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拡散処理が施されたコランダム。写真上下共に、ファセットごとに強い色むらが観察される(撮影は拡散照明下)。


赤色に処理された拡散処理コランダムの場合は、処理部分(表面から0.5mm以下)に暗赤色の斑点が観察される場合も多い。写真右肩他に見られる斑点がそれ(撮影は拡散照明下)。

拡散処理(かくさんしょり)または
ディフュージョントリートメント
(diffusion treatment)

宝石の色を変化させる処理法の一つ。この処理が施される宝石としては、コランダムに一般的。1979年以来報告例がある。
ブルー、ピンク、オレンジ、パープル、レッドに処理される可能性があるが、ブルーが最も一般的。
 
拡散処理によりアステリズム(スター効果)を誘発させる、あるいは合成石に拡散処理を施す場合もある。

■処理法(例:ブルーの場合)

色因である鉄、チタンを加えた粉末を坩堝(るつぼ)に入れ、研磨したサファイアを埋めて、1800度前後で通常24時間ほどガス炉で熱する。処理後は表面が焼けただれている為、軽く再研磨する。鉄やチタンのコランダム結晶格子中への拡散速度は極めて遅いため、色の付いている領域は極めて浅く、最大でも0.5mm程度。従って、リカットをすれば色は取れてしまうが、色の安定性は高く、宝飾品加工に用いられるバーナー、超音波洗浄や酸には十分な耐性がある。

■宝石鑑別法

処理後の石を軽く再研磨することは上で述べた。全てのファセットに均一に再研磨を行うことは困難なため、結果としてファセットごとに色むらが出来る。天然石でファセットごとに色が異なる事は無いため、鑑別上、この色むらの存在が最大のヒントとなろう。
 
写真左は石を白いプラスチック板の上に置き真下から照明をあてて撮影した(拡散照明)が、色むらは石をピンセットで摘み、ティッシュの上でもち、対のまま光に透かしてみるだけで十分確認できる場合も多い(光源→ティッシュ→石→眼、の順となる)。
 
コランダム
処理
ベリリウムを用いたコランダムへの新しい拡散処理
宝石鑑別のヒント


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