FDM方式の造形装置比較

作成開始 2014/03/14


はじめに

 個人で導入したたった二つの装置での比較であるので、あまり意味がないかもしれないが、私個人が感じた事を記載しておく。
 装置自体も既に旬を過ぎたものであるので、今後の新しい装置の導入の参考にして欲しい。


比較

 特徴ある部分の項目の比較であるので、他にも比べられる項目があると思うが、個人が気になった部分を取り上げている。

項目 CubeX Trio(最初に導入)
CubeXの使用感
CubeXの問題点
SCOOVO C170(次に導入)
SCOOVO C170の使用感
SCOOVO C170の問題点
コメント
装置 サイズ(H,W,L) 598x515x515mm
フィラメントは装置内にカートリッジを内臓する方式であるので、外寸以上の空間は不要
外部にUSBメモリーを取り付けるのでその出っ張りは少々気になる。
404x376x333mm
フィラメントの供給は外部からになるので、設置では、上部と後部にリールを取り付ける為の空間が必要
制御装置の設置空間も必要
コード類のデッドスペースも必要
 設置出来る空間と安定した土台並びに空調や温度・湿度管理、防音環境等、品質管理の為の環境管理や外部への騒音防止の考慮が必要である。
 装置の振動抑制に振動吸収材等の設置も施すべきである。
ヘッド Trio 3ヘッド仕様
Duo 2ヘッド仕様
Solo 1ヘッド仕様
ヘッドが増える程にX軸のモータに負荷か掛かる様で、動作速度、特に移動速度は遅くする対応が必要だが、標準では変更不可能である。
1ヘッド仕様  特別多ヘッドには拘る必要は無いと思う。
 ヘッドが増えると現状は悪さが増える要因になる事の方が多い。
 シングルヘッドに勝るものは無い。
駆動系 造形物が下降して積層を進めるタイプ
デカルト座標系
ステッピングモーター駆動
X軸x1(負荷大)
Y軸x2
Z軸x1(ベッドの昇降用)
ヘッドが上昇して積層を進めるタイプ
デカルト座標系
ステッピングモーター駆動
X軸x1(負荷大)
Y軸x1(ベッドの移動)
Z軸x2(ヘッドの昇降用)
 両方ともX軸駆動のステッピングモーターには冷却の為にヒートシンクを取り付ける事を勧める。
 デルタ座標系やリニアモーター、ボールネジ利用等、高速化や高精度な駆動系が望まれる。

 現状はオープンループ制御であるが、今後はクローズドループ制御での位置管理が重要であろう。
エクストルーダー ステッピングモーター(ダイレクト) ステッピングモーター(ダイレクト)  減速機構を内臓して欲しいところがある。
 応答性は良いはずだが、少々遅延が見られる。
電源 ACアダプター(本体内蔵) ACアダプター(外部)
邪魔になるのでご注意を
 無停電等の電源設備は別途常備しておくべきである。
 電源のノイズ除去機能や雷防止機能等、安全面にも気を使うべきである。
制御 内臓(ネット接続機能なし) 外部PCでの制御が必須
ノズル径 φ0.5(0.6?)mm
積層面の細かい造形には限界がある

非正規にホットエンドを含めて、ノズル径が選べる状況
φ0.35(0.45?)mm
CubeXよりは詳細な造形が可能

直接取り付けられる他の口径ノズルはまだ提供が無い状況
 吐出しの能力向上の為にも、穴の形状を工夫してもらいたい所がある。
 単にストレートな丸穴では、吐出しが不安定な面がある。蛇口の形状には工夫があるのだ。
造形物の冷却機能 冷却ファン有り 冷却ファンなし  両方とも別途、冷却用のファンを用意する方が良い。
ベッド 非加熱方式
ガラスと樹脂の二層構造で取り外しが容易

自動キャリブレーション機能なし
手作業でヘッドとの水平化を行う
非加熱方式
スチール製で、取り外しが容易
取り付けの受け側は樹脂(仕様変更版)
共に薄く熱の保持力に乏しい

自動キャリブレーション機能なし
手作業でヘッドとの水平化を行う
 ABS樹脂での造形では加熱出来る方が有利であるので、何らかの考慮が必要である。
密閉具合 前部と両サイドに大窓があり、開放状態である 前部と両サイド、上部に大窓があり、開放状態である
オプションでクリアパネルがある
装置内の保温力にはあまり効果が期待できない
 造形環境維持には何らかの対策が必要である。
造形ミス検出機能 なし なし  共に造形ミスの発生を感知する能力はない。
造形状況の確認性 造形ヘッドに白色LEDの照明があるので、比較的造形状況が確認しやすい ブルーLED照明があるが位置が前面上部に固定されており、ヘッドカバーが付いている状況では、造形状況は非常に確認し辛い。ヘッドカーバーを取り外しても確認は暗くて確認し辛い  現状の造形装置では造形状況が確認し易い事の方が精神面も含め安心できる。
モニタリング・警告機能 なし
最大の欠陥だと思う
接続したPC環境次第  基本造形環境は密閉された安定した場所に設置すべきであり、監視や警告できる機能は必須と思われる。
造形時の騒音 かなり大きい
振動もある
共鳴等の増幅する傾向がある
クリアパネルは騒音低減に寄与する
エクストルーダの冷却ファンは静穏タイプに変更するほうが良い。仕様変更版であれば4000rpmでも十分である。
 騒音に関しては下げる為の工夫が必要である。
安全対策 ほとんど無し ほとんど無し  非常に危険な装置なので、注意が必要である。
 安全に使うために配慮が必要である。また、換気等に注意する必要がある。
ヘッドのクリーニング機構 ジェットワイパー付
一応、ダストボックスも兼ねる
ヘッド内の過去のフィラメントのクリーニングが主であり、ある意味無駄な動作でもある。
多色造形の場合、ヘッドが切り替わる度にクリーニング動作が発生するので、ゴミの方が多くなる場合がある。
なし
オーバーラン対策 下限(X,Y,Z)にはセンサーがあり、検出可能だが、上限(X,Y,Z)には無いので、誤った操作やコードがあると、オーバーランする。 下限(X,Y,Z)にはセンサーがあり、検出可能だが、上限(X,Y,Z)には無いので、誤った操作やコードがあると、オーバーランする。
フィラメント供給検出 フィラメントの挿入状況検出
ステッピングモーターの回転検出
ガイドローラーの回転検出
それぞれ光学検出
なし
フロントエンド 標準 不要
スタンドアロン方式である
制御データはUSBメモリーで供給
SCOOVO Studio(Repetier-Host)
不具合を緩和する為に装置設定を変更する必要がある。
 
