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「高畑勲・宮崎駿の世界」第一期講義

聴講生との質疑応答
「Q&Aシート」抜粋(2)

文責/叶 精二

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―02.5.24.回収分 計185通 + 02.5.31.回収分 計223通 より―

●講義内容に(若干)関連した質問

Q. アニメーターの仕事は一体どこまでなのか。キャラクターを考えるのか、話を考えるのか?

A. 
これはケース・バイ・ケースです。何度もお話しているように、「アニメーター」と言っても動きの基礎設計をする原画と、間の絵を仕上げる動画とでは役割が違います。極度に分業化されたテレビ作品の場合は、キャラクター設定と作画監督や原画は各々別人で、ストーリーへの関与、演出領域に踏み込むことは希です。ただ、本来はアニメーターと演出家が二人三脚で、キャラクターもストーリーも決めていくべきだと思います。この点、漫画原作は物語もキャラクターも最初から決まっていますから、手間はかかりませんが、アニメーションとしての独創性や自由度も制限されてしまう傾向もあります。

Q. 「パンダコパンダ」は日中平和友好条約の時中国から贈られたパンダと関係があるのですか?

A. 
「ランラン」「カンカン」という2頭のパンダが中国から贈られたのは丁度30年前の1972年10月。日中国交正常化の最中でした。中編のオリジナル映画、しかもスポーツ根性・魔法・妖怪・ロボットなどと無縁の生活芝居という、今でも珍しい企画が通ったのは一重に上野動物園のパンダ人気のお陰でした。日中平和友好条約は1978年10月に発効されたものですから直接関係ありません。

○ 講義内容と直接関係のない質問

Q. 宮崎監督の作品で大塚さんがデザインされたものは使われているのでしょうか。

A.
 「宮崎監督作品」で大塚さんが参加された作品は「未来少年コナン」と「カリオストロの城」だけということになりますが、「カリオストロの城」の車両の一部(軍用トラックなど)は大塚さんのデザインです。

Q. 30分弱のアニメが完成するまでの期間はどのくらいですか?

A. 
これは第一回・第二回の講義でお話ししました。通常の3000〜5000枚程度の動画枚数のテレビシリーズ1話分(約22分)は、大抵1週間〜10日に1本のペースで作られています。ビデオ、映画はその都度違います。芸樹的な短編なども範疇が異なります。カナダの巨匠、フレデリック・バック監督の「木を植えた男」は、30分の作品に5年もの歳月を費やして作られています。

Q. 絵が描けなくてもアニメーションを作ることは出来ますか?

A. 
これも第一回・第二回の講義でお話ししました。絵を使わないアニメーションの技法はたくさんあります。粘土・立体などですが、最近ではコンピューターがある程度の作画代行をしてくれます。ただし、演技の設計やタイミングだけはどんな技法でも誤魔化すことは出来ません。演技の出来ない静止画の羅列は、どんなに上手でもイラストレーションであって「アニメーション」ではないのではないかと思います。ウォルト・ディズニーは「演技のない動画は紙の上の体操に過ぎない」と厳しく語っていたそうです。自身で絵が描けない演出はあり得ても、絵の良さが判断出来ない演出は許されないと思います。描けない分、別の勉強をしっかりしなければならないでしょう。

Q. アゴの割れているルパンがシリーズの中にあったように思いますが?

A. 
テレビシリーズの「ルパン三世 PART 3」では、時々アゴの割れたルパンのデザインが採用されていたようです。また、モンキー・パンチさんが監督された映画「DEAD OR ALIVE」という作品では五右エ門のアゴが割れていました。「ルパン」の作画監督は約30年に亘る全シリーズの通算で60人以上もいまたしから、60通りのルパンの顔・体型があったと見るべきでしょう。「水戸黄門」などまだ4代目ですから、かわいいものです。「ルパン」全シリーズ中、とりわけ大塚康生さんの描いたルパンが、原作者・ファン・一般の別を問わず、未だに人気・評価が高いというのは不思議な現象です。

