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ペインティング / ペインテッド ガードル
painting / painted gardle

ダイヤモンドのカットグレーディングの知識

2006年1月(日本では同年4月)に導入されたGIA新しいダイアモンド カット グレーディング システムで新たに導入された考え方。

ペインティングとは、ダイアモンドのガードルの一部を厚くして重量歩留まりを向上させる手法のひとつ。ペインティングが施されたファセットをペインテッド ガードル(painted gardle)とも表現する。

隣り合うアッパー ガードル ファセット同士の稜線と、隣り合うローワー ガードル ファセット同士の稜線が向き合う部分を厚くする(ファセットの名称についてはこちら参照)。

厚くなった結果、フェース・アップで見たダイアモンドの大きさには変化が生じないにも関わらず、重量だけが増える(重量で取引されるダイアモンドであるから、重量の増加は支払う金額が高くなる事を意味する)。

ペインティングを極端に施すと、原石から研磨石へとカットする際、3%程余分に重量を残すことができるという。逆の言い方をすれば、カットの良い石は、それだけ重量を犠牲にしていることとなり、これが、カットの良い石の方が悪い石よりも価格が高くなる理由である。

またペインティングがガードル全体に均一に施されていればともかく、不均一なペインティングは石のシンメトリーを崩し、それは光の反射パターンを乱すこととなる。

ペインティングはクラウン側だけに施される場合(図2)もあれば、パビリオン側にだけ(図3)、あるいは両方に施される(図4)可能性がある。

クラウン側に極端なペインティングが施された場合にはブライトネスブリリアンシー)やシンチレーションのパターンから躍動感が欠け、フェース アップの外観の魅力を欠くこととなる。その理由は次のようなものだ。

ペインティングがフェース アップの外観から魅力を奪う訳:

クラウン側へのペインティングは、つまり該当箇所でガードルの上端が上に移動するということである。ガードルの上端が上に上がれば、必然的にその箇所を作る、2枚のアッパーガードル ファセット面、及びアッパーガードルとベゼル ファセット面が接している角度が浅くなるということを意味する。これによって、通常ならば一枚のアッパー ガードルだけ、あるいはベゼル ファセットだけしか光を反射しない角度であっても複数のファセットが同時に光を反射する機会が増えることとなる。つまり、実際には2から3枚のファセットがあるにも関わらずファセット間の角度が浅いために1枚の大きなファセットがあるかのように見えるため、石がのっぺりとした、立体感を欠く外観となる。

シンチレーションに関しても同様に理屈で、本来であれば石の傾き、あるいは観察者の移動につれて順に光を反射してきらめいたダイアモンドから、動きにつれた光の反射の遷移といったものが減ずることとなる。

GIAの新しいダイアモンド カット グレーディング システムでは、従来のプロポーションを主体としたカット判断ではなく、様々なプロポーションの組み合わせをも判断基準に取り入れている。

関連: ディギングアウト


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