’86年6月21・22日NHKホール

LIVE ACT TULIP ’86 SPECIAL




 大都市ツアーと銘打ったツアー。大都市ツアーといえば聞こえはいいが、ようするにこの頃すでに集客力が激減していて以前のように全国を細かく回るツアーは出来なくなっていたというのが本当のところだろう。

 意表をつく(それもやや盛り上がりに欠ける)未発表曲のオープニングから第二期後期の曲を中心に最新アルバム「Jack is a boy」の曲を交えた選曲。前ツアーでは歌わなかった松本、丹野も含め今回はメンバー全員がリード・ヴォーカルを担当。
 松本が歌う時は通常のドラム・セットではなく、ヴォーカル用にスタンディングで歌えるようにしたセットを使っていた。
 いつものように映像を使った演出もあった。メンバーと一緒にサポートのギタリスト鈴川真樹も参加したものだったので、もしかしたら彼をメンバーにしたいという考えがあったのかも知れない。
 2日目のアンコールでは前回のツアーでキーボードを勤めた菊池圭介が飛び入りで参加するという場面もあった。

 前回のツアーではメンバーが替わったとはいえ定番の曲は押さえていた。それがこのツアーでは全て外されてしまった。そのことも観客動員を減らす原因になったのではないか。「夢中さ君に」さえ演奏されていないとは。
 コンサートの演出もなんとなく客席との溝を感じさせるものだった。「My sleze babe」では財津が上から降りてきた巨大なタバコの箱にスッポリ収まるという演出があったが、誰がそんなことを望んだであろうか(泣)。
 なによりもエンディングは財津がセットの階段を上って行き客席に背を向けて立ちすくむ中で幕が降りるというもので、意味不明の演出もさることながら観客はこれで終わりなのかどうか判断がつかず、アンコールの拍手のタイミングがつかめないという間抜けな状態で終わってしまった。

 よく言われる「少しでもファンの期待を裏切りたい」という言葉は”思っていた期待を裏切っても別の形で満足させる”という意味だろうが、チューリップの場合は期待を裏切りすぎて外してしまっている感じ。
 近くの席にいた人たちは2回目のアンコールが終わっても「まだあの曲をやっていなから」、「まだあの曲が出ていない」などと余裕で構えていたらそのままコンサートは終わってしまった。”あの曲”というのは名前は出なかったが間違いなく誰もが望んでいる”あの曲”のことだと思う。そういうところにもチューリップ(=財津)の裏切り過ぎを感じる。

 余談ながら、いくら財津が「My sleze babe」を歌おうと、ロビーでタバコを吸うお姉さん達が目立って来た頃でもあった。