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ダブリング (doubling)

calcite_カルサイト

写真は無色透明のカルサイト結晶(変種名はアイスランドスパー)。この結晶は強いダブリングを示し、ご覧のようにカルサイトを通して見ると下の文字が二重に見える。このような現象をダブリングと呼ぶ。

写真下は、写真上の一部を拡大したもの。


◇単屈折性 VS 複屈折性

全ての結晶は、通常7つの種類(結晶系という)に分類される。この内、立方晶系(等軸晶系ともいう)に属する結晶が単屈折性を示し、他の6つの結晶系に属する結晶は複屈折性を示す。また、結晶構造を持たない物質(非晶質という。ガラスプラスチックが該当)、そして液体(液晶を除く)も単屈折性である。

普通の光は空気中であらゆる方向に振動している。単屈折性の物質に入射した光は減速しますが、光の振動方向が限定される事はない。

一方、複屈折性の物質に入射した光はふたつの偏光に分かれ、且つそれぞれの偏光は異なる速度で進行する(※)。 このような性質により、複屈折性の透明物質を通してものを見た場合、二重のイメージでダブって見える事があり、宝石学ではこの現象をダブリングと呼ぶ。

(※)ただし例外的に複屈折性の物質でも、ある方向(1あるいは2方向のみ。結晶系によって異なる)においてはふたつの偏光に分かれるという現象を起こさず、この方向を光軸と呼ぶ。

宝石中のインクルージョンなどが二重に見える様子をダブリングといい、宝石鑑別に役立つ情報となる。
 
ダブリングは複屈折性の結晶だけから観察され、単屈折性の物質からは観察されない。このため、ダイアモンドジルコン、あるいはダイアモンドと合成モアッサナイトの識別に於いて『ダブリング』の検査は有効である。ダイアモンドは単屈折性だがジルコン及び合成モアッサナイトはいずれも複屈折性であり、10倍のルーペで確認できる強さでダブリングを示す。繰り返すが、ダイアモンドをはじめ、ガーネットやスピネルなど単屈折性の宝石がダブリングを示すことは無い。
  

10倍のルーペでダブリングを検査する場合には、石を通して石の反対側にあるファセット稜線を注視すると良い。その際、テーブル(一番大きな面)に対して垂直方向からではなく斜め(例えばベゼル ファセットを通して)から観察する方が良い。これは、光軸がテーブルに対して垂直方向になるように石取りされている可能性があるためである。また1方向から観察してダブリングが見えない場合には、他の方向からも確認する事が肝要。この理由も光軸方向から観察していることを避ける為である。

例えば合成モアサナイトや無色のジルコンの場合、複数方向から観察すれば必ずダブリングを見つけることが出来る。

観察された様子がダブリングであることを確認するためには、カメラ店で販売されているレンズ装着用の偏光フィルターを用いると良い。確認手順は以下の通り。

  1. 検査石を固定する。リングならばリングケースに差す、裸石ならば机上にパビリオンを下に、テーブルが手前になるよう斜めに置けば良い。
     
  2. 片手にルーペ、片手に偏光フィルターを持つ。
     
  3. 石とルーペの間に偏光フィルターをおき、偏光フィルター越しに石を通して石の反対側にあるファセット稜線に焦点が合うようにルーペを近づける。
    通常の10倍ルーペの場合ルーペと2.5cmで距離で焦点が合う。
    なお、この状態ではダブリングは見えないから、ファセットは1本の線に見えるはずである。
     
  4. ファセット稜線(くどいようだが、石を通して反対側にあるファセット稜線)を注視しながら、偏光フィルターを素早く90度程度回転させる。
    ダイアモンドの場合ファセット稜線に変化は現れないが、合成モアッサナイトなどの複屈折性結晶の場合にはファセット稜線が上下左右のいずれかに動く。そして偏光フィルターを元の位置に戻せば、ファセット稜線は再び動いて最初の位置に戻る。
このように、偏光フィルターの回転に合わせてファセット稜線が動いたならば、その検査石が複屈折性であることが証明される。つまり検査石はダイアモンドなどの単屈折性宝石では無いことを意味する。

関連: 宝石鑑別のヒント


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