続いて、阿久津英憲さん。
国立成育医療研究センターで研究をしている、元々、産婦人科医の、会津の人。レジメのタイトルは、「細胞、幹細胞、受精胚〜生殖医療、再生医療〜」と盛り沢山。同郷の先輩野口英世の時代は、顕微鏡で細菌を見ていたが、いまは、最新機器で細胞を見ています、と始まる。
たった一個の細胞から生命は生まれる。
受精のダイナミズム、受精胚、不妊症、生殖補助医療、胚操作技術の臨床応用などについて解説。不妊症の原因は解明されていない。不妊治療で生まれるのは、18人に1人で、その割合が増えていて、日本が一番多く、7割以上が凍結保存されていた胚。生殖補助医療の課題として、マウスとヒトで比較すると、ヒト胚のほうが異常発生率が高い。
ゲノムは設計図、ゲノム=DNA=30億、遺伝子=タンパク質をつくる情報=日々更新されて現在2万弱、つまり、遺伝子は、ゲノムの5%にすぎない。人と人との違いは、そのうちの0.1%の差から生じるが、人とチンパジーとの違いは、1.0%の差から生まれる。ゲノム編集技術について、JohnOliverというコメディアンが、テレビ番組で上手に説明している。
設計図であるゲノムを書き換えると元に戻せないが、その設計図からコピーされたmRNAはいくらでもコピーできる、そこから、タンパク質が生まれる。いまやDIYバイオテックの時代で、技術を持った人が受託して、ゲノム編集することは、簡単にできる。
ゲノム編集を体細胞に施した場合、体の一部のゲノムが改変されるだけだが、受精卵に施すと、全身のゲノムが改変され、その改変は世代を超える。ゲノム編集技術とは、遺伝子の働きを知るための手法の一つだが、従来の遺伝子組み換えとは異なり、痕跡を残さず、改変される。
ヒト受精胚に対するゲノム編集技術の使用は、研究目的ならいいが、体内移植は容認できない。
結果的に、細胞すべてのゲノムを改変する。改変の結果は不可逆的で、世代を超える。現時点で技術は未熟なため、目的外の領域で変異を起こしてしまう。次世代以降に及ぼす影響は予測できない。基礎研究での活用はあり得るが、受精胚の取得や取り扱い方法の環境整備が必要。
つい先日、世界初の、パーキンソン病でiPS細胞応用の臨床試験が行われた。
受精卵が全能性を持ち、幹細胞が前駆細胞を作る一方で自己複製もするのに対して、組織幹細胞、前駆細胞、分化細胞となるにつれ、できることが限られてくる。幹細胞にも番付がある。序の口が、分化細胞とすると、大関は、体性幹細胞、横綱級が、iPS細胞やES細胞で、多能性幹細胞ということになる。何にでも変化し、無限に増え、再生医療での応用が期待されている。
キメラや動物性集合胚を活用した再生医療について、日本には法律があるし、研究段階のものも多い。ヒトES細胞を用いた再生医療が世界で始まっている。臨床試験では自分自身にはその効果がない医療に参加することによって、難病治療発展のために自分の役割を見出すといった決意をしている人が、公の場に出て発言するようになってきた。日本にも、子どもの終末期医療のための施設が必要である。
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