63C09カード

Oh!FMの記事の中で一番印象深いのが、63C09カードです。普通は使う人のほとんどいないZ80カード用のスロットに差し込んで使用するカードで、FM-7を63C09で動かしてしまおうと言うものです。

63C09△

63C09の写真 63C09は正確にはHD63C09と言い、モトローラが設計した6809を高速化し命令を追加したものです。6809は動作クロックにより6809、68A09、68B09があり、それぞれ、1MHz、1.5MHz、2MHzで動作可能でした。その3MHzバージョンとして登場したのが63C09だったのです。
63C09は日立製作所が出したものでした。当時の日立はどういう訳かモトローラのセカンドソースを多く供給していました。その日立が63C09を出したことは、この記事が出るまで知らなかったのですが・・・・
機能拡張のおかげで、未定義命令などを使っていたソフト(ゲームに多かった)は動かないものもあったのですが、32ビット演算とかブロック転送とか魅力的な命令が多くあった(と思う)ので、プログラムに興味があった私としては欲しくなったわけです。

特徴△

このカードの優れていたところは、普通マシンをリセットするとZ80カードスロットに入っているカードは無効になってしまうのですが、このカードはハードウェアに工夫がしてあって、一旦有効になるとリセット後もカード上のCPUが動くと言うところです。おかげで、マシンの電源を入れて63C09に切り替えた後はゲームでもなんでも63C09で出来てしまうわけです。
このカードのメリットは、
などがありました。

当時の入手方法---今では入手出来ないと思います---△

このカード、Oh!FMで発表された訳ですが、「おすそわけ」と言う形で「基板」と「PAL」という特殊な部品(要は入出力が定義できるロジック)を売ってくれました。
両面基板を制作する技術は無いし、PALを焼く技術もお金も無かった私でしたが、どうしても欲しかったのでその「おすそわけ」に飛びつきました。
その後、パーツを集めて制作するまで数年かかりましたが、動いたときは感激しました。
当時はFM-7で使用していましたが、後にFM-77 D2を入手したので、今はそちらに入っています。

詳細△

63C09カードの写真。 まずは写真から。
結構部品が密集しているのがわかると思います。左上のシールの貼ってある石が「PAL」と呼ばれる特殊な部品で、入出力の関係をプログラムみたいな物で定義することが出来るという大変便利な石です。もっとも最近はもっとお手軽な物があるようですが、当時はそんなもの知らなかったので「すごい物がある」と感心したものです。
その隣にある大きな石が63C09です。当時2000円位したと思います。
PALの左隣にあるディップスイッチは動作速度を変更するためにあります。3MHzから6MHzまで1MHzステップで切り替えられるようになっていました。ちなみにクロックはその下にある14ピンのICソケットに差してある8ピンの石です。
写真右上にある比較的大きな3つの石はS-RAMです。一つで256Kbit(32KByte)あります。FM-7のメモリ空間は64KByteしかないのになぜ3個もと思うかもしれませんが、実はこのカード、FM-7のメインシステムをほぼそっくり持ってきているので3個必要なのです。というのはBASIC-ROMの空間と裏RAMの空間までこのカード上に持ってきているからです。これは、高速動作時に本来のRAM、ROMがついてこないからです。で、このカードが有効になったときに、本来のRAM、ROMから内容をコピーして動作を始めるという仕組みになっているわけです。このカードが優れている部分の一つです。
もう一つ、このカードが優れているのは、一旦動作を始めるとリセットがかかっても制御がこのカードに移るということです。どういう事かというと、このカードがささるところは本来Z80カードの場所で、リセットがかかると常に本体のCPUに制御が戻ってブートローダを呼び出すようになっているわけです。で、ブートの途中であるI/Oポートを叩くとカード上のCPUに制御が移る仕組みになっているのです。というのも、ブートローダは6809のコードで書かれているわけですから、リセット時にZ80が有効では困るわけです。ですから、63C09カードを使っても、リセットがかかれば本体のCPUに制御が移ってしまうのが当然です。ところが、このカードは回路上の工夫で、リセットがかかってもカード上のCPUに制御が移るようになっていたのです。これのいいところは、ブートローダから呼ばれるプログラムに変更を加えなくても63C09カードが利用できる所で、この仕組みのおかげでゲームなど市販ソフトもこのカードで動作が可能だったわけです。
この写真を見ると「富士通」のシールが貼ってありますが、何かについてきたシールを貼っただけで、富士通が出していたわけではありません。念のため。


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