Q. 「カリオストロの城」は日本が舞台ではないのに、どうして「埼玉県警」のパトカーが出て来るのでしょうか?

A. 
「カリオストロの城」はその名の通り「カリオストロ公国」というヨーロッパの架空の国が舞台となっています。パトカーは、インターポールに断りなく銭形が日本から動員したものだからでしょう。そんなことよりも、(宮崎監督自身悩んだと言う)五右エ門が帯刀したまま国境線を越えていることの方が問題ではないでしょうか?

Q. 大塚さんの指導を受けた人は、宮崎駿さん・貞本義行さんのほかにはどんな人がいますか?

A. 
「火垂るの墓」「魔女の宅急便」「おもひでぽろぽろ」「もののけ姫」などの作画監督で「耳をすませば」の監督を務めた近藤喜文さん(故人)、第一回講義で皆さんが触って楽しんだ視覚玩具のイラストを担当して下さった友永和秀さん(「カリオストロの城」カーチェイスの作画)、「千と千尋の神隠し」で湯婆婆専門に作画をされた田中敦子さんなど挙げればきりがないほどたくさんいらっしゃいます。

Q. 宮崎監督は講義には来ないのでしょうか?1回位は呼んで欲しい。(同様2通)

A.
 宮崎駿監督は、ここ数年講演・講義の類は特例を除き一切断っています。実際、私の所へ話が来る前に大学の方々が宮崎監督に登壇要請をされたそうですが、見事に断られたと聞きました。一つ引き受けるときりがないということもありますが、「映画監督は映画で全てを語るべき」という信条もあるようです。また、宮崎監督自身とスタジオジブリ代表の鈴木敏夫さんに共通する考えは、「作品・作家研究などというものは、本人の居ない所で第三者が勝手にやるべきものだ」というものです。監督御本人は「出発点」などの著作で雄弁に語っていますから、監督の話を聞きたければ、まずこれを熟読して欲しいと思います。

Q. 宮崎監督を一目見るにはどうすれば良いのでしょうか?

A. 
何度も見ている者の発言で説得力がないかも知れませんが、見て一体どうするというのでしょうか?以前、御本人が数人のファンに囲まれて「ただのオジサンです。放っておいて下さい。」と困惑されている場面を見ました。見るだけでしたら、お隣のジブリさんの近隣をよく散歩されていますから、マメに通れば見かけることは出来るかも知れませんね。ただ、そういう軽いストーカーがウロウロしてジブリさんが迷惑をしているという話も聞きましたが…。
確実に見られる場所は映画の公開初日に徹夜で並んで舞台挨拶を見ることでしょうか。それも余りお勧めしませんが。

Q. 「耳をすませば」の近藤喜文監督が亡くなられたというのは本当ですか?

A. 
これも以前授業でお話ししました。1998年1月21日、大動脈瘤の為お亡くなりになりました。私は関係者の証言・弔辞を集めて「近藤さんのいた風景」という追悼誌を自主発行しました。本学図書館に所蔵されていますので、詳しくはこれを読んで下さい。

Q. 宮崎監督の「On Your Mark」という作品はB’Zの歌に合わせて作ったのか、アニメーションに歌を合わせたのか?

A. 
歌が先です。宮崎監督曰く「歌詞を曲解して作った」とのこと。詳しくは「出発点」P558を読んで下さい。ちなみに、歌っているのは「B’Z」ではなく「CHAGE & ASUKA」です。間違いのないように。

Q. アメリカの「ルーニー・トゥーンズ」についてどう思いますか?

A.
 バックス・バニー、ダフィー・ダックなどで知られる「ルーニー・トゥーン」は、幾つものシリーズがあり、年代毎にスタッフが違うので統一した評価は出来ません。個人的にはギャグ・アニメーションの神様と言われるチャック・ジョーンズ氏の関わった作品は素晴らしいものが多いと思います。

