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ガムラングループ
活動に向けて
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project 2008
インドネシア、バリ島。ガムランの音が地を揺るがし、天まで昇る島。いつの頃からか、幾度となく通い続ける場所。
そもそもは、東京での、ガムランの音との出会いだった。青銅の柔らかく深い響き。今までにない安らかな感触。そして、美しいモザイク模様のようなフレーズとリズムが交錯する異空間。シンプルであるのに複雑に絡み合う。絡み合って、やがてただひとつになって進んでゆく。疾走するビート、たゆたふ音色、鼓動が高鳴り、離れられなくなった。

異国の島で、自分の国、自分たちの音楽、自らの音楽を思う。
なぜ、私は、私たちは、異国の音楽や舞踊、芸能をこんなに愛するのか、なぜ、此の地の人々のように、何の疑問もなく、毎日顔を洗ってご飯を食べ神に祈るように、音楽できないのか。

東京に在っても、バリに在っても、異邦人である自分を知る。
自らのアイデンティティーを探し求め続ける日本人。140年前に一度壊してしまったもの、60年前に一度失くしてしまった自信はなかなか戻らない。私達のルーツは?私達のカルチャーは?

アジアのしたたかな友人たちに問う。「私たちはどこへ行けばよいのだろうか?」
彼等は答える。「そのまま、あるがままに。神さまだけが先のことを知っている。」
そうだ。

このしたたかで、智慧深い友人に導かれていこう。人と人との濃いつながりが澱のように堆積し、飽和してはち切れそうな瞬間に行われる祭礼。音楽や舞踊が、その地の空気と人々の身体と大地とすべてのものを掻き回し、整え、浄化する。そして人々はまた安心して平和な日常に戻っていく。

この大いなる音の渦にまかれていこう。人と自然の叡智の共同作業によって生まれた複雑な響き。倍音やノイズがうなりを発し、重なり合う人々のビートがリズムのうなり=グルーヴを生む。直線や点ではない、複雑な、あるいはフラクタルな空間。天然の心地よい揺りかごのような空間。
これはまさに人と自然から生まれた、生きたリアルな儀式であり、祭礼である。
そして、そこに、私達のこれから進むべき道が見えてくるのではないか。

都会で毎夜繰り返される、ライブ、パフォーマンス、パーティー、etc… 
その祝祭の中に、限りなく祝祭的な音の渦を投じたい。

その第一歩は、シンプルに、ひたすらに、音とうなりの曲線を描く。無からの出発。
Pureな光の中に虹が見えてくる。
母なる大地と父なる天を結ぶ大いなる流れに、心地よく身を任せよう。

第二歩、熱帯への憧憬。限りなく南国に憧れる自分達。解放される感覚器官。

第三歩、土への回帰。大和の国との再会。

その先は。
文: 櫻田素子