三百六十五日の献立にそえて 沢崎梅子
三百六十五日の献立を通して立てゝ見て、さて、これがどれだけ役立てゝいたゞけるだろうかと何度か考えました。土地柄、年齢、生活習慣、予算の点などで、他人のたてた献立を誰もがそのまゝ実行出来るものではないと存じます。
しかし何といつても毎日ゆき当りばつたりの好みの食事をすることは経済の上にも、栄養の点にもみだれがちになります。土曜日に次の週の献立をあらかじめ考えることは食生活をよりよくする第一歩です。その折、材料のとり合せの点、忘れていた材料の食べ方、季節の材料の味などを、参考の献立表を見て思いつき、自分の好みに合せてよい予定をきめることは嬉しいものでございます。そういう自分の体験から考えて、この献立も何れかの面で役立てゝいたゞけるものにしたいと思いました。
そこで今年は一ケ月のうちを週毎に一つの目標をきめて、
・子供中心の献立
・多人数の献立
・中年、老年の好みを中心にした献立
・忙しい日の手のかゝからない献立
・時間のかゝらない献立
・費用節約の献立
・少人数若向新家庭の献立
などにわけてたてゝ見ました。
一年を通じて献立に加えたお料理は、大体名前を見れば作り方の想像が出来るようなものを撰びましたが、週一度位は毎月の婦人之友に出るようなもの、或はそのお家のお得意のものなどをつくるたのしみ日を予定して豊富なお献立にしていたゞきとうございます。
なお申しそえたいことは、どこのお家にも三味三品の常備菜を用意しておおきになり、これを味の調節のため、栄養のおぎないに利用することは、一そう献立を豊富にすることになるということです。二、三日保存のもの、半月保存のもの、その他漬もの類もこれに加えて利用することが大切であることをおすすめいたします。
手近にある材料でおいしいお八つを作りましよう
- 揚げシュー
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- シュー
- ・水 カップ1\2
- ・ラード又はマーガリン 大匙二杯
- ・粉 カップ一杯
- ・玉子 二個
- クリーム
- ・砂糖 カップ1\2
- ・粉 大匙二杯
- ・玉子 一個
- ・牛乳 カップ一杯
- ・エッセンス
- 揚げ油
- 天火で焼くシュークリームよりシューの材料がお八つ向きになつています。小さいなべに水を入れバタを落して火にかけます。煮立つたら、粉をふるい入れ、火を細くして、しやもじでよくよくねります。
- 粉が煮えてすき通つて來たら火から下し、玉子を一つづゝ割入れながらなおよくねります。なめらかな、つやのある、かためのクリーム狀になつたら、熱した油の中に、テイースプーンで落し、狐色に揚げます。少しの種が、大きくふくらみます。
- クリームは、砂糖と粉をよく混ぜ、玉子を加えてなおよくねり合せ、沸した牛乳をまぜながら流し込みとろりとするまで煮、さめたら香料をおとします。
- 揚げたシューを皿に盛り、クリームをかけます。
- 大きく揚げて、中にクリームをつめても結構です。
- ブラマンジュ
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- コンスターチ 大匙三杯
- 砂糖 カップ1\2
- 牛乳 一合
- バニラエッセンス
- コンスターチと砂糖をよくまぜ合せ、牛乳少々でよく溶かしておきます。殘りの牛乳をあたためて加え、弱火でこがさないようにトロリとなるまで煮ます。エッセンスをたらし、水でぬらしたゼリー型に流し冷して固めます。
- まわりを、季節の果物などで飾り砂糖蜜か蜂蜜でもかけますと、立派なデザートになります。
- ソフトビスケット
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- バタ(マーガリン) 1\2ポンド
- 砂糖 カップ一杯
- 玉子 一ケ
- レーズン、ピーナッツ等 カップ1\2〜一杯
- エッセンス
- 粉 カップ二杯
- ベーキングパウダー 小匙二杯
- バタと砂糖をよくまぜ合せ、玉子を加えて更によくまぜ、レーズン、ピーナッツ、エッセンスを入れ粉とベーキングパウダーをよくふるつておいて入れます。普通のビスケットよりやわらかめにして、天板に紙を敷いてその上に平らにのばし、天火で焼きます。