Q. ムーミンはカバですか?(同様2通)

A.
 違います。ムーミンは正式には「ムーミントロール」と言いますが、「トロール」は北欧に伝わる妖精の一種です。興味がある人はトーベ・ヤンソンの原作を読んでみて下さい。

※応答後記……今回も残念ながら講義と直接関わりのない質問がほとんどでした。また、ほんの少し調べれば解る疑問、過去の講義を聴いていれば解る内容、レジュメを通読していれば理解出来る筈の質問も多いですね。自然発生的な疑問には、まず自助努力による解決を試みて下さい。それから、確たる範囲指定もなく、漠然と「どう思いますか?」と聞くのは相手に失礼です。質問する以前に、まず質問者自身の意見を述べて下さい。それは人にものを訊く際の最低限の礼儀だと思います。


―02.6.7.回収分/計204通 より―

●講義内容に関連した質問

Q. 「赤毛のアン」で男性のナレーションにした理由は? 女性でも客観的になるのでは?

A. 
講義中にもお話しましたが、監督の意図は「実況風のナレーション」で、過去のシリーズのイメージを覆す意味でも男性起用に意味があったのだと思います。

○ 講義内容と直接関係のない質問

Q. 「紅の豚」のアドリア海は実在すると知りましたが、あの風景も実在するものですか?

A. 
「あの風景」とはポルコの隠れ家周辺の砂浜のことでしょうか?それとも海上ホテル・アドリアーノのことでしょうか?全く同じ風景が実在するという話は聞いたことがありません。似たような風景はイタリアのどこかにあるのかも知れません。

Q. スタジオジブリの作品には不思議な生き物が出て来ますが、モデルはあるのでしょうか?

A. 
モデルに関してはケース・バイ・ケースです。モデルがあるものもないものもあります。高畑勲監督作品「平成狸合戦ぽんぽこ」の狸のキャラクターたちは、信楽焼の狸の置物、杉浦茂の漫画、実在の狸がモデルになっています。

Q. 宮崎駿アニメでは遠近法をうまく使っていると聞きましたが、詳しく教えて下さい。

A. 
これは昨年某テレビ番組で流された「宮崎アニメの秘密」的な内容のことですね。車窓から見た風景の移動などで近景は速く、遠景は遅く移動するという。これは風景を何層にも分けて別個に移動させる「密着マルチ」と呼ばれる手法のことで、宮崎監督作品の特徴などではなく、どんな作品でも一般的に行われている手法です。ただし各層の移動速度の調節は絶妙です。
また、何度も何度も語って来ましたが、集団創作による商業アニメーションを個人名を冠して「○○アニメ」と呼ぶのはおかしいと思います。「アニメ」という用語も定義がありません。宮崎監督御本人も「宮崎アニメ」という用語は嫌いだと語っています。

Q. オープニングは誰が作るのですか?曲に合わせて作るものなんですか?

A.
 テレビシリーズのオープニング・エンディングの作画スタッフのことでしょうか?これもケース・バイ・ケースです。本編とは別個に個人作家やフリーのアニメーターに依頼するケースもありますし、本編のメインスタッフが全て手がける場合もあります。最近のテレビシリーズでは、「オープニング・エンディング作画」と担当者名がクレジットで表記されることが多いようです。当然ですがタイミングなどは楽曲に合わせて描かれます。

