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cvd, 化学気相法
 
chemical vapor deposition process


化学気相法(ケミカル・ヴェイパー・デポジション・プロセス)chemical vapor deposition processとは合成ダイアモンドの製法のひとつで、メタンなどの炭素源と水素の混合気体からダイアモンド結晶成長させる方法。

2018年現在、0.2ct以下のサイズが中心だが、年間200万キャラットの生産量と推移されている。

この方法で結晶化した合成ダイヤモンド(あるいはラボ グロウン ダイヤモンド)はブラウニッシュになることが一般的。生産業者は結晶を高温高圧処理(HPHT)処理することでD,E,Fカラー、つまり無色あるいはそれに近い色にして販売することが一般的。

ダイアモンドの結晶は地下100kmを越える深部、つまり高圧力下で成長する。従来のダイアモンドの合成法(高圧フラックス法など)では、この天然ダイアモンド結晶の成長環境を再現した高圧力下で結晶生成を行うが、CVD法では大気圧の約10分の1という相対的に低い圧力でダイアモンド結晶の生成が可能である点が特徴的だ。

CVD法による合成ダイアモンドの主たる用途は、ダイアモンド被膜のコーティングである。例えば掘削用の超硬合金製の切り刃にダイアモンドコーティングを施すと切れ刃の耐摩耗性が大幅に向上する。またダイアモンドの高い化学的安定性を活かし、シリコンセンサーで作られた人工網膜にダイアモンドコーティングを施し体内への埋め込み実験に成功した例もある。

宝飾用途では、アメリカのボストンにあるアポロ ダイヤモンド社Apollo Diamond, Inc.)がCVD法による合成ダイアモンドの単結晶の生産を行っており、最初のファセット加工石を2003年に完成させている。

CVD合成ダイアモンドの諸特徴や天然ダイアモンドとの識別方法などはGIAの発行するGems & Gemologyの2004年春号や2007年冬号に発表されている。

当初、この方法で作られた結晶は天然ダイアモンドとの識別が困難といわれたが、現在の宝石鑑別技術では識別可能だ。


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