『ゲノム編集技術』公開勉強会 2018/11/10 その4

最後に、島薗進、阿久津英憲、天笠啓祐、アーサー・ビナード、毎日新聞千葉記者による、パネルディスカッション。

会場に来て初めて参加するように言われたという、千葉さんが閣議決定や概略などについて説明したあとは、各人それぞれ適宜、質疑応答も含めて。

統合科学技術・イノベーション会議(CSTI)戦略が閣議決定され、官邸主導の感が強まった。AI、バイオ、安全安心(安保のこと)などの五つの指針について、パブリックコメント募集中だそうだ。

不妊治療が多く行われているので、使われなくなったヒト受精胚がたくさんある。優生保護法の問題とも絡む。ゲノム編集技術による、修復と改良は紙一重。

CSTI直下にある、生命倫理調査会に、かつて島薗さんがおり、いまは、阿久津さんがいる。ヒト胚について、無闇に使わないというのが大原則だが、ただし、iPS細胞やES細胞なら…。

動物性集合胚について。豚の受精卵にヒトの胚を入れて培養することは既に認められている。五年前から論議されてきた、それを豚の体の中に入れることも認められ、来春には始まるのではないか。

大義名分として、食糧問題を解決するためというが、feed the worldという大義名分は、上から目線で、いかにも帝国主義的。ダウやモンサントなど大企業、経済の物語。食糧不足なのではなく、全世界の食糧の偏在を解決するシステムを作っていないだけ。

デザイナ−ベイビーやパーフェクトヒューマンを作るなんて、不遜じゃないか。パーフェクトってなに?移植研究のために、免疫不全の猿を作ることに成功したというのは、動物虐待ではないか。研究に役立つならば、と、一歩譲るにしても、豚の中に自分の遺伝子胚を入れて、自分のための臓器を作って移植すれば、免疫不全も起こらずに済むが、豚はそのために殺されるんだよね。

動物性集合胚は、まだまだ難しく、マウスとラットで実験段階にある。

キリスト教原理主義者だから言ってるんじゃない。動物の福祉はもちろん、人間の福祉の問題でもある。考える豚が出て来たらどうする。人間は、そこまで成り下がるのか。

阿久津さんが言う。実は、科学の進み方がものすごく早い。

島薗さんが言う。科学技術に倫理が追いつかない時代。

千葉さんが言う。法規制は進まないだろう。特に日本では。学術会議で言及はしている。DIYツールをカセットと言うが、それが簡単に手に入ることが問題。遺伝子ドライブによってテロの危険性が増す、だから、研究を進めようという方向になるだろう。

不妊治療が日本で多い理由。不妊治療を登録しているクリニックが600もある。制度上、高額だが、自治体で助成金を出しているところが多い。養子をとる数が少ない。高齢で出産を望む人が増えている。

蜂蜜は、北半球のは農薬で汚染されていて危ないから南半球のものを、という話もある。脳死臓器移植問題でも議論されたように、ヒエラルキーの問題がある。提供させられる側の差別。命の選別。

ロシアやヨーロッパの多くはNO! GMOだが、これと、ゲノム編集技術を使わない、ということとは、まったく別。あくまでも、予防原則。添加物や残留農薬についての国際的な基準は、貿易を中心に据えて設定されているので、基準が甘い。日本は、それに従順。

カルタヘナ法の対象から、農作物は外れている。野生生物のみが対象で、その中でも、外来種だけが対象で、在来種は外されている。在来種とは明治維新以前から日本にいるもの。つまり、対象となるものがほとんどない。ザル法。影響がないと証明するための証拠書類として、GMOも対象にすべきだが、ゲノム編集技術は対象外となってしまった。

軍事研究をNOと言えない大学。金ほしさだけではなく、研究者の意識、同じ研究を違う元手でやるだけ、という意識。こんな技術がどんどん開発されて、人間は死ななくていいのでしょうか。差別が促進されるばかり。命って何だ?

NBTなどの新しい技術が続々と出て来ている。「NBT(New Plant Breeding Techniques、新しい育種技術)とは、従来の交配や接木などに加えて、分子生物学的な手法を組み合わせた品種改良(育種)技術の総称。」

超人ハルクは、物語として面白い、物語が面白い方に、人は釣られてしまうが、自分の大切な人たちの役に立つか、豊かにするのか。

命とは、物語が続くこと。

ハーモナイゼーションだの、グローバリゼーションだのに、日本政府は気を取られているが、遺伝子やゲノムという、連綿として続いてきた物語を「弄る」のだとしたら、責任を取らなければならない。縄文人や未来人に顔向けできるかを考えなくてはいけない。大昔から続いてきた命の物語を、次の世代に、いい形で手渡すのが、私たちがしなくてはならないこと。


その1
その2
その3
その4
その5


ばあちゃんも生きとるよ
なんでんよか!
還暦記念