The Beatles ANTHOLOGY Vol.1

東芝EMIより 11月22日 日本発売
TOCP-8701〜02 税込 3,600円 (予価 4,700円から変更されました)

リリース前の厳戒体制は前代未聞

かねてから噂されていたビートルズの未発表音源シリーズが、 1995 年 11 月 22 日に日本発売された。

このシリーズは、全世界でテレビ放映されるビートルズの TVドキュメンタリーシリーズ、 The Beatles Anthology に合わせて、2 枚組 CD を 今年から来年にかけて 3 回に渡り、計 6 枚リリースするもの。
このテレビシリーズは、ビートルズ自身の会社として 1968 年に設立され、 現在もビートルズ関連の権利を一括して管理する Apple Corps により 全 6 時間のテレビシリーズとして制作されているもの。 今年初めから水面下で世界中のテレビ局の間で放映権の獲得競争が 繰り広げられていたが、今夏に米 ABC テレビが世界に先駆けて放映権を獲得、 11 月 19 日、22 日、23日 のゴールデンタイムに各 2 時間の特別枠を用意して 放映することを発表した。一説によると、米 ABC がその放映権料として提示した額は 10 億円とも言われている。
イギリスでも ITV と BBC の間で熾烈な争いが繰り広げられたが、 最終的に ITV が放映権を獲得、 11 月 26 日から 2 時間特番から 5 週のシリーズとスタートすることを発表した。
日本での放映権は三菱商事が英Appleから購入し、 最終的にこれをテレビ朝日(全国朝日放送)が獲得し、まず Free As A Bird を 11 月 20 日に同系列の「ニュースステーション」枠内で放映、 そしてアンソロジーは 12 月 31 日大晦日、午後6時〜11時半で連続5時間半に渡って 放映することが決定した。

こうした競争の加熱ぶりを受けて、今回 CD で発売される音源の方も 事前漏洩を防ぐために Apple の指示により徹底した管理がなされている。 (初放映権が高いため、事前に漏れると損害賠償になる可能性があるため。)

まず、Apple では今回の CD 用の音源が収録されたマスターテープや、 ジャケット写真印刷用原版の輸送ルートを細かく指示、 指示された以外の輸送などは完全に禁止したという。
また、今回の CD をプレスできる工場を蘭 EMI 、米 Capitol 、 そして日本の東芝 EMI(御殿場工場) の 3 工場のみに限定。
さらに、生産した CD を工場から市場に出荷する時間までも規定しており、 日本では米 ABC によるテレビシリーズ放映開始直後となる 11 月 20 日午前 10 時から出荷開始となる。 全国の店頭に行き渡る時間を考えて東芝 EMI では 公式発売日を 11 月 22 日としていたが、 実際に11 月 22 日開店時から商品が店頭に並んだ店は新宿の Virgin Megastore 他 数店のみで、多くの店は同日午後以降に入荷、販売となった。
なお、英米では EMI 、Capitol とも 11 月 21 日発売とアナウンスしている。

日本国内向けの初回プレスはあるものは23万枚、別の情報では30万枚となっているが、 発売当日には全て出荷され、在庫が切れた。
全世界でも、初回プレス合計800万枚で、これは最高新記録。 アメリカでは、Pearl Jam が保持していた初日販売枚数記録を更新、 発売後1週間の総合売上げでもPaerl Jamの前2作に続く85万5千枚で第3位 (もちろん2枚組としてはトップ)、 12 月 9 日付 Billboard 誌のアルバムチャートで見事初登場第1位となり、 翌週 12 月 16 日付でも1位を守っている。 この他、フランスでも初登場1位、デンマークでも1位を獲得、フィンランドでは2位、 ノルウェーでは5位、本家イギリスではMusicWeek誌では惜しくも2位止まり。 日本ではオリコン誌で洋楽アルバムでは1位(総合チャートでは3位)を獲得している。


