問1 | 区分所有法(総則-3条の団体) | ||||||
問2 | 区分所有法(滞納) | 問8 | 区分所有法(集会) | 問14 | 民法(債務不履行) | 問20 | 都市計画化法(都市計画) |
問3 | 区分所有法(義務違反) | 問9 | 区分所有法(建替え) | 問15 | 民法(契約不適合) | 問21 | 建築基準法 |
問4 | 区分所有法(管理者) | 問10 | 区分所有法(団地) | 問16 | 民法(抵当権) | 問22 | 水道法(貯水槽水道) |
問5 | 区分所有法(集会) | 問11 | 被災者区分所有法 | 問17 | 民法(相続) | 問23 | 消防法(点検) |
問6 | 区分所有法(集会) | 問12 | 民法(消滅時効) | 問18 | 不動産登記法 | 問24 | 共同住宅に係る設計指針 |
問7 | 区分所有法(管理組合法人) | 問13 | 民法(賃転借) | 問19 | マンション建替え等円滑化法 | 問25 | 標準管理規約(工事申請) |
◆ 区分所有法関連(問1~問11)
・11問のうち4問は「区分所有法」の他に「判例、標準管理規約及び民法によれば」と対象とする法令等の範囲が広がっている。一つのテーマに関して区分所有法だけでなく関連する法令や判例についても調べておく必要がある。
・11問のうち2問は「正しいものはどれか」との設問であり4択のうち一つを選べばよいのと違って慎重に選択必要がある。一つでも選択ミスがあると命取りとなる。
・大半の問は区分所有法をしっかり習得していれば正答を得られるが、今まで出題されたことのない設問もあるので注意を要する。ひっかけのような設問もある。
・団地に関しては肝心の条文で準用する箇所が多いので準用されている箇所もしっかり確認することが必要である。団地に関しては毎年出題される。
・問11は被災者区分所有法からの出題であるが、過去に平成23年、平成26年と出題されており今年、出題されたので3年ごとの出題となる。
〔
1 一棟の建物に二以上の区分所有者が存する場合には、管理者が定められず、かつ、規約が設定されていなくても、3条の団体が成立し、権利能力のない社団が存在する。
2 3条の団体は、区分所有権を有する者がその構成員となる団体であり、区分所有権を有さずにマンションに居住している者は、集会の決議及び規約に拘束されることはない。
3 特定の区分所有者が、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益反する行為を行い、その行為による共同生活上の障害が著しい場合には、その区分所有者について、区分所有権を保持させたままで3条の団体の構成員の資格を失わせることができる。
4 一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(この問いにおいて「一部共用部分」という。)があっても、区分所有者全員の利害に関係する一部共用部分の管理のすべてを区分所有者全員で行う場合には、一部の区分所有者のみで構成される3条の団体は存在しない。
≪解説≫
・選択肢1:区分所有法第3条に「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」と規定されており前半の設問は正しいが、「権利能力のない社団」に関しては、判例で「権利能力なき社団と認められるためには団体としての組織をそなえ、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する(最高裁判例)」がありこれをを根拠とすると後半の設問は適切でないので当設問は正しくない。設問に「管理者が定められず、かつ、規約が設定されていなくても」とあり判例の「団体としての組織をそなえ、・・・等団体としての主要な点が確定していることを要する」を満足していない。設問の前半だけで正しいと早合点しないこと
・選択肢2:区分所有法第46条第2項に「占有者は、建物又はその敷地若しくは附属施設の使用方法につき、区分所有者が規約又は集会の決議に基づいて負う義務と同一の義務を負う」と規定されており、設問にある「区分所有権を有さずにマンションに居住している者」は区分所有者ではなく占有者と解釈される。占有者は区分所有法第46条第2項により集会の決議及び規約に拘束されるので当設問は正しくない
・選択肢3:区分所有法第3条に「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成する」と規定されており、区分所有者である限りは3条の団体の構成員であり区分所有権を手放さない限り構成員の資格を失うことはないので当設問は正しくない。なお、建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益反する行為を行いその行為による共同生活上の障害が著しい場合には、区分所有法第59条第1項により区分所有権及び敷地利用権の競売を行うことができるが、競売をされた場合にはその区分所有者は3条団体の構成員の資格も失うが設問にある「共同生活上の障害が著しい場合」だけでは3条の団体の構成員の資格を失わせることはできない
・選択肢4:区分所有法第16条に「一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う」と規定されているが、一部共用部分であっても区分所有者全員の利害に関するものは全員で管理するので一部の区分所有者の団体は存在しないので当設問は正しい。設問で「一部共用部分であっても区分所有者全員の利害に関しないものは一部共用すべき区分所有者のみで行う」ことが触れられていないので当設問は正しくないと解釈もあるが、当設問では「区分所有者全員の利害に関係する一部共用部分の管理のすべてを区分所有者全員で行う場合」との条件が設定されているので「一部共用部分であっても区分所有者全員の利害に関しないもの」まで問われていないと解釈すべきである。
≪答え≫ 4
