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次元「急げーっ!ルパン!」

然キャラクターもアメリカ風になるはすで、それを見たいと
いう好奇心みたいなものがあったわけです。キャラクター修
正といってもカット数そのものが少ないので大した仕事では
ありません。どの民族でも歴史のその時点で共有している描
き方のステレオ・タイプというものがあります。
例えば日本の漫画のキャラクターの異常に大きい眼にハイ
ライトをいっぱい入れてピカピカになっているのは外国人が
見たら実に不自然に見えるはずです。アメリカではあんな巨
大な眼は今でもあくまでプロポーションが極端に誇張された
キャラクターと動物専用で、まともなプロポーションの人間
には使用していません。といっても日本人の私でもあの巨大
な目はとても人間とは思えない気分でいますから、世代によ
っても感じ方が違っているようですが……。
個々の民族がその時代に共有している美意識はお互いに影
響しあって絶えず動いてはいるものの、その時点では自らと
異なるものについては不自然さを感じるもので、自分が描く
場合には自分たちの共有するその時代の美意識が自然に滲み
出てくる、といっていいと思います。
正直にいって結果は私が期待したほど違っていませんでし
た。
考えてみるとルパンのルーツはモンキー・パンチ氏が「マ
ッド・マガジン」に影響されて作ったキャラクターですから、
アメリカ人にとってもさほど違和感のあるキャラクターでは
なかったのです。ただ顔の細部の描き方で見ると、目の下の
線の切り方と口の形の描き方が「案の定」といった感じで違
っていました。日本人は輪郭のはっきりした眼を好みません。
アニメでは目の下側の線はわざわざ薄くあいまいにして眼全
体が強くならないようにしていますが、アメリカ人にとって
は眼は強くなければならないようで上下ともしっかり描いた
うえに、目の下側の線は頬のふくらみの線と考えて、いとも
簡単に下の線を盛り上げて切ってしまうのです。これだけで
随分印象が異なります。あるかないかわからないような日本
式の鼻も大胆に変えられてしまいました。
監督の三木さんが顔の中の線の切り方について特別な注意
書きを作って配りましたが、アニメーター、アシスタント・
アニメーターたちには最後まで守ってもらえませんでした。
多分彼らには日本式の眼の描き方には心理的に抵抗があった
のか、あとで述べるようにそれはクリーンアップする人の仕
事だと割り切っていたのでしょう。指や手の描き方も笑って
しまうくらいアメリカ的でしたが、これもルーツはアメリカ
漫画ですから文句はいえません。


●キャラクター・アニメーション


アメリカのアニメーションを代表するスタイルは簡単にい
えば「動きを誇張して徹底的にエンターテイメント的なもの
にする」ことで、スピードの早いギャクがちりばめられるも
のです。キャラクターも擬人化された動物や、極度に誇張さ
れた人物が中心で、ストーリーも現実離れした単純なおっか
けのドタバタ喜劇に圧倒的に人気があるのは御存じの通りて
す。多少ともリアルな人間の動きについては可能な限りライ
ブアクション・トレースを使います(長編では全部)。
この二〇年くらいの間に「バットマン」や「スーパーマン」

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ルパン「あらららっ!ガス

欠だぁ」