12345678910

IMAGE imgs/esso_cm22.jpg

●似せるのはあとでいい

そのアメリカのアニメーターの手に渡ったルパンが「どれ
一丁お手本を見せてあけるか〕という意気ごみて取りかかる
とどうなるか、これが私の最大の関心事だったのです。最初
に「レネゲード」というプロダクションのアニメーターが描
いて見せたカットは監督の三木さんもプロデューサーの山崎
さんも呆然となったほど違っていました。
私にとっては予期した程度でしたが、お二人はまず「顔」
の大胆な違いに驚いてかなり憂鬱になって、とりあえす動き
どころではなかったようです。こんな顔のルパンが出来たら
二人ともクピになるかもしれないほど違っていたのです。な
にしろ日本の「ルパン・ファン」はうるさいですから ……。
しかし、動かし方は流石に「キャラクター・アニメーショ
ン」の国です。アクションが万事大袈裟になっていてアンチ
やテイク(伸びる前の縮み)が各所に使われ、背広もネクタ
イも必要以上にフォロー・スルーしていて私が少し控えめに
直したほどですが、あちらも負けてはいません。後でもと通
りに直してありました !
レネゲードに対して「キャラクターをもっと似せてくださ
い」といっても涼しい顔で「あ、それは一番最後の段階で、
今は演技だけしか描いていませんから…」と相手にしません。
アメリカ式システムでは当然のことてす。
私も三木さん、山崎さんもこのまるで似ていない原画が最
後の段階でちゃんとする、という説明だけでこれから前へ進
む訳には行きませんでした。
早速私が「作監チェック」をして渡しましたが、次のアシ
スタント・アニメーターが中を詰めて来たらこれもすっかり
元に戻っていたのです!
「キャラ合わせは最後、最後」といわれてもスケジュール
もあることですし、もう一度作監チェックをして渡しました
が、その間に3週間以上を浪費してしまいました。
アシスタント・アニメーターの中には(五右衛門のアップ
を描いた人)よく似せる人もいましたが、他はすべてロクに
似ていないだけでなくデッサンまで狂っていたし、指示され
たアクションも的確には描ききれていませんでした。それで
もキー・アニメーターのヴァン・シッター氏は「最後の段階
では良くなります」と依然涼しい顔です。
日本の原画は動きも顔も完成品に非常に近いものをはじめ
から目指していますからこのアメリカ式のやり方は一種のカ
ルチャーショックでさえあります。
こうしてスケジュールの関係で最終的なクリーンアップは
私が帰国したあとということになって、心を残しながら12月
19日、成田に戻ってきました。


●振り返ってみて


帰国してからは専らファックスでやり取りしながらチェッ
クをさせて頂きましたが、最終的なクリーンアップでは前よ
りもキャラクター表に似てきたとはいえ、細部の詰めでは矢
張り似ていません。中割りはもっとひどく、ひとコマづつ見
ると中に入った絵はガタガタで、五右衛門の前髪の揺れが頭
全体の揺れになっていたり、動画の線は実に粗っぼくてテレ
コムの基準でいえばオール・リテイクという代物です。フィ
アット500は形も動きも全くといっていいほど描けません

IMAGE imgs/esso_cm23.jpg
銭形「ルパン ! デレデレし

おってぇ〜っ!」
IMAGE imgs/esso_cm24.jpg
いんだも〜んっ ! 」
IMAGE imgs/esso_cm25.jpg
スタンド店員「エンジンル

ームOK ! 」