今回の CD シリーズについて

この Anthology CD シリーズは、今までに EMI から CD 等の形態で発表されたことが 全く無い音源からのみ構成されている。
音源としては、EMI の保有するスタジオでの没テイクだけではなく、 自宅でのデモレコーディングや、テレビやラジオ出演の際のライブテイクなども 含まれている。

その中でも、最も話題を呼んでいるのが、ビートルズとしての新曲 2 (?) 曲。
メンバーはこの新曲について、当初「あくまでもポール、ジョージ、リンゴとしての 曲で、ビートルズの新曲として発表することはないし、あくまでも テレビシリーズ用の曲として制作しているので、レコードとして発表する予定もない」 と明言していた。
しかし、故ジョン・レノンの未亡人である小野洋子さんがジョンの自宅での デモレコーディングテープの提供を申し出たため、 最新の技術でジョンのボーカルを抽出、残りの 3 人が演奏とコーラスをつける形で 曲を完成させた。
曲の出来にはポール、ジョージ、リンゴの 3 人とも非常に満足しており、 最終的にビートルズの新曲としてリリースすることを了承したという。 洋子さんも、先日のニュースステーションでの出演で「すばらしい仕上がりです」 とコメントするなど、気に入っている様子である。

こうして完成された曲としては Free As A BirdReal Love の 2 曲が伝えられているが、このほかにも Grow Old With Me もしくは All For Love の 3 曲分用意されている、伝えているところもある。 このシリーズは 3 回に分けての発売なので、 3 曲分あることを期待したいところ。

なお、新曲第1弾となる Free As A Bird はシングルとしてもリリースされる。 当初は欧米並みの 12/6 リリースがアナウンスされたが、結局 1/1 に変更された。

The Beatles / Free As A Bird

CD: ToshibaEMI TOCP-8715 (1,500yen) 96/Jan/1
  1. Free As A Bird
  2. I Saw Her Standing There (take 9)
  3. This Boy (take 12/13)
  4. Christmasn Time Is Here Again

日本版初回プレスの解説の訂正

月刊THE BEATLES(BCC刊)95/12号 p.17 より引用
お詫びと訂正 「ザ・ビートルズ・アンソロジー1」日本盤のBCC担当の解説の一部に 誤りがありました。収録曲の分類についての項で、【カバー未発表曲】が 5 曲となっておりますが、正しくは`Besame Mucho、`How Do You Do It'、 `Shout'の 3 曲も加えた 8 曲です。 これにともなって、【EMIスタジオ・セッションからの既発曲のアウトテイク】は 14 曲 18 テイクから 12 曲 16 テイクに、【ライブ】は 16 曲から 15 曲にそれぞれ 訂正させていただきます。
※第2回出荷分以降については訂正されております

ということは、第1回出荷分はプレミアがつくということに…… (^_^;


