手術前

 ひとまずこれが最後になるかもしれない(!)ので入院させたばかりの母親を連れてこなければ。とりあえずこの場は従兄に頼み、別の病院まで母親を迎えに行く。
 病院で外出申請の書類に記入したり、着替えさせたりとしていると担当の医師がやってきてなぜかいきなり怒られた(笑)突然のことで自分は訳が分からなかったが、私のことを昨日きた長男と勘違いしたらしい。要するに入院する必要のない人を無理やり入院させているので医師曰く、こういう場合は介護保険の手続きをしてほしいとのこと。
 そうは言ってもそういう手続きには一月以上かかるらしい。こういうことで老人医療費の無駄遣いをしているのだなと思いつつも、他に仕方がないのでここはとにかく頭を下げるしかないのだった。

 うがった見方をすれば、年寄りを入院させていても病院にはあまりうまみがないということでもあるのかも。

 おまけに父親の手術に母親が立ち会う必要があるのかと聞かれ、まさか母親の目の前でこれが最後になるかもしれないのでとは言えず、年が年なのだから医者だったらその辺のことは察して欲しいものだ。
 「いろいろと判断しなければならない場合があるかもしれないので」と答えるしかなかった...(汗)

 そんなこともあってやっとのこと母親を父親の病室まで連れてくる。父親はこの時は酸素マスクをしていて喋れない。母親には細かいことは話していないが、分かっているようでもあり落ち着いた様子だった。
 父親の手術はその日の予定の手術が終了してからということなので午後3時〜夕方位ということだった。まだ昼過ぎだったので母親を休ませるため従兄弟に一旦実家へ連れて帰ってもらう。
 待っている間、手術に向けて看護師(男性)が身体、特に場所が下腹部のため洗浄というか消毒などなどを行う。特に”へそのゴマ清掃”とかもあって、今はそんなことまでやるのかと思った。

 この様子では夕方の手術になるのかなと思いながらスマートフォンで時間をつぶす。それが3時を過ぎたとき突然手術開始ということになってしまった。これが最後になるかもしれないのに母親がまだ戻ってきていない。あわてて従兄に電話をすると、ちょうど病院の玄関口まで来ていて、父親が病室から運び出されようとするそのときに間一髪、父親と顔を合わせることができた。

 それからまた長い時間待つこととなる。待っている間にも病室にいろいろな機材が運び込まれてくるのだが、はたしてこれは無駄になってしまったりしないのだろうか?
 2時間ほどたっただろうか。やっと手術が終わったようで看護師に手術室横の部屋へ呼ばれる。しかし看護師はうまくいったともいかなかったとも何も言わない。
 従兄と二人で医師から説明を受ける。切り取った腸の一部や開腹した時の写真などを見せられる。べつにそんなもの見たくはないんだけど(笑)。腸は三分の一程度が壊死しており、腹の中にどす黒い液体が溜まっていた。ほんの数日前までは自分で車を運転して買い物に行っていたりしていたので、こんなになるまでなんともなかったのか不思議だ。
 ひとまず手術自体はうまくいったようで、後の回復は本人次第とうことだった。

 まあ最近は万一のためにこういった”エビデンス”を残しておく必要があるのだろう。

 病室ではもろもろの機械・チューブがつなげられて、あとは看護師(女性)が時々様子を見に来る程度。特に緊迫した状態でもないようなので、今日のところは母親をもとの病院へ送り、従兄にも今日は帰ってもらう。
 8時を過ぎて隣県から仕事を終えた長男が病院にかけつけてきた。話し合った結果、お互い今は仕事から離れられないこと、このままいてもただいるだけしかないということで、薄情ではあるがあとは病院に任せて帰宅することにする。
 今度来られるのは次の週末だ。