11月21日 -介護保険制度説明会-来春から施行される介護保険制度についての説明会に出た。お上をはじめ、現場の隅々まで、何が何やらどうなるか分からんなぁ、という状況であることがよく分かった。 現在特養に入居している人は、経過措置として5年の猶予がある。要介護度がたとえ自立や要支援と判定されようとも、向こう5年間は、現在のまま入居を認められる。その後はどうなるのか。要介護度の判定によっては、退所の対象になる。 介護保険制度が導入されると、身寄りがない、介護の手がない、わずかな年金しか収入がない、生活保護を受けているなどを主たる理由とした社会的入居という措置は認められなくなる。すべて、綿密にデータ分析された「要介護度」次第。たとえ車椅子の独居生活であろうと、自分で日常生活ができるならば、自立、あるいは、要支援と判定される確率が高く、実際に入居の対象になると考えられる要介護度3から5には遠く及ばない。 特養と新制度との絡みには、現在入居している人たちの将来がかかっているだけではない。これから入居を考えている人たちにとっても、今までより明らかに入居のための敷き居が高くなる。これまでも申請してから入居にいたるまで、数年待機するのが常であったが、来春からは、入居の対象となる要介護度を得ることができなければ、待機以前の問題となる。 入居は夢のまた夢、あるいは、もともと自宅で最期を迎えたいと希望しているとして、在宅介護サービスを受けるとなると、さまざまなサービスを受けるための経費はかなりのものになる。要介護度が高ければ高いほど支給される介護費用も高くなるが、十分なサービスを受けるには、要介護度に応じた上限額では足りない場合も出てくる。その超過額は自己負担となる。また、要介護度が低ければ低いほどその上限も越えやすく、低所得の年金暮しであったり、身寄りがなかったりする人などは、サービスを受けにくくなる。心身ともにサービスを欲していても、経済的な余裕がないだろう。 在宅介護サービスを受けるためには、もちろん月々の介護保険料を支払った上で、サービスにかかる介護費用の一割を自己負担し、さらに上限額を越えた場合は、超過分を負担しなければならない。 これを、お役所流に表現すると、月々の保険料を支払いさえすれば、介護費用の一割を負担するだけでサービスを受けることができます、それぞれの要介護度に見合うだけの十分なサービスにかかる費用をそれぞれの上限額として設定していますので、それ以上のサービスを受ける必要はありません、ということになろうか。 先日、ニュースでこんな表現を聞いた。サービスにかかる経費の90%は自治体が負担してくれる、だとさ。 その具体的な数字で、選挙もからんで、ぐらぐらと揺れているようだが、皮相ばかりが取り沙汰されている。 たとえば、家族に介護費用を支払ってみるだとか、保険料を当分無料にするだとか、そんな一時的な宣伝用スローガンなど、笑止千万だ。 そりゃ、金はいくらでもほしいが、介護する家族がいない事情や状況も多くあるだろう、そもそも、数千円の保険料が無料になっても、万単位のサービスを受けるには、雀の涙だ。そして、介護する人にとって、また、介護される人にとって、一番ほしいのは金そのものじゃない。 愛だ、精神的なゆとりだ、心のやすらぎだ。家族の愛、友人の愛、ヘルパーの愛、ケアスタッフの愛、地域の人たちの愛、介護してくれる人たちへの愛。 当たり前の話だが、金だけじゃ解決できないし、また、金がなければ解決に至らない。ただ行政は金でなんとかする方向にしか動かないので、失業対策と言っては、不用意に地面をほじくりかえし、空虚な巨大建築物を作り、埃にまみれた公文書をデジタル化し、億単位の退職金を出している金融機関を救済するばかりだ。 愛が行き届くような金の使い方はないのか。 |