曲目解説

米Capitol Records の official press release と 星光堂による FAX サービスより

DISC ONE

1. FREE AS A BIRD
ジョン・レノンが 1977 年頃ニューヨークの自宅でレコーディングした デモ・ヴァージョンに、1994 年 2 月から 3 月にかけて残る 3 人が音を加えて 完成させた 25 年ぶりの正真正銘の新曲。シングルとしても 12 月に発売が 予定されている。(The Beatles / Free As A Bird CD: ToshibaEMI TOCP-8715 (1,500yen) 95/Dec/6) プロデュースはビートルズの 3 人と ELO のジェフ・リン。 エンジニアは彼らの現役時代からゆかりのジェフ・エメリック。
2. WE WERE FOUR GUYS... (speech : John Lennon)
1970 年 12 月 8 日、ニューヨークでのジョンのインタビュー。 これは、ヤン・ウェナーによっておこなわれ、 「ローリング・ストーン」誌に掲載された。
3. THAT'LL BE THE DAY
4. IN SPITE OF ALL THE DANGER
1958 年の春から夏にかけてのある日、リヴァプールでディスクカッティングもできる レコーディング・スタジオをやっていたパーシー・フィリップスの店で 録音され、78rpm のディスクとしてカッティングされた、 クォリーメンとして唯一現存する音源。 長い間当時のクォリーメンのメンバーが保管していたが、 現在はポールが買い取ってディスクを所有している。 3 はバディ・ホリーのカヴァー、4 は唯一のポールとジョージの共作。 リード・ヴォーカルはいずれもジョン。3 人以外のメンバーは、 ピアノのジョン・ロウ、ドラムのコリン・ハントン。
5. SOMETIMES I'D BORROW... (speech : Paul McCartney)
1994 年 11 月 3 日、マーク・ルウィソンとのインタビューから。 1960 年の自宅でのレコーディングについて語っている。
6. HALLELUJAH, I LOVE HER SO
7. YOU'LL BE MINE
8. CAYENNE
1960 年、リヴァプールのポールの自宅で録音されたリハーサル・テイク 3 曲。 ジョン、ポール、ジョージ、スチュアート・サトクリフ(昨年大ヒットした 映画『バックビート』のストーリー上の主役で、当時のベーシストだったが、 喧嘩の際の怪我がもとで若くして病死した)の 4 人がギター、ドラマーは不在。 6 は 1956 年に発表されたレイ・チャールズのヴァージョンがオリジナルだが、 ビートルズはエディ・コクランが 1960 年 2 月にイギリスでヒットさせた バージョンをもとにカヴァーしている。 7 は未発表のレノン=マッカートニー曲。 8 はポール作の珍しいインスト・ナンバー。
9. FIRST OF ALL... (speech : Paul McCartney)
1962 年 10 月 27 日のポールのラジオ・インタビューから。 ハンブルグでのレコーディングについて語っている。
10. MY BONNIE
11. AIN'T SHE SWEET
12. CRY FOR A SHADOW
1961 年 4 月〜 7 月のビートルズ 2 回目のハンブルグ滞在中に録音され、 ポリドールから既発売の音源。 10 はトニー・シェリダンのバック・バンドとしてレコーディングされ、 ドイツでシングルとしてリリースされた。 (この時は、トニー・シェリダン&ザ・ビート・ブラザースとクレジットされた。) このシングルがもとで、ビートルズの名はリヴァプールでレコード店を経営していた ブライアン・エプスタインの耳に止まり、 やがて彼はビートルズとマネージャー契約することになる。 11 と 12 はバックバンドではなくビートルズ主体のレコーディングで、 11 はこの頃彼らがプレイしていた曲でジョンがリード・ヴォーカル、 12 はハリスン=レノンのインストゥルメンタル。 ポリドールではこの他にもシェリダンのバックとして数曲レコーディングしている。
13. BRIAN WAS A BEAUTIFUL GUY (speech : John Lennon)
ブライアン・エプスタインについてジョンが語った、1971 年 10 月 ニューヨークでのデイリー・エキスプレス紙および BBC ラジオ 1 用の インタビューから。
14. I SECURED THEM... (speech : Brian Epstain)
エプスタインが EMI のスタジオで自ら朗読録音していたエプスタインの自伝 A CELLARFULL OF NOISE から、 デッカ・レコードでのオーディションを振り返る部分の抜粋。 この録音はジョージ・マーティンがプロデュースにあたっていたが、 完成までいかなかった。
15. SEARCHIN'
16. THREE COOL CATS
17. THE SHEIK OF ARABY
18. LIKE DREAMERS DO
19. HELLO LITTLE GIRL
1962 年 1 月 1 日、デッカ・レコードでのオーディションを受けた(そして落ちた) 際の 15 曲から 5 曲をピックアップ。 15 はステージでよく演奏していたもので、アメリカの R&B グループ、 コースターズのカヴァー。16 もコースターズのカヴァーで、 リーバー=ストーラー作のナンバー、ジョージがリード・ヴォーカルをとる。 17 は 1940 年の映画『ティン・パン・アレイ』から。 リード・ヴォーカルをとるジョージに、ジョンとポールがアドリブをはさむ。 18、19 はレノン=マッカートニーのオリジナルだが、EMI と契約後、 これらの曲はレコーディングされていない。 18 は後にバーミンガムのバンド、アップルジャックスによってレコード化されヒット、 19 は同じくブライアンが抱えていたフォーモストによってヒットした。 このオーディションでは、Love Of The Loved というレノン=マッカートニーの オリジナルがもう 1 曲演奏されているが、ここには収録されなかった。
