「お悔やみ欄」

 銀行から戻ると葬儀営業の言うとおり新聞社から電話があった。父親の死亡を新聞に掲載する許可を求めるものだった。次男(私)が対応したのは全国紙の一つ。
 お悔やみ欄と言うのは希望者が掲載料を払って載せているものだとばかり思っていた。新聞に名前を載せるような人はそれなりに有名もしくは裕福な人なのだろうと思っていたがそうではなかったのだ。
 しかし新聞社はどこから情報を手にいれるのだろうか。察するに葬儀社から新聞社への情報ルートがあるように思えるが。個人情報保護はどうなっている?確かにマスコミに対しては規制がゆるい法律ではあるが。
 掲載について住所を何処まで載せていいかと聞かれて、私は町名までということにしておいたが、別の新聞社に対応した長男は番地まで全て掲載を許可してしまった。そのため後で長男宛に、実家の住所で霊園のダイレクトメールが何通も届くこととなった(本来長男の住所はここ(実家)ではない)。なるほど、その手の業者は新聞も毎日チェックしているものなのだ。
 結局全国紙2紙と地元紙一つから電話があったが、全国紙のもう一つはどうしたんだろう?実家では一時期ずっと購読していたはずなのに(笑)。

 一日中親戚の人がお悔やみにきてくれて、その度にお茶をいれ、茶碗を洗ってお湯が無くなればまた沸かしてを繰り返す。なるほど、お葬式(まだ準備の段階だが)とは忙しいものだ。
 明日は湯灌(納棺)で、また人が大勢集まりそうだ。従兄弟が沢山の座布団を持ってきてくれた。法事で親戚の家に行く度に見るたくさんの座布団は、きっとレンタルだろうと思っていたがそうではなかった。あるところにはあるんだ。
 来客に備えて部屋の掃除、長男は特にトイレを念入りに行う。なんといってもまずは世間体を重視するのが我が家の家訓(笑)。
 夕方母親にホカホカ弁当の夕食を食べさせ病院に送り届ける。次男(私)はこの日も父親に付き添うために風呂へ入るためにいったんアパートに戻る。実家の風呂はもう何日も使っていないのでちょっと使う気になれなかったのだが、時々は使わないと色々な支障が出るんじゃないだろうかと心配になった。

 戻ってくると長男は(第三の)ビールを飲みながらの夕食。図らずも次男(私)も一緒に飲むことになってしまった。実は週末にマラソン大会出場の予定があったので自制していたんだけど(笑)。ここで飲んで大丈夫だろうかと心配しつつも、ついつい飲んでしまっう次男(私)だった。
 缶を数本開けて長男は(すぐ隣の)自宅に戻って行った。次男(私)は今晩も付き添いでコタツにあたりながら一晩中テレビを見て過ごす。
 1日目が終わった。父親がなくなったのが昨夜だったとは思えない1日だった。