選択肢1の「3条の団体」と選択肢4の「一部共用部分」に関する設問は、よく吟味して明らかに適切でない選択肢を選ぶように注意をする必要がある
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1 Aが管理費を滞納していた場合、AB間の合意があれば、BはAの滞納管理費を承継しないことができ、管理組合から請求があっても支払を拒否することができる。
2 Bは、仲介業者からAに管理費の滞納があると聞いていたので、滞納管理費の支払には応じるが、甲マンションの規約に定める遅延損害金については、責任はAにあるとして支払を拒否することができる。
3 Aがその所有時に甲マンションの規約で定めた義務に違反する行為を行い、規約に定める違約金としての弁護士費用の支払を怠っていた場合、Bはその弁護士費用を支払う義務がある。
4 Bが、101号室の抵当権の実行による競売において同室を買受け、AからBへの所有権の移転が行われた場合、Aが滞納していた管理費はBに承継されない。
≪解説≫
・選択肢2:選択肢1で述べたように区分所有法第7条第1項によりBはAの滞納管理費の延滞損害金の支払を拒否することができないので当設問は正しくない。なお、標準管理規約第60条第2項に「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる」と規定されており、管理組合は特定承継人へ延滞損害金を請求することができる
・選択肢3:標準管理規約第60条第2項に「組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる」と規定されており、当設問は正しい。弁護士費用の負担については過去にも出題されている
≪答え≫ 3
管理費の滞納等に関する設問であり区分所有法および標準管理規約に該当する規定があるかどうかを問う平易な設問であるが区分所有法だけでなく標準管理規約も問われているので注意を要する。
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1 漏水の原因が甲マンションの3階部分にある排水管の設置又は保存の瑕疵によるものであることが立証された場合には、Aは、排水管が共用部分に属するものであることを立証しなくても、管理組合に対して損害賠償を請求することができる。
2 漏水による損害賠償の責任を管理組合が負う場合には、管理組合は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費に充てるために納入された管理費等を、賠償金に充当することを集会で決議することができる。
3 Aが受けた水漏れの損害については、3階部分の排水管の設置又は保存に瑕疵があることによって生じたものであることが区分所有法上推定される。
4 漏水の原因が202号室の直上階にある3階302号室の専有部分内に存する排水管の設置又は保存の瑕疵による場合において、302号室を賃借し居住しているCが損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、同室の所有者Bが損害賠償の義務を負う。
≪解説≫
・選択肢1:区分所有法第9条に「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する」と規定されており、設問では3階部分の排水管の設置又は保存の瑕疵によるものであることが立証されており、(排水管が共用部分に属するものであることを立証しなくても)管理組合に対して損害賠償を請求することができるので当設問は正しい。つまり、共用部分は区分所有者全員の共有なので管理組合に損害賠償を請求できる
・選択肢2:区分所有法第18条第1項に「共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する」と規定されており、また、同法第19条には「各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する」と規定されており当設問は正しい。ここで、共用部分の瑕疵に関する損害賠償の履行は「共有部分の管理」に関する事項である
・選択肢3:選択肢1で示した通り区分所有法では「その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する」と規定されているが、「直上階の排水管の設置又は保存に瑕疵があると推定する」と具体的に規定されていないので当設問は正しくない。区分所有法上推定する範囲は「共用部分の設置又は保存にあるもの」まででありちょっとおかしな設問である
・選択肢4:民法第717条第1項の規定では「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」と規定されており当設問は正しい。設問が「漏水の原因が202号室の直上階にある3階302号室の専有部分内に存する排水管の設置又は保存の瑕疵」と専有部分と限定されているので管理組合は責任はなく当事者間で解決すべき問題である
≪答え≫ 3
マンション内の漏水に関する設問である。身近で起こりそうなトラブルであるが各選択肢を精読して消去法により絞り込むようにするとよい
〔問 4〕 管理者の職務に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 管理者の職務に関する代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
2 管理者は、規約の定めや集会の決議によらなくても、当然にその職務に関して区分所有者のために原告又は被告となることができる。
3 管理者が職務を行うに当たって費用を要するときは、管理者は、委任の規定に従い、前払でその費用を請求することができる。
4 管理者がその職務を行うため自己の過失なくして損害を受けたときは、管理者は、委任の規定に従い、その賠償を請求することができる。
≪解説≫