20. WELL, THE RECORDING TEST... (speech : Brian Epstein)
14 と同じく、エプスタインの自伝 A CELLARFULL OF NOISE からの抜粋。 EMI でのレコーディングテストを振り返る。
21. BESAME MUCHO
22. LOVE ME DO
デッかでの不採用から半年後の 1962 年 6 月 6 日、 ビートルズがパーロフォン・レーベルの A&R 、ジョージ・マーティンによる レコーディングテストのために、はじめてアビイ・ロードの EMI スタジオを訪れた 記念すべき日の、記念すべき録音。この日は 4 曲録音され、これは現存する 2 曲。 メンバーは、ジョン、ポール、ジョージ、そしてドラマーはピート・ベスト。 21 はコースターズが 1960 年にシングルとしてリリースしたもののカヴァー。 22 は唯一ピート・ベストがドラムを叩いているやや遅いテンポのヴァージョン。 これらのテープは処分されたと思われていたが、1980 年代になって 21 が 個人の所蔵していたリールで発見され、22 は今回のアンソロジー用のリサーチで 発掘された。
23. HOW DO YOU DO IT
ファースト・シングル用に 1962 年 9 月 4 日にレコーディングされたうちの 1 曲。 もう 1 曲は Love Me Do だったが、ジョージ・マーティンはこちらをシングルに と主張した。しかし、バンドはあくまでもシングルは自分たちの曲で、と対立、 結局マーティンが折れた。この曲はビートルズとしてはお蔵入りしたが、 後に 1963 年 1 月 22 日に同じくエプスタインがマネージメントするグループ、 ジェリー&ザ・ペースメーカーズがマーティンのプロデュースで録音、 彼らはデビュー曲でイギリス No.1 ヒットを獲得することとなった。
24. PLEASE PLEASE ME
1962 年 9 月 11 日、ファースト・シングル用 2 回目のレコーディング。 前回のレコーディングで初めて聴いたリンゴのドラムに不安を持ったマーティンは、 ドラマーとしてセッション・ドラマーのアンディ・ホワイトを起用した。 Love Me Do 、P.S. I Love You(1st シングルの B 面に使用)に続いて レコーディングされたのがこの曲。ハーモニカが入っていない他、 ヴォーカル、ドラムにいくつかの違いがあるテイクで、 このテープは処分されたものと思われていたが、今回のリサーチで発掘された。
25. ONE AFTER 909 (SEQUENCE)
26. ONE AFTER 909 (COMPLETE)
1963 年 3 月 5 日、サード・シングル From Me To You 用の レコーディングの終了間際に録音されたのが、 後にアルバム LET IT BE に収録されたこの曲。 まず、25 では途中で終わってしまうテイク 3 、4 とギターソロから始まるテイク 5 を 収録。26 はテイク 4 と 5 を編集したコンプリートバージョン。
27. LEND ME YOUR COMB
シングルの立て続けの成功により、ビートルズはレコード契約から 1 年も経たずに POP GO THE BEATLLES というレギュラー番組を BBC ラジオで持つことになった (1963 年 6 月 4 日から 9 月 24 日の全 15 回)。その 5 回目にオンエアされた パフォーマンスから、昨年発表されたアルバム THE BEATLES LIVE AT THE BBC (残念ながら今年 10 月末日をもって世界的に廃盤)に収録されると思われながらも 選に落ちていたナンバーがここに登場。 オリジナルは 1956 年発表のカール・パーキンスのヴァージョン。
28. I'LL GET YOU
イギリスのテレビ番組 Val Parnell's SUNDAY NIGHT AT THE LONDON PALLADIUM にビートルズがはじめて出演したときのライブ演奏で、1963 年 10 月 13 日収録。
29. WE WERE PERFORMERS... (speech : John Lennon)
1970 年 12 月 8 日、「ローリング・ストーン」誌のヤン・ウェナーによる ニューヨークでのジョンのインタビューから。 初期のライブパフォーマンスについて、ジョンが振り返る。
30. I SAW HER STANDING THERE
31. FROM ME TO YOU
32. MONEY (THAT'S WHAT I WANT)
33. YOU REALLY GOT A HOLD ON ME
34. ROLL OVER BEETHOVEN
イギリス国内での成功をおさめてからの初の海外ツアーは、 1963 年 10 月に行われたスカンジナビアツアー。 ここには、10 月 24 日に収録され、 11 月 11 日にスウェーデンのラジオ番組 POP '63 でオンエアされた 7 曲の中から 5 曲が収録されている。 30 と 31 はレノン=マッカートニーのオリジナル。 32 はモータウンのバレット・ストロングの曲。 33 はミラクルズのカヴァー。34 はチャック・ベリーのカヴァー。 この番組ではこのあと、She Loves You と Twist And Shout を演奏した。 このライブは非常に音質が良く、1982 年にはビートルズ結成 20 周年記念として レコード化する計画もあった。