- 少し大きめに切つて頂きます。
- あんずのヌガー
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- あんずジャムの缶詰 一缶
- 砂糖(ジャムの空缶ではかる) 同量
- オブラート又は片栗粉
- あんずジャムと同量の砂糖をこげないように煮つめます。煮つまつてきましたら、水を入れて茶わんの中にたらしてみます。指でつまんでみて、やわらかい消ゴム程度に固まりましたら火から下し、油を引いた辨當箱に流し入れて固めます。
- 油をつけたナイフで好みの大きさに切り、オブラートで包んだり片栗粉などをまぶします。
- 胡麻まんじゆう ユーマーパオツ 十ケ分
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- 皮
- ・粉 カップ二杯
- ・ふくらし粉 大匙一杯
- ・砂糖 カップ1\2位
- ・水 カップ3\5
- ・手粉として片栗粉少々
- あん
- ・胡麻 カップ1\3
- ・盬 一つまみ
- ・ラード 大匙小山二杯
- ・砂糖 カップ1\3
- 胡麻を煎つて、脂が出てベトベトしてこない程度にすり、砂糖、盬、ラードを入れて更にすりまぜ、十個に分けておきます。
- 皮は、始めに粉とベーキングパウダーをよくふるつておきます。別に分量の砂糖を定量のぬるま湯でとかし、さめたら粉を入れてまぜ合せます。十個に分けて、片栗粉を手粉に使いながら、一つづゝ胡麻あんを包んでおまんじゆうを作り、ぬれ布巾をしいた蒸器に間隔を三センチ位あけて並べて蒸します。大きくふくれた風味のあるまんじゆうが出來上ります。
- 蒸し時間は沸とうしてから五六分で出來ます。
貯蔵食品の作り方
- 梅漬
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- (梅一升、盬三合、紫蘇の葉五十匁)
- 果肉の厚い種の小さい品を撰び一夜清水につけると靑酸がぬけて種ばなれがよくなります。分量の盬で漬けて十日位そのまゝおきます。しその葉を盬もみして黑い汁をすててから梅汁に入れておきます。二週間ほどたつたら汁からあげてざるにひろげ、二、三日天日に干しますと、よい梅干になります。梅の汁には白瓜や茗荷、生姜をつけると重寳いたします。
- 梅シロップ
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- (新鮮な靑梅一升、白砂糖一升)
- 靑い大粒の梅の表面にあみ棒のようなものでポッポッと穴をあけ(早く液が出來ます)、砂糖でつけこんでおきます。おもしはしなくても、ふただけしておくと日增に汁が出て、梅はかたくほとんど液になつてしまいます。これをさらし布で靜かに漉して瓶につめておきます。日がたつにつれてつやが出て澄んで來ます。
- 梅酒
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- (梅一貫匁(二升五合)、焼酎二升、
氷砂糖一貫匁)
- (梅一貫匁(二升五合)、焼酎二升、
- 靑い無きずの大粒の梅に、焼酎に氷砂糖を溶しておいた液を注ぎ入れてふたをしておくと、だんだん梅から汁が出て、上に浮き上ります。このまゝ目ばりして置いてもよし、一ヶ月位たつてから、こして瓶詰にしておいてもよろしうございます。ときのたつ程こはく色が美事になります。
- しわしわになつた梅に又みりんか砂糖をかけておくとやわらかくふくらんで美味しくなります。燒魚などに付け合せても、そのまゝいたゞいても美味しいものです。
- らっきょう漬
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- (らつきよう一貫匁、盬一合五匁、酢七合、
砂糖三合、赤唐辛子一本)
- (らつきよう一貫匁、盬一合五匁、酢七合、
- らつきようは上下を切つてきれいに皮をむき、盬漬にして三、四日おき、水を切つてざるにあげ、甘酢につけ替えます。赤唐辛子は中の種を抜いたものをうす輪切にして入れます。
