1997/10/16
秋は空が青くて高くて、さびしかねぇ。
四年まえ、母が亡くなった。
さわやかな風に線香のけむりがたゆたう。
ばあちゃんは、まきば園で運動会に参加した、はずだ。
近ごろ、車椅子ば〜っかり乗っとるもんなぁ。足のふらふらして、立っておられん。
メシば食うときしか、動かんけんなぁ。日暮らし、な〜んもせんでおってよかかねぇ。
春から夏にかけて、ばあちゃんはよく転んだ。
その直後の顔をはじめて見たときは、驚いた。
目のまわりに、青たんや赤たんができている。
額を打ったはずなのに、内出血が下に降りて、
黄色くなったところは治りかけの証拠だとか。
チューブだらけの臨終の母を思い出させる色。
ようやく元どおりになったころ、また、転ぶ。
直後に会うたびに、またぎくりとさせられた。
家でばあちゃんと一緒に暮していれば・・・。
煮詰まっている自問自答を、一頻り繰り返す。
秋の風が吹きはじめ、転ばなくなったせいか、
会うたびにばあちゃんの顔はきれいなままで、
喜んでいたら、スタッフにひっそり言われた。
近ごろ車椅子ばかりで、歩かなくなったから。
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