仏教との間の論争・対立が続く。唐は道教も国教とする。 → 南北朝から唐、五代までの仏教弾圧(廃仏)をm 三武一宗の法難 という。 |
843年 10世紀 | ・武宗の仏教弾圧(会昌の廃仏) → 景教なども衰える。 ・五代 後周の世宗の仏教弾圧。 |
3.宋・元・明・清 中国仏教の成立 | |
宋 | a 禅宗 の発展。 → 臨済宗、曹洞宗などに分かれる。 b 浄土宗 の流行。念仏によって極楽往生を遂げるという教義が広がる。 |
1239年 | 木版印刷によるc 『大蔵経』 の刊行。(世界最初は朝鮮の高麗版) |
南宋 | 民間にd 白蓮教 が起こる。:阿弥陀信仰に呪術を加えた民間仏教。 |
元 | フビライがe パスパ を国師としてf チベット仏教 を保護。財政を圧迫。 |
元末 | 民間のd 白蓮教 にg 弥勒仏 の下生信仰が結びつく。→邪教として弾圧される。 |
1351年〜 | h 紅巾の乱 起きる。農民反乱に拡大し、現の滅亡、明の建国となる。 |
明〜清 1798年 | d 白蓮教 、秘密結社として続き、弾圧される。 i 白蓮教徒の乱 が起きる。清朝中期の農民反乱。郷勇などの力により弾圧。 |