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なければならないのです。そしてその過程こそがこうしたアニメーションの最大の醍醐味なの
です。
アニメーションの表現手法を知り尽くした高畑さんや宮崎さんの作品では、こうした細部の
しぐさの隅々まで完全にコントロールされますから、後はそれを完成するだけの技術というこ
とになりますが、
それでも担当したアニメーターはそれを言われた通りに作画するだけでは演技の方法論を学べ
るというメリットを失うことになります。反対にもし担当するアニメーターが発想の原点を探
り当てて別の演技を考えたとしても、それが面白かったら宮崎さんや高畑さんはいつでもそち
らをとる用意が出来ているはずです。
アニメーターにはいつも可能性が開けてあります。今回のルパンのように原画は全く見ない
し、現場にはロクに姿を見せない大演出家(二人も!)が
いる作品では各アニメーターはかなり思いきって自分の理解する演技をやってみることが出来
ます。多少の試行錯誤や勝手な解釈があったとしても演出で判断しますから少しだけはみ出て
みる勇気が必要です。既にそうしている人もいるとは思いますが、私が見る限りではまだまだ
元気さが足りないように思えました。今日本のアニメーションに必要なのは「動きの面白さ、
新鮮さ」で、テレコムに必要なのはアニメーターの元気です。
動画に関しては「線」の質のこだわり過ぎで仕事が遅くなっているのが気になります。粗っ
ぼくていいとは言いませんが、うまい絵というのは一種の勢いがあるもので、丁寧にゆっくり
描けばいいものではないのです。この点は動画チェックを含めてテレコム全体の課題となって
いますから、近いうちに改善のための提案を作りたいと思っていますが、アメリカの粗っぼい
が元気のいいアニメーションと綺麗な「線」ではあるが元気のない日本のアニメーションを比
較研究する必要性はあるものと考えながら帰ってきました。


●不定型


ところで私はその昔、キャラクターを「整えすぎないないこと」に心がけていました。具体
的に言うといろいろなところでわさとバランスを崩しておくという考え方です。人はそのつも
りで描かない限り自然に整った形を描いてしまうもので、波や雪、雲などを描くとそうした癖

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▲左目を外側に寄せて描かれている峰 不二子。(「(旧)ルパン三世/#1 ルパ

ンは燃えているか…?!」より)