DISC TWO

1. SHE LOVES YOU
2. TILL THERE WAS YOU
3. TWIST AND SHOUT
1963 年 11 月 4 日、ロンドンのプリンス・オブ・ウェールズ・シアターで 行われた ROYAL COMMAND PERFORMANCE(皇室御前演奏会、ファンの間では ロイヤル・ヴァラエティー・ショーと呼ばれている)での 4 曲のパフォーマンスから 3 曲。 3 の冒頭では、ジョンの「安い席のお客さんは手拍子を、 その他の(高い席の)方たちは宝石をならしてください (The people in the cheaper seats, clap your hands. And the rest of you, if you'll just rattle your jewelry.)」という有名な MC (通称宝石ジャラジャラ)が聞ける。
4. THIS BOY
5. I WANT TO HOLD YOUR HAND
6. ``BOYS, WHAT I WAS THINKING...'' (speech : Eric Morecambe and Ernie Wise)
7. MOONLIGHT BAY
イギリスのコメディ・テレビ・シリーズ The Morecambe And Wise Show からの パフォーマンス。まず、ライブで当時の最新シングルナンバーを B 面、 A 面の順に披露。 その後、アーニー・ワイズがエリック・マーカムにビートルズを紹介するが、 ここではギャグの応酬を繰り広げる。 その後、番組ではビートルズが縦縞ストライプのジャケットに着替えて、 アーニーに再度紹介されて登場。1940 年の映画『ティン・パン・アレイ』や、 1951 年のドリス・デイの歌唱で知られる 7 を、 ケニー・パウエルのピアノ・バッキングでマーカム、ワイズと一緒に歌う。
8. CAN'T BUY ME LOVE
Cant't Buy Me Love は、1964 年 1 月 29 日、パリ公演の合間を縫ってパリの EMI パテ・マルコーニ・スタジオで録音されたうちのテイク 4 に、 2 月 25 日のアビイ・ロードでのオーバーダブを加えたものが完成バージョンだが、 ここにはヴォーカル、リード・ギター、バッキング・ヴォーカルがかなり異なる テイク 2 が初登場。 このときのパリでのレコーディングは、本来ドイツの EMI エレクトローラ からの要請により、ドイツ語版の I Want To Hold Your Hand (Komm, Gib Mir Deine Hand) と She Loves You (Sie Liebt Dich) を録音するために セッティングされたが、その仕事がすんなり済んだため、急遽この曲を レコーディングすることになった。
9. ALL MY LOVING
ビートルズ、アメリカ初上陸時の ED SULLIVAN SHOW 伝説の初出演時 (1964 年 2 月 9 日、ニューヨーク時間夜 8 〜 9 時放映)の 1 曲目のナンバー。 全米 7300 万人がテレビに釘付けになり、この日の ED SULLIVAN SHOW は驚異的な視聴率 72% を獲得した。 また、番組の時間帯、ニューヨークでは青少年による犯罪が 1 件もなかった、 と言う噂も現在まで語り継がれている。なお、収録は前日 2 月 8 日に行われ、 先に 2 月 23 日放映分の 3 曲が収録されている。
10. YOU CAN'T DO THAT
11. AND I LOVE HER
アメリカから戻り、映画『ビートルズがやってくる ヤァ!ヤァ!ヤァ! (原題:A HARD DAY'S NIGHT)』の撮影に入るまでの間、1964 年 2 月 25 日に アビイ・ロードで行われたレコーディング・セッションで収録された。 10 は完成ヴァージョンに採用されたテイク 9 ではなく、 ジョンのガイド・ヴォーカルの入ったテイク 6。 11 はテイク 2 で、エレクトリック・ギター、ドラムも入っている、 ヘビーな初期バージョン。リリースされたヴァージョンには 2 日後に アコースティック・ギターとボンゴを使ってレコーディングし直されたテイクが 採用されている。
