キルケゴールの著書のタイトル「死に至る病」は新約聖書の「ヨハネによる福音書」からとられている。では、「ヨハネによる福音書」に描かれた「死に至る病」事件とはどんな事件なのか? それは、「ヨハネによる福音書」独特の巧妙な仕掛けのなかに語られる、いわば「死と新生」が幾重にも織りなすドラマのなかの重要な一コマとして描かれている事件なのである。今回は「ヨハネによる福音書」がこのドラマのためにどんな場面を設定しているかを中心に論じてみた。