Q. 宮崎さんと音楽の久石譲さんはどうやって知り合ったのですか?

A. 
本講義で必読文献に指定している高畑勲氏著「映画を作りながら考えたこと」(徳間書店)P318「しあわせな出会い―久石譲と宮崎駿」を読んで下さい。

Q. 「赤毛のアン」に桜の木が出てきましたが、日本以外にも桜の木があるのですか?

A.
 あります。ワシントンD.C.のポトマック河畔の桜、カナダのバンクーバーの桜などは有名だそうです。「日本さくらの会」によれば、戦後約40年間でアメリカ、ブラジル、韓国、中国、オーストラリア、インド、イギリス、ドイツ、ロシアなど桜が育成可能な国に約12万本の桜苗木が贈られているそうです。世界の分布図を自身で調べてみて下さい。
ちなみに「赤毛のアン」は19世紀後半のプリンスエドワード島(カナダ)が舞台です。

Q. 「カリオストロの城」で「偽札が世界恐慌で暗躍した」という台詞がありますが、事実なのでしょうか?

A. 
作中に登場する「ゴート(goat/山羊)札」なるものは存在しませんが、「カリオストロ」という名の詐欺師は18世紀のイタリアに実在したそうです。現在も精巧な偽札の流通問題は深刻なので、ありそうな話ではあります。偽札の歴史については自身で調べてみてはいかがでしょうか。



―02.6.14.回収分 計68通 より―

●講義内容に関連した質問

Q. 「じゃりン子チエ」でお好み焼き屋が鼻水を垂らして泣くシーンもディズニーの人に絶賛されたのでしょうか?

A. 
直接そういう話は聞いたことがありませんが、おそらく全編を好意的に受け止めたのではないでしょうか。日本の商業セル・アニメーションでは喜怒哀楽を記号化している作品が大多数で、「泣く」という演技も涙のこぼれ方も画一的になりがちです。皆さんの周囲の人を観察してみれば分かると思いますが、誰一人同じ泣き方、同じ涙の流し方をしている人はいないでしょう。あのシーンは、お好み焼き屋の性格・感情を実に情感豊に表現しています。崩れた顔や個性的な演技を描くというテーマは、つまりは一枚の絵であるアニメーションに生命を吹き込むという重要な観点なのです。

Q. 「もののけ姫」の原初版が大型絵本になっているそうですが、タイトルは?

A. 
そのまま「もののけ姫」というタイトルです。1993年12月に徳間書店から発行されました。

Q. フライシャー兄弟の作品で今でも見ることが出来る作品はありますか?

A. 
「ベティ・ブープ」「ポパイ」「カラー・クラシック」などのシリーズ、名作長編「バッタ君町へ行く」などはビデオ(ビームエンタテイメント/東北新社より発売)で見ることが出来ます。ただし、レンタルショップには置いていないことが多いので買い求めるしかないでしょう。

※応答後記  随分と質問が少なくなり、漠然と「どう思いますか?」式の質問が減ったのはありがたいことです。講義の内容自体に関する質問が少ないのは変わらないようですね。全体的イメージとして聞くのではなく、具体的な事柄を整理し乍ら聴いてみてはどうかと思います。



―02.6.21.回収分 計177通 より―

Q. 「魔女の宅急便」は環境問題に触れていませんが、息抜きのような作品なのですか?
Q. 「火垂るの墓」の誕生秘話を教えて下さい。
Q. 「On Your Mark」のストーリーが分かりません。教えて下さい。

A.
 これらの作品については今後の授業でふれます。何度もお話しているように、教科書指定の宮崎駿著「出発点」高畑勲著「映画を作りながら考えたこと」を熟読して下さい。たいがいの疑問はここで解けます。図書館7階美術書・指定図書コーナーに配架されています。