・選択肢1:区分所有法第26条第3項に「管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない」と規定されており当設問は正しい
・選択肢2:区分所有法第26条第4項に「管理者は、規約又は集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる」と規定されており当設問は正しくない。設問は「規約の定めや集会の決議によらなくても、当然に区分所有者のために原告又は被告となることができる」とある
・選択肢3:区分所有法第28条に「この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う」と規定されており、また、民法649条に「委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない」と規定されており当設問は正しい
・選択肢4:民法650条第3項に「受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる」と規定されており当設問は正しい
≪答え≫ 2
選択肢1、2は区分所有法から選択肢3、4は民法からの出題であるが、各条文のままの出題であり正答を得るのは容易である。なお、設問はすべて「できる」、「できない」を問うており注意の事
〔問 5〕 集会の招集に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものの組合せはどれか。
ア 集会の招集の通知をする場合において、会議の目的たる事項が規約の変更の決議であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。
イ 管理者がないときは、裁判所は、区分所有者の請求により、集会を招集する者を選任して、その者に集会を招集させることができる。
ウ 区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができるが、この定数は、規約で増減することができる。
エ 集会の招集の通知は、会日より少なくとも1週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならないが、この期間は、規約で伸縮することができる。
1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア
≪解説≫
・選択肢ア:区分所有法第35条第5項に「第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項(共用部分の変更)、第三十一条第一項(規約の設定・変更・廃止)、第六十一条第五項(共有部分の復旧)、第六十二条第一項(建替え決議)、第六十八条第一項(団地規約の設定)は第六十九条第七項(一括建替え決議)に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない」と規定されており当設問は正しい
・選択肢イ:区分所有法第34条第5項に「管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる」と規定されており当設問は正しくない。設問にある裁判所が集会を招集する者を選任することはない(そのような規定はない)
・選択肢ウ:区分所有法第34条第3項に「区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる」と規定されており当設問は正しくない。設問では「定数は、規約で増減することができる」とあるが増加させることはできない
・選択肢エ:区分所有法第35条第1項に「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる」と規定されており当設問は正しい。「伸縮する」との使いまわしに注意の事
≪答え≫ 4
〔問 6〕 甲マンション301号室の区分所有者Aが、専有部分をBに賃貸している場合の次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。
ア 規約を変更し専有部分を居住目的以外には使用禁止とすることについて集会で決議する場合、301号室を事務所として使用しているBは、利害関係を有するとして集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることはできない。
イ 共用部分に係る大規模修繕工事の負担金増額について集会で決議する場合、Bは利害関係を有するとして集会に出席して当該決議に関する意見を述べることはできない。
ウ 規約を変更し毎月の管理費を増額することについて集会で決議する場合、管理費相当分を負担しているBは、利害関係を有するとして集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることができる。
エ 規約を変更しペットの飼育を禁止することについて集会で決議する場合、301号室でペットを飼育しているBは、利害関係を有するとして集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることができる。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
≪解説≫
・選択肢イ:設問のような場合、大規模修繕工事費の負担は区分所有者がするので区分所有法第44条第1項の規定により占有者(賃借人)は集会に出席して意見を述べることはできないので当設問は正しい。設問に「集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることはできない」とある
・選択肢ウ:設問のような場合、管理費の負担は区分所有者がするので区分所有法第44条第1項の規定により占有者(賃借人)は集会に出席して意見を述べることはできないので当設問は正しくない。設問に「集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることができる」とある