手近にある材料でおいしいお八つを作りましよう
- スイート・ポテト
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- さつま芋 四〇〇グラム
- (ふかして裏ごししたもの)
- 砂糖 一〇〇グラム
- バター 四〇グラム
- ミルク 1\2カップ
- 玉子 一個
- バニラエッセンス 少々
- 裏ごしにした芋に、砂糖、バター、ミルク、玉子を加え、よくまぜ合せながら火を通します。
- これを、口金をつけたしぼり出しの袋で、紙ケースか、ケーク型の中、又はお皿の上にきれいにしぼり出します。
- 又はお芋をカップのような型にして、中にリンゴの甘煮にシナモンを少々加えたものをつめ、その上をしぼり出してかざつてもよいでしよう。
- シナモン(ニツケの粉)はさつま芋やリンゴによく合う香料で味も一そう引立ちます。
- リンゴは皮の紅いものなら、皮のまゝうす切りにして煮ると、ほんのりとよい色になります。
- いもおこし
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- さつま芋 四〇〇グラム
- 水あめ 四〇グラム
- 砂糖 六〇グラム
- 水 大匙二杯
- 酢 小匙一杯
- 揚げ油
- さつま芋の皮をむき、一センチ角位の小さい賽の目に切つて、水にさらします。よく水氣をきつてから、狐色にカラリと揚げます。
- 砂糖と水あめに水を少々加えて火にかけ、そのまゝまぜないようにして煮つめます。箸につけてベトベトと糸を引きそうになつた頃、酢をたらして火を止めます。揚げた芋を手早く入れてかきまわし、おこしのように丸めます。手で丸めますが、蜜がべとつきますから、手に油を少しつけておくと、らくに出來ます。
- 大きさは好みでよいのですが、あまり小さくすると時間がかゝつて、全部出來上らないうちに、なべに固まつてしまいますから注意して下さい。
- 胡麻揚だんご(十五ケ分)
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- あん
- 生あん(小豆一合分) 二〇〇グラム
- 砂糖 五〇グラム
- ラード 大匙一杯
- 皮
- 白玉粉(カップ一杯) 一〇〇グラム
- 水 白玉粉の量の1\2弱
- 黒胡麻 四〇グラム
- 揚げ油
- 小豆一合で作つたこしあんでしたらそのまゝ、砂糖、ラードを加えて火にかけ、あんにねり上げますが、買つて來た生あんの場合は、二〇〇グラムに對し水一デシの割合を加えた方がよく、出來上りは四〇〇グラム位になります。出來たあんを十五に丸めておきます。
- 白玉粉は、量の約1\2弱の水を少しづゝ加えて普通より、少しかためにねります。これも十五に分け、一つづゝ手のひらの上で丸くのばし、上手にあんを包んで、胡麻の上をころがします。これを熱い油の中で、箸で萬べんなくころがしながら、表面が少し色づくまで揚げます。
- これは中國でお月見の時よく作る點心に似たもので、熱いうちにいただいても、冷めてからでも大へんおいしいものです。
- アップルフリッター
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- りんご 二個
- 粉 コップ一杯
- ベーキングパウダー 小匙一杯
- 玉子 一個
- 砂糖 小匙一杯
- 盬 少々
- 牛乳 コップ半杯
- 揚げ油
- ふりかける砂糖
- りんごの皮をむいて一センチ位の厚さに輪切りにします。中の芯を丸くくり抜いて一枚々々に砂糖をかるくふりかけておきます。
- 粉の中にベーキングパウダーを入れ、よくふるつておきます。
- 玉子の黃味と、牛乳、砂糖、盬をよくまぜ、そこに粉を入れてかるくまぜ合せ、最後に白味をかたく泡立てゝ入れ、泡の消えないようにサックリと合せます。天ぷらの衣より少しかための感じです。
- リンゴにこの衣をたつぷりつけて、兩面を狐色に揚げます。揚げ油は輕いものがよいのです。揚がりましたら小匙一杯位の砂糖をふりかけ、あついうちに頂きます。
- フリッターは、バナヽ、柿、レーズンなどでしてもおいしうございます。