12. A HARD DAY'S NIGHT
1964 年 4 月 16 日、映画撮影の合間にレコーディングされた全 9 テイクのうちの 最初のテイク 1 。中間部のジョージ・マーティンのピアノのオーバーダブがなく、 最後は笑い声で終わっている。
13. I WANNA BE YOUR MAN
14. LONG TALL SALLY
15. BOYS
16. SHOUT
まだ映画の撮影が続いていた 1964 年 4 月 19 日、ロンドンの IBC スタジオで 収録されたテレビスペシャル AROUND THE BEATLES 用のレコーディングから 4 曲。 テレビ放映では、テレビスタジオ内でのファンの歓声がはいっていたが、 ここに収録したテイクはマイミング(口パク)用に事前にスタジオで録音されていた 歓声無しのマスターから取られており、しかもステレオで収録されている。 13 ではリンゴがリード・ヴォーカルを取り、ポールがコーラスをつける。 14 はリトル・リチャードの名曲をポールのヴォーカルでカヴァー。 15 はテレビでは放映されなかった、リンゴのヴォーカルナンバー。 そして、16 は EMI ではレコーディングされたことのない全くの未発表曲で、 アイズレー・ブラザースの1959 年の R&B ヒットを、 4 人が代わる代わるリード・ヴォーカルをとってカヴァーしている。 ただし、16 は編集で短くなっている。
17. I'LL BE BACK (TAKE 2)
18. I'LL BE BACK (TAKE 3)
1964 年 6 月 1 日のセッションから。 ビートルズがスタジオ内で曲のアイディアをいかに早く練り直すことが出来たかを 示す好例。採用されたのはテイク 16 だが、ここで聴けるうち、 テイク 2 ではまず 4 分の 3 拍子のワルツで演奏されているが、 これは途中で終わってしまう。 次のテイク 3 では、たった一つしかテイクが違わないのに、 テンポが 4 分の 4 拍子にかわっているなど、大きくテイク 2 と異なるのだ。
19. YOU KNOW WHAT TO DO
20. NO REPLY (DEMO)
ヨーロッパ・ツアーのため、デンマークへ出かける直前の 1964 年 6 月 3 日、 病気(扁桃腺の除去手術)のためリンゴを欠き、ギター、ベース、タンバリン という編成で収録された、デモレコーディング。 19 はジョージの 2 作目のオリジナルナンバーだが、結局今まで 世に出ることがなかった、完全な未発表曲。 最近まで、このテープの存在は(EMI でも)知られていなかった。 20 はブライアン・エプスタインが手がけていたソロ・アーティスト、 トミー・クイックリーのための曲として、ジョンがトミーの歌い方に似せて ヴォーカルを取っているが、結局この曲のトミーによるレコードは リリースされなかった。 なおこの日、同じスタジオでヨーロッパ・ツアーのためにたてた代役のドラマー、 ジミー・ニコルとのリハーサル・セッションを行っている。
21. MR. MOONLIGHT
1964 年 8 月 14 日に録音された、公式テイクの 2 ヶ月前の録音。 この曲はハンブルグ時代にも取り上げていただけあって曲としては固まっていたため、 アルバム BEATLES FOR SALE で採用された 10 月 18 日のテイクとよく似ているが、 ここではオルガンがまだ入っていない。 ここでは、まずイントロで失敗してジョンがポールに「惜しい!」 とからかわれるテイク 1 、その後、オルガンのかわりにギターソロの入っている テイク 4 が聴ける。
22. LEAVE MY KITTEN ALONE