・選択肢エ:設問のような場合、区分所有法第44条第1項の規定により利害関係を有する者として集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることはできるので当設問は正しい。設問に「集会に出席して当該規約変更に関する意見を述べることができる」とある
≪答え≫ 2
占有者(賃借人)を対象に種々の場面を想定し、区分所有法に照らして適切か否かを問う設問であり区分所有法容をどの程度理解しているかが問われている。対象となる区分所有法の条文は第44条第1項の「区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる」の意味するところをしっかり理解しておくこと。各選択肢の設問で「できる」、「できないが」が混在しており読み違わないように注意する事。
1 区分所有者以外の利害関係人は、裁判所に対する仮理事の選任の請求を行うことができない
2 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人には効力を生じない。
3 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、規約に別段の定めがない限り、区分所有者は等しい割合でその債務の弁済の責めに任ずる。
4 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。
≪解説≫
・選択肢1:区分所有法第49条の4第1項に「理事が欠けた場合において、事務が遅滞することにより損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、仮理事を選任しなければならない」と規定されており当設問は正しくない。設問では「裁判所に対する仮理事の選任の請求を行うことができない」とある
・選択肢2:区分所有法第47条第5項に「管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる」と規定されており当設問は正しくない。設問では「管理組合法人には効力を生じない」とある
・選択肢3:区分所有法第53条第1項に「管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる」と規定されており当設問は正しくない。弁済は原則としては第十四条に定める割合(床面積の割合)であり、区分所有者は等しい割合でその債務の弁済の責めに任ずることはない。なお、同条には「第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による」とのただし書きがあり、規約で設問にあるように区分所有者は等しい割合でその債務の弁済の責めに任ずるように定めることもできるが当設問では「別段の定めがない」としている。
・選択肢4:区分所有法第49条第7項に「理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事が就任するまで、なおその職務を行う」と規定されており当設問は正しい。
≪答え≫ 4
1 管理組合法人の解散は、建物の全部滅失及び専有部分がなくなった場合を除き、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数の集会の決議によることが必要であり、規約で集会の決議以外の方法で決するものと定めることはできない。
2 管理者の選任及び解任は、集会の決議によるほか、規約で別段の定めをすることができる。
3 共同の利益に反する行為の停止の請求についての訴訟の提起は、集会の決議によるほか、規約で集会の決議以外の方法で決するものと定めることができる。
4 管理者がない場合の規約の保管については、建物を使用している区分所有者又はその代理人のうちから、規約又は集会の決議で定められたものがこれに当たる。
≪解説≫
・選択肢1:区分所有法第55条第1項及び第2項に「管理組合法人は集会の決議で解散する。その決議は区分所有法及び区分所有者の各四分の三以上の多数でする」と規定されており当設問は正しい。なお、建物の全部滅失及び専有部分がなくなった場合は集会の決議は不要であるが、設問では「建物の全部滅失及び専有部分がなくなった場合を除き」とある
・選択肢2:区分所有法第25条に「区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によって、管理者を選任し、又は解任することができる」と断定的に規定されている。つまり、管理者の選任及び解任は集会の決議の他、規約に別段の定めをすることができることを規定しており当設問は正しい
・選択肢3:区分所有法第57条第2項に「共同の利益に反する行為の停止の請求の訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない」と規定されており当設問は正しくない。設問では「規約で集会の決議以外の方法で決するものと定めることができる」とある。他の迷惑行為(使用禁止の請求、競売の請求、占有者に対する引き渡し請求)の訴訟提起も集会の決議が必須である
・選択肢4:区分所有法第33第1項に「規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない」規定されており当設問は正しい
≪答え≫ 3
〔問 9〕 議決権及び共用部分の持分割合が等しいA、B、C及びDの区分所有者からなる甲マンションにおいて、地震によって建物価格の2分の1を超える部分が滅失したために、集会で滅失した共用部分の復旧が議案とされ、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議がなされた(決議では、A、B及びCは決議に賛成し、Dは決議に