その他 Repetier-Host
Cura
Printrun
OctoPrint(プリントサーバー)
Simplify3D(有料:$140)
Repetier-Server
 装置固有の通信設定や制御設定を行う事で利用可能である。
スライサー 標準 CubeX
生成コードは専用コード(暗号化)
バージョン1.07ではコード生成時に*.BFBファイル(テキスト)を残す。
CubeXに関しては限定的な設定しか出来ないので、品質向上には限界がある。
SCOOVO Studio(Slic3r)
生成コードはテキスト(Gコード)
『かんたん設定』、『アドバンス設定』があるが、『かんたん設定』も設定値を操作すれば、自由な設定は可能である。
 一通りの造形設定の確認はしておくべきだ。
その他 AXON(2:Skeinforge/3:KISSlicer?)
KISSlicer + CubeIt/CubItMOD
Cura V14.06〜
Cura エンジン
Simplify3D Ver 3.1〜
Slic3r
Skeinforge
Cura
KISSlicer
Simplify3D(有料:$140)
 それぞれテキストでコードが生成されるので、編集加工等の作業が可能である。
フィラメント
径φ1.75mm
標準 素材:PLA(700g)/ABS(600g)
価格:18,000円(税抜)
供給:専用カートリッジ方式
(ICチップで情報管理)
素材:PLA(1kg)
価格:4,742円(税抜)
供給:オープンリール方式
 正規品だからといって品質が良いかというとそうとも限らないので、色々と調べておく事を勧める。
その他 造形データ操作により、他社製のフィラメント利用可能
フレキシブル物
木質物
溶融温度の上限の範囲で、他社製のPLA/ABSフィラメント利用可能
フレキシブル物
 自己責任の範囲で、色々と使用出来るフィラメントはある。
 安物には線径や気泡、不純物等の品質上の不具合もあるので、確認用とかに限定するのが良いかもしれない。
造形 サイズ(X,Y,Z) head1使用時:275x265x230mm
head2使用時:230x265x230mm
head3使用時:185x265x230mm
仕様ではZは240mmまで可
150x150x175mm  簡単な造形物で造形範囲の上限を確認しておく事を勧める。また、造形状態を確認して歪み等の確認もしておくべきだ。
造形ピッチ 標準で0.5mm、0.25mm、0.1mm
造形確認できる範囲で最小0.02mmまでの造形ピッチで造形可能
標準で0.3mm、0.2mm、0.1mm
造形確認できる範囲で最小0.01mmまでの造形ピッチで造形可能
 どこまで追い込めるかの最小の造形ピッチを確認しておくと、それより荒いピッチの造形が非常に楽になるので、試してみる事を勧める。
造形サンプル 造形サンプル 造形サンプル
総括  標準での使用では造形品質に限界があり、造形コストも馬鹿にならない点がある。
 しかし、現状では造形データ生成環境を非正規の別なもで行う事が可能なので、かなりの改善が見込める。
 装置そのものの機械的精度はわりと高いので、造形データ次第である。
 Z軸の昇降のネジの具合により造形面のネジ跡が目立つ状況がある。また、溶融温度の保持能力が低いので、品質維持には造形時間を必要以上に消費する傾向にある。

(2014/04/11)
 二度目の調整修理でようやくネジ跡が目立たなくなった。
番外
改善、改良、改造情報 CubeXでの造形挑戦

SCOOVO C170の
改善、改良、改造情報


おわりに

 装置導入に当たっては、色々と見比べる項目があるが、何分、造形品質がどの程度まで得られるかの詳細は無いに等しい状況である。
 造形サンプル等が紹介されていても、本当に導入した個々の装置で造形が可能かは、疑問に思う点も伺える。
 一般には造形品質を求める為には、造形時間を十分に遅くする必要があるのが一般である。
 造形速度が高速で、且つ、造形品質も十分に得られる様な装置を択びたいが、なかなか良いものは安くは手に入らないものである。
 後、造形に当たっては、その造形コードが暗号化等で編集が不可能なものは択ばないほうが良いと思う。最初、CubeXには悩まされた。
 多分、どの装置でも造形物の出来上がりの保証はしていないと思うので、造形品質に不満があっても交渉ネタにはならない可能性があるのでご注意を。


戻る