これも 21 同様、1964 年 8 月 14 日に録音されたもの。 1959 年にリトル・ウィリー・ジョンがヒットさせ、 1961 年にはジョニー・プレストンがカヴァーしてヒットさせた。 ここでは、ジョンのリード・ヴォーカルで白熱のカヴァー。 この曲は 5 テイク録音されたが、当時は結局ミックスされることもなく、 今回が初のお目見えとなる。 1982 年にビートルズ結成20周年記念として、 未発表曲を集めたアルバムが企画されたとき、 この曲の出来が良かったため、米 Capitol レコードはシングルカットするつもりで、 ジャケットまで印刷してしまっていたが、結局その時はビートルズ側の許可が下りずに 発売中止になっている。
23. NO REPLY
20 のデモバージョンから数ヶ月経った 1964 年 9 月 30 日に録音されたテイク。 ここに収録されたのはマスターに採用されたテイク 8 ではなく、 終り近くでジョンの笑い声で中断してしまう、ややブルージーでドラマティックな テイク 2 。
24. EIGHT DAYS A WEEK (SEQUENCE)
25. EIGHT DAYS A WEEK (COMPLETE)
1964 年 10 月 6 日のレコーディングから収録。 アルバム BEATLES FOR SALE 収録曲で、アメリカではシングルカットもされた 陽気なナンバー。ここでは、イントロのアレンジの変遷がよく分かる。 まずアコースティックギターで演奏されるテイク 1 、 続いて Ooo というコーラスで入るテイク 2 、 テイク 4 ではハーモニーが一定のピッチで歌われる。 つづいて、コンプリート・バージョンのテイク 5 が登場するが、 このテイクはエンディングが通常テイクのようにギターではなく、 ヴォーカル・ハーモニーで終わる。 結局、採用されたのはこの後に録音されたテイク 6 であった。
26. KANSAS CITY/HEY-HEY-HEY-HEY!
8 曲をたった 1 日で収録してしまった 1964 年 10 月 18 日のレコーディングから。 この曲は 2 テイク録音されたが、採用されたのはテイク 1 だった。 ここでは、採用されなかったテイク 2 を収録している。

関連リンク

Capitol Records THE BEATLES ANTHOLOGY
アメリカの Capitol Records が、Anthology のページを open しました。
ジャケットの写真や、Capitol がだしてきた Press release の他、 下でも紹介している ABC Televison(television) と Life magazine(print) へのポインタがあります。
EMI (Holland) THE BEATLES ANTHOLOGY
Europe EMI の Anthology ページです。
Free As A Bird の .wav ファイル、.mpeg ファイルがあります。
LIFE magazine : BEATLES SPECIAL
アメリカの LIFE 誌のビートルズページです。
アンソロジーでの盛り上がりを受けて、過去の LIFE 誌からの写真や、 ビートルズがカバーフォトを飾ったときの表紙、 最新号 LIFE SPECIAL : Beatles Reunion からの記事など、盛り沢山です。
ABC Television Network BEATLES ANTHOLOGY
アメリカで ANTHOLOGY シリーズを放映する ABC テレビのアンソロジーページです。
アップルの広報担当、デレク・テイラー氏のプレスリリースなどがあります。
Parlophone's THE BEATLES ANTHOLOGY TRACK LISTING
Parophone レーベルの Web に、ANTHOLOGY CD Vol.1 のトラックリストがあります。

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Update - April 23 1996