9月16日

1時30分に着いた。オムツ交換の時間だった。カーテンの中から、男声が聞こえる。ばあちゃんもしきりに答えている。

カーテンが開くと、満面の笑顔。

うれしそうだねぇ、やっぱりお兄さんに相手してもらうとうれしいよねぇ、と言うと、ご家族が見えたと声だけでも分かるんですよ、ほら、うれしそう、よかったぁ、と青年。

一ヶ月に二回は、ばあちゃんに会いに来ているつもりだったが、近ごろ、一ヶ月に一回だ。時には、二ヶ月ぐらい間が空くこともある。スタッフからしてみれば、なかなかやって来ない家族の部類に入るだろう。

青年はしきりに、家族来訪の効果を説いたが、違うと思うなぁ。ばあちゃんの稀に見る笑顔のわけは・・・。

青年が去ったあと、まもなく、テレビの昼メロの隣で、ばあちゃんは口をパカッと開けて眠り始めた。今日は帰るまでこのままだろうか。昼食後の昼寝。きもちいいだろう。ベッドの傍らに腰かけて、本を読み始めた。1時間半経った頃、やっとお目覚め。

ボランティアの女の子がおやつを持ってきた。ベッドを椅子の背のようになるまで立て、足のほうも心持ち高くする。チョコまんを小さくちぎっては、ばあちゃんの口の中に。

しあわせなこと。

半分ぐらい食べたところで、粉っぽさにむせた。あとは、持ってきたムースで引き受けることにした。

彼女にまきば園の感想を聞くと、スタッフの出入りの激しさに驚きはしたものの、他の彼女が知っている施設とは違い、時間で追い立てられることがない。時間割をこなすために、余裕なく走りまわるようなことがない。時間がゆったり流れているところがいい、と言っていた。放牧の牧場だもんねぇ。

かぼちゃのムースをきれいに食べた。うまかねぇ。

何の味がした? 首を傾げている。かぼちゃの味じゃなかった?

か・ぼ・ちゃ、かぁ。うまかねぇ。

いつも普通名詞もうろ覚えになったような調子でいるが、このときは違った。ああ、あのほくほくしたかぼちゃたいねぇと実物を実感しながら、復唱したように聞こえた。そろそろかぼちゃの季節でっせぇ。ばあちゃんの煮物を思い出す。

また目がしょぼしょぼしてきた。おやつのあとの食休みか。思わず、くしゃみが出た。風邪でも引いたのか、ばあちゃんにうつしたら大変だ。

そこで早めに引き上げた。

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