第9章 近代ヨーロッパの成立
2 ルネサンス
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★研究:ルネサンスがイタリアに始まった理由を考え、4点にまとめよ。
a
ローマ古典古代の伝統があったこと
b
地中海貿易によりビザンツ・イスラム文化と接触したこと
c
地中海貿易による都市の発達と豊かな市民生活の形成があったこと
d
大商人・ローマ教皇などによる保護があったこと
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C.新しい政治思想の芽生え
・補足:マキャヴェリ以前の新しい政治思想
・フィレンツェの▲aサヴォナローラの改革:ドミニコ派の修道士。メディチ家の腐敗やルネサンスの芸術を厳格な信仰心から否定。1494年イタリア戦争の勃発に乗じてフィレンツェの権力を握り、「虚栄の消却」を実行。ローマ教皇によって破門され、1498年火刑となる。
・▲チェーザレ=ボルジア:教皇アレクサンデル6世の子。教皇領の拡大に努めた典型的なルネサンス型君主と言われる。マキャヴェリは権謀術数を駆使する新しいタイプの君主として彼に期待したが、新教皇と対立して捕らえられてスペインに送られ、1506年に戦死した。
・フィレンツェのa
マキァヴェリ (1469〜1527)
1513年頃 b
『君主論』 を著す。
内容:c
政治を宗教や道徳から切り離して、現実的な権謀術数が必要であると主張した。
その中で君主に必要なことは、d
ライオンのような勇猛さと狐のような狡猾さ であると説く。
→ イタリアの分裂を解消し、統一を実現できる君主の出現を期待した。
= このような政治思想はマキァヴェリズムと言われ、近代的政治思想の始まりとされる。
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・北イタリアの有力な都市共和国と中部のローマ教皇領、南部のナポリ王国に分裂。
・a
フィレンツェ :トスカナ地方の中心都市。東方貿易、毛織物生産、金融業で繁栄。
1434年 金融財閥のb
メディチ 家※ フィレンツェの実権を握る。
※15〜16世紀 ルネサンス最盛期にその保護者となった。
▲c
コシモ=ディ=メディチ はフィレンツェに▲d
プラトン=アカデミー を開設した。
孫の
ロレンツォ=ディ=メディチは専制君主としてフィレンツェに君臨する。
1453年 e
ビザンツ帝国 の滅亡後、ギリシアから古典学者が多く亡命、
→ フィレンツェのメジチ家の保護を受ける。
・f
ミラノ :ロンバルディアの中心都市。毛織物生産、武器生産で繁栄。
はじめミラノ公ヴィスコンティ家が支配、次いでスフォルツァ家が権力を奪う。
・g
ローマ教皇 教皇
ユリウス2世によるh
サン=ピエトロ大聖堂 の修築。
次いで、教皇
レオ10世は、その費用を得るために免罪符を発行 → 宗教改革の発端。
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・イギリス・フランス・スペインでは国王に保護され、貴族的な性格が強くかった。
そのため、a 政治・教会・社会体制の批判には至らず、芸術面での革新にとどまった。
・しかし、次の宗教改革とともに、ヨーロッパの近代社会を生み出す前提となった。
▼
・1494〜1544年 a
イタリア戦争 イタリアをめぐるドイツ・フランス・スペインの抗争
→ イタリアが戦場となって荒廃し、文化の中心がイタリアからアルプス以北に移る。
・15〜16世紀 b
大航海時代 の到来 → 交易の中心、大西洋岸に移る
→ イタリア諸都市の衰退。(後出)
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1.文芸(文学)と思想
・イタリア
a
ダンテ :フィレンツェの人、ゲルフとギベリンの争いにまきこまれ、
追放されてラヴェンナで晩年を過ごす。1293年、『新生』を著す。
1304〜21年b
『神曲』 をラテン語でなくc
口語(トスカナ語) で著す。
= カトリックの世界観にたちながら人間精神の解放を主張。
d
ペトラルカ :人間の自由を唱った叙情詩人。『抒情詩集』など。
フィレンツェ生まれだが諸国を遍歴、アヴィニヨンに滞在。
e
ボッカチオ :(フィレンツェ)。1348〜53年f
『デカメロン』 人間の赤裸々
な欲望を描く。近代小説の先駆。
→ 1353年のイタリアでのペストの流行が描かれている。
・イギリス g
チョーサー :イタリアに旅行しデカメロンの影響を受ける。
1387〜40年 h
『カンタベリ物語』 を著し、中世末期の庶民生活を描く。
▼
ロイヒリン:ドイツ 1506年 『ヘブライ語入門』を著す。自由な古典研究を行い、
カトリックの保守的な神学者によって異端として訴えられる。
a
エラスムス :ネーデルランド 1509年 b
『愚神礼讃』 を著し、人文主義
によるカトリック教会批判を展開。ルターとは対立し、宗教改革には反対。
c
トマス=モア :イギリス 1516年 d
『ユートピア』 を発表、理想社会を描き、
当時のイギリス社会を風刺。国王ヘンリー8世の離婚を批判して刑死。
e
ラブレー :フランス 1532〜64年 f
『ガルガンテュワとパンタグリュエルの物語』
を著し、カトリック教会や社会の因襲を風刺。
g
モンテーニュ :フランス 1580〜88年 ユグノー戦争の時期、h
『随想録』 (エセー)
を著し、人間性の探求。
▼
C
ルネサンス末期の文学 16〜17世紀 各国の国民文化が形成される
a
セルバンテス :16〜17世紀スペイン b
『ドン=キホーテ』 による封建制の批判
c
シェークスピア :16〜17世紀初め『ハムレット』『ベニスの商人』などで人間心理
の葛藤をテーマにした演劇脚本作家。イギリス絶対主義全盛期のエリザベス朝の人。
2.絵画・建築
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B
ルネサンス様式 の建築 ドームとギリシア風列柱の組み合わせによる建築様式。
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1.
新しい科学 大航海とルネサンスの時代に興る。
・a
地動説
b
コペルニクス (ポーランド)1530年ごろ 天体観測に基づき地動説を主張。
▲c
ジョルダーノ=ブルーノ (イタリア) 地動説・汎神論を説く。1600年焚刑。
→ カトリックの世界観=聖書の天地創造説にもとづく天動説に対する挑戦となる。
→ 17世紀の「科学革命」につながる。(後出)
2.ルネサンスの三大発明
・a
羅針盤 中国の宋 → イスラム商人 → 14世紀イタリアで改良
→ b
遠洋航海 を可能にする → 15世紀末 大航海時代をもたらす。
・c
火薬 中国の元で実用化 → イスラム商人 → ヨーロッパに伝来
→ ヨーロッパでd
火砲(鉄砲) が発明される。→ 騎士の没落。
・e
活版印刷術 1440年 ドイツのf
グーテンベルク ※が改良
※活字合金を鋳型で鋳造し、加圧式の印刷機で大量に印刷。
→g
製紙法 の伝播と結びつき、書物の迅速・安価・大量な出版を可能にした。
→ 聖書の大量印刷を可能にし、h
宗教改革 が広まる一因となる。