Q. 「となりのトトロ」のポスターに描かれている女の子は誰でしょうか?(同様2通)

A. 
80年頃に描かれた原初版「トトロ」は姉妹という設定でなく、メイという女の子一人でした。準備段階では一人であったためと思われます。

Q. 「ラピュタ」の崩壊は地上に大被害が出たのでは?

A. 
もう一度作品をよく観て下さい。舞台は海上です。

Q. ラピュタの大樹の上にあった蜘蛛の巣のようなものは何ですか?

A. 
透明な天井のフレームです。ドームを突き破って成長しているということでしょう。

Q. 「千と千尋の神隠し」が盗作だという話は本当でしょうか?

A. 
嘘でしょう。ただし、宮崎監督は柏葉幸子著「霧のむこうのふしぎな町」〈講談社〉という児童文学にヒントを得たとのことです。しかし、似ているのは冒頭の数十分だけですね。

Q. キャラクターの動きはどこまで宮崎さんが考えて、どこまで作画監督が考えるのですか?

A. 
ケース・バイ・ケースです。通常は、宮崎監督の絵コンテの基礎設計に沿って各原画が描き、それを宮崎監督が修正して調整、作画監督が清書するというやり方で進められます。これについても、第2回講義で詳しくお話ししました。

Q. 予定外の場面の設計は宮崎さんのイメージなどを中心に進められるのですか?

A. 
これもケース・バイ・ケースです。スタッフ会議などが開かれることもあるようです。通常は、場面の変更は宮崎監督の絵コンテ段階で決められています。ただ、主にスケジュール的に変更が可能かどうかというシビアな問題と向き合って決められているようです。


―02.6.28.回収分 計201通 より―

Q. 高畑勲監督は絵を描かないそうですが、「平成狸合戦ぽんぽこ」では誰が絵コンテを起こしているのですか。

A. 
「平成狸合戦ぽんぽこ」では、高畑さんのアイデアとラフを元に百瀬義行さん(「ギブリーズ episode 2」監督)と大塚伸治さん(「魔女の宅急便」作画監督)がコンテを描かれました。図書館7階美術書コーナーに「スタジオジブリ絵コンテ全集/全13巻」が揃っていますから、是非とも実物を鑑賞してみて下さい。

Q. 「となりのトトロ」の製作費と収益を教えて下さい。

A. 
製作費は公開されていません。収益は公開時の配給収入で約5億8800万円とのことです。ただし、「火垂るの墓」と同時公開での数値です。

Q. 「魔女の宅急便」で黒猫のジジが最後まで話せなかったのは何故ですか?(同様2通)

A. 
黒猫や母からもらったほうきは、全て個としての自立の手助けの役割を果たしているという解釈で、よりシビアに独力で生きることを描くために削ぎ落とされたと思われます。親の庇護や付帯物をパージして自力で飛ぶということが言いたかったのではないでしょうか。

Q. 脇役にも細かな設定は必要なのでしょうか?

A. 
登場人物全てに物語と関わらなくとも一個一個の人生があると考えれば当然必要でしょう。群衆に意志なしと割り切って作るのなら不要かも知れませんね。高畑・宮崎両監督の作品は脇の人物像が豊かで印象深いのも特徴です。

Q. 宮崎・高畑両監督の諸作品は作品毎にキャラクターデザインは違うのですが、瞳の形や輪郭などどこか似ています。なぜでしょうか?(同様2通)

A. 
それは毎回主力を担う原画の社内メンバーがダブっていること、動かし易いデザインは自ずと似て来てしまうこと、ジブリに蓄積されて来た個性など様々な要因があるでしょう。また、宮崎作品の場合は監督本人が修正をする場合が多いので、自ずと造形が似てきてしまうということも言えます。「千と千尋の神隠し」で作画監督・キャラクターデザインを担当された安藤雅司さんに伺ったお話ですが、宮崎監督はキャラクター表を全く見ないで自分の絵柄で修正して行くので、後々更に修正するのが大変だったそうです。

