アスカの両手が勢いよく振り下ろされ、プラグスーツに包まれた両腿に叩き付けられる。エントリープラグ内に満たされたL.C.L.に乱流が巻き起こった。
「冗ッ談じゃないわよ。あんな弱そうな奴らなんて、私だけで充分よ。内蔵電源の残量が少なくったってナントカして見せるわ。なんで、この私がバカシンジの送り迎えなんてしてやらなきゃなンないのよっ。バカにするのもいい加減にしてよね!」
「いい、アスカ?これは命令よ。シンジ君を弐号機に乗せて初号機へと急ぎなさい」
にべもなくアスカの意見を切り捨てるミサト。強張った余裕のない声の響き。
「イヤよっ!」
金色の髪がざあっとL.C.L.を流れる。
「バカシンジなんて必要ないわ。私と弐号機があれば何だって出来るわよ。見てなさい!」
操縦棹を握り直すアスカ。横目でちらりと白色の悪魔たちを見やる。かすかに動き、戦闘態勢に入る弐号機。獲物に襲い掛かる肉食動物のように猫足立つ。挑戦的な上目遣い。今のアスカには誰よりもうまく弐号機を操る自信があった。