休憩時間を挟んで、次は、市民バイオテクノロジー情報室代表、ジャーナリストの天笠啓祐さん。タイトルは、「合成生物学とその規制」。
合成生物学とは、生物を合成することで生命を解明する学問を指す。遺伝子やゲノムの研究をしてきたこの学問の当面の目的は、細胞の人工合成であり、最終目標は、生物の人工合成である。
合成生物学については、わずか10年前の2008年、生物多様性条約締約国会議(COP)で、その扱いが提案された。1990年代初め、アメリカのクレイグ・ベンター研究所が、DNAの人工合成によって人工生命を誕生させ、遺伝子特許を申請した。
1990年代から2000年代前半に、ヒトゲノム解析計画(HGP-read Human Genome Project-read)が行われた。2016年に、30億対からなる人間のDNAをすべて人工合成して働かせる、ヒトゲノム合成計画(HGP-write Human Genome Project-write)が発表された。HGP-writeからHumanが消え、GP-writeと改称されている。
人間の全DNAを小さな断片に分け、その断片と同じものを人工合成し、合成されたDNAの全断片をつなぎ合わせ、つなぎ合わせたDNAをヒトの細胞の中に入れて働かせ、人造人間、あるいは、DNAを自在に変更した生命体を誕生させることを最終目標としている。
人工生命の特許を巡り、特許紛争が勃発しており、2013年の時点で、バイエルとモンサント連合、デュポンとダウ・ケミカル連合、中国化工集団公司とシンジェンタ連合が、種子や農薬の世界トップスリーを占めている。遺伝子ドライブ技術を使うと、雌雄を区別する遺伝子を改変するなどして、種の絶滅がもたらされ、生態系を破壊しかねない。軍事技術への応用研究が、既に米国国防省の資金で進められている。
日本では、カルタヘナ法をはじめ、省庁横断ではなく、各省それぞれの基本法や表示法で、安全性評価の指針などが示されている。
ゲノム編集などの新しい技術の問題点。
遺伝子を破壊し、生物の大事な機能を殺ぐ。狙った遺伝子以外を切断(オフターゲット作用)したり、DNAの位置を乱す(モザイク)危険性がある。RNA干渉法では他の生物の劣化を招く虞がある。農薬として散布されるケースもある。
CRISPR-Cas9(clustered regularly interspaced short palindromic repeats / CRISPR associated proteins DNA二本鎖を切断((Double Strand Breaks=DSBs))してゲノム配列の任意の場所を削除、置換、挿入することができる新しい遺伝子改変技術)は、がん抑制遺伝子の機能を抑制する。
破壊した痕跡が残りにくく、操作したかどうか分からなくなる。DIYバイオと言われ、簡単にオンライン注文できる。軍事技術への転用が容易。次世代以降に影響が波及する虞があるので、人間への応用は禁止すべきだが。遺伝子ドライブ技術は、種の絶滅につながる。操作の容易さと結果の重大さの間のギャップが大きい。
エコロジスト誌、ニューサイエンティスト誌、ネイチャー誌、インデペンデント・サイエンス・ニュース誌、米国科学アカデミー、ETCグループ、MITテクノロジー・レヴュー誌、世界自然保護会議など、批判的な意見を表明している。
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