Q. 「となりのトトロ」と「千と千尋の神隠し」の主題歌決定の経緯を教えて下さい。

A. 
「トトロ」は子供達が繰り返し歌えるような主題歌が欲しいという宮崎監督の要望で作られました。オープニングの「さんぽ」は、「ぐりとぐら」などで有名な児童文学者・中川李枝子さんが作詞、エンディングの「となりのトトロ」は宮崎さん自身が作詞を担当しました。作曲はお馴染み久石譲氏、歌は「天空の城ラピュタ」の「君をのせて」から連投しなった井上あずみさんが担当しています。
「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」の場合は、シンガーソングライターの木村弓さんが「もののけ姫」に感動して宮崎監督に手紙を書いたことがきっっかけで、当時企画中だった「煙突描きのリン」という作品の主題歌として作られたものの、企画と共にお蔵入りとなっていたものが「千と千尋の神隠し」で復活したという経緯です。


―02.7.5.回収分 計213通 より―

Q. 「火垂るの墓」はアメリカでビデオ化されているのでしょうか。その評価などは?

A. 
アメリカでは、Central Park Mediaという会社から字幕版と吹き替え版のビデオ、レーザーディスク、DVDが出ています。英語タイトルは "Grave of the Fireflies" です。評価は大人から子供まで大変に高いようです。フランスでもソフトが何度も再版され好評のようです。 

Q. 「おもひでぽろぽろ」のタイトルはどうして平仮名なのでしょうか?

A.
 原作漫画通りですが、おそらく一種の懐古趣味や素朴さを狙ったものでしょう。

Q. 「となりのトトロ」「おもひでぽろぽろ」の監督は違いますが、風景が重なるような気がします。他のジブリ作品にもこうした共通点はあるのでしょうか。

A. 
「となりのトトロ」「おもひでぽろぽろ」「平成狸合戦ぽんぽこ」の3作品は、美術監督を男鹿和雄さんが務めていらっしゃるので、風景描写に男鹿さんの技法と特色が強く出ています。また、背景を描いたスタッフも一部重なっています。

Q. 「耳をすませば」冒頭にファミリーマートが出て来ますが、許可は取ったのでしょうか。

A. 
エンドクレジットに表示はありませんから、正式な許可は取っていないかも知れません。京王デパートやコカコーラの空き缶など、他にも商標めいたものは大量にあります。作品引用でなく風景として映り込むものに逐一許可を求めるというのは、NHKくらいなのでは?

Q. 「おもひでぽろぽろ」の「ひょっこりひょうたん島」シーンの版権許可は取ったのですか?

A. 
これは正式な許可を得ています。クレジットにも表記があります。

Q. 亜細亜大の講義の観想を聞かせて下さい。

A.
 アニメーションの基礎講座からはじまり、2人の監督の作品歴を時系列順に駆け足で追うという進行は間違っていなかったと思います。「好き・嫌い」という個人的印象・感性一般の鑑賞態度からの脱却、作り手側の内外事情の評価、映像作品分析の技術的・思想的観点などを提起出来たのではないかと思います。講義の内容自体は自論の再整理という意味で意義がありました。また、図書館内に作品のソフト、関連書籍などを多数揃えることが出来たことは今後聴講生の皆さんが作品を独自に深める機会を広げることが出来たのではないかと思います。出席率も課題・レポートの提出率も良比較的高いほうだと伺いました。あれこれ実験的・試行的な講義を繰り返して来ましたが、結果的には大きな成果があったと総括しています。熱心な受講生の皆さんの静聴と御協力には感謝しております。課外授業も充実していたと思います。
 ただ、一部の不熱心な聴講生の幼い受講態度(私語・遅刻・退席など)は聞きしに勝るものでした。「私語を何とかして欲しい」「もっと映画を見せろ」など毎回多くの「要求」を提起されましたが、私語禁止プレート公募への参加は1名のみ、課外への参加も少数と、各自の自助努力や自発的・積極的に講義に関わろうという姿勢が感じられなかったことも残念です。レポートについては独創性を重視してあえて間口を広くしたのですが、現在までに集まったものは残念ながら熟慮した痕跡のあるものが少ないという感想を持っています。社会的良識のある個性の発展・伸張を望みたいところです。
 いずれにしても様々な教訓を得ましたので、今後の課題として行きたいと思います。


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