全世界でテレビ放映されるビートルズのドキュメンタリーシリーズ、
The Beatles Anthology は、ビートルズ自身の会社として 1968 年に設立され、
現在もビートルズ関連の権利を一括して管理する Apple Corps により
全 6 時間のテレビシリーズとして制作されたもの。
今年初めから水面下で世界中のテレビ局の間で放映権の獲得競争が
繰り広げられていたが、今夏に米 ABC テレビが世界に先駆けて放映権を獲得、
11 月 19 日、22 日、23日 のゴールデンタイムに各 2 時間の特別枠を用意して
放映することを発表した。一説によると、米 ABC がその放映権料として提示した額は
10 億円とも言われている。
11 月 19 日の初日は全米で 4,700 万人の視聴者がみたそうで、
この時間帯、ABC は視聴率争いでも top (29%) になり、
週刊ランキングでは全番組中4位の成績を収めたそうだ。
イギリスでも ITV と BBC の間で熾烈な争いが繰り広げられたが、
最終的に ITV が放映権を獲得、
11 月 26 日から 2 時間特番から 5 週のシリーズとスタートすることを発表した。
この他、フランスでは Channel Canal + が12月に(Free As A Bird はこれとは別に
トークショー番組 'Nulle Part Ailleurs'(19時〜20時半) で11/20に)、
ノルウェーでは NRK が 11/25 から放映を開始する。
シンガポールは12/23、12/30、1/6 の3回に分けて放映。
日本での放映権も放映権争いが激しく、なかなか決まらなかったが、
まず最近海外ソフトの買い付け業務に力を入れている三菱商事が
英Appleから放映権を購入、これを最終的にジョン・レノン未亡人である
オノ・ヨーコさんがニュース・ステーションや徹子の部屋に
複数回ゲスト出演しているなどの信頼関係から(某スポーツ紙記事より)、
テレビ朝日(全国朝日放送)が獲得した。
まず新曲 Free As A Bird を 11 月 20 日に同系列の「ニュースステーション」枠内で
放映、つづいてもう一つの新曲 Real Love も 11 月 23 日に「ニュースステーション」
で放映された。
そしてアンソロジーは 12 月 31 日大晦日、午後6時〜11時半で連続5時間半に渡って
放映された。
こうした話はいわゆる「噂話」の域を出るものではなかったが、90年代に入って Apple Corps の活動が再び活発になり、Apple label の旧譜の再発売や、 Live At The BBC の発売を経て、ようやくはじめての「公式な」アンソロジーが 登場することになった。
このアンソロジーシリーズでは、Apple が所有する貴重なプロモーションフィルム
や、各国のTV局の撮影した映像、そしてメンバーがここに所有していたプライベート
フィルムなども含まれる。
音の方でもこのTVシリーズと連動して、未発表音源を多数含んだ
アンソロジーCD が 2枚組CD × 3セット、
というボリュームで 1995 年 11 月から翌 96 年 5 月にかけて、
3 回に渡ってリリースされる。
その中でも、最も話題を呼んでいるのが、ビートルズとしての新曲 2 (?) 曲。
メンバーはこの新曲について、当初「あくまでもポール、ジョージ、リンゴとしての
曲で、ビートルズの新曲として発表することはないし、あくまでも
テレビシリーズ用の曲として制作しているので、レコードとして発表する予定もない」
と明言していた。
しかし、故ジョン・レノンの未亡人である小野洋子さんがジョンの自宅での
デモレコーディングテープの提供を申し出たため、
最新の技術でジョンのボーカルを抽出、残りの 3 人が演奏とコーラスをつける形で
曲を完成させた。
曲の出来にはポール、ジョージ、リンゴの 3 人とも非常に満足しており、
最終的にビートルズの新曲としてリリースすることを了承したという。
洋子さんも、先日のニュースステーションでの出演で「すばらしい仕上がりです」
とコメントするなど、気に入っている様子である。
この新曲2曲は、プロモフィルムも作成され、アンソロジーTVの枠内でも放映される。
なお、この Free As A Bird はアンソロジーの放映権とは別に、各国での初放映権が 売られており、これも我が国ではテレビ朝日が獲得。 このビデオは 11 月 20 日に同系列の「ニュースステーション」枠内で放映され、 またもう一つの新曲 Real Love も 11 月 23 日に「ニュースステーション」枠内で 放映された。
シリーズディレクターの Bob Smeaton が95年12月号の Record Collector 誌の インタビューで語ったところによると、米ABC は莫大な放映権料を賄うために CM スポットを大量に入れる必要が生じ、結果的に 35 分短いバージョンを 作成し、放映することになったそうだ。削られた部分は、 主に若き日のビートルズ(Liverpool Days)で、約15のエピソードが 落っこちてしまったそうだ。