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ルパン「ガソリン満タンね」

こんな厳しい教育ですから当然落後者の方が多く、卒業す
る人のパーセンテージは決して多くないとも聞いています。
日本の場合を考えてみるとこんな恐ろしいことは思いもつ
きません。アニメーターの新入生はまず誰かが描いた原画を
丁寧にトレースし、中割りすることからオズオズとこの世界
に入ってきます。自分の描いたカットがどんな風に動くのか
わからないままにひたすらに手を動かします。
最近では、クイックアクションである程度はわかりますが、
それでも動きの善し悪しに責任を伴うことはまず絶対にあり
ません。厳しく間われるのは主として如何に正確に如何に早
くその原画の間に絵を入れられるかどうかだけです。
こうして育ちながら次第に絵を動かす仕事に馴染んでいっ
て数年たって簡単な原画からスタートするのは御存じの通り
です。アメリカと比べると実に親切で、はるかに多くの志望
者を穏やかに受け入れて、時間をかけて素質を磨くようにな
っています。それを可能にしているのは日本のアニメには誰
にでも出来る中割りの部分が多いこと、せりふの時あまり表
情や体全休を動かさないことと関係がありそうです。厳しい
アメリカとあいまいな日本のどちらがいいかはあとで時間を
かけて分析してみたいと思いますが、いずれにしても同じア
ニメーターといってもすいぶん違った育ち方をしていること
がおわかり頂けたでしょうか。


●アニメーターは三段階


もう少しアメリカのアニメ事情を解説しておきます。
上記のような育ち方をしていますからアメリカでは「アニ
メーター」と呼ばれる集団は「動きのラフ・スケッチ」しか
描きません。この段階では線は非常にラフで、ボタンや模様
などの細部は省略してあって、必すしもキャラクター表に似
ていないことが多いのですが、その代わりに枚数が多く、演
技がゆっくりしていて中割りの密度が濃いところ以外はその
カットの演技内容は枚数的にも殆ど完成に近いものを描きあ
げます。
次にこれが「アシスタント・アニメーター、もしくはイン
ビトウィナー」という職種に渡ります。この人達はもう少し
きれいな線に描き直し、のこりの全枚数を同じ程度のラフ・
スケッチで埋めてここでこのカットは枚数的にも完成し、演
出的な検討、修正を経て最後に「クリーンアップ・アーティ
スト(女性が多い)」と呼ばれる職種に渡ってキャラクター表
(モデルシート)を見ながらきれいな線にトレースされて行き
ます。
日本で言うタップ割り(線と線の中割り)は殆どありませ
ん。前後の絵を見ながら一枚一枚クリーンアップします。顔
の大きさや目の大きさの微妙な違いは圧倒的に動き回る速さ
の中に埋没して気にしません。せりふや身振りの途中で顔や
体のサイズなどがしばしば変わりますが、それがかえって生
き生きしていると考えられているほどです。
カットの良し悪しの判断基準はディズニーが確立した「ス
トレッチ&スクオッシュ」や「フォロー・スルー」がどれだ
け生かされているか、せりふと完全に一致した演技になって
いるかが間われるのです。

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スタンド店員「ハイ、お車
チェックいたしましょうか?
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ルパン「うひょ〜っ !

お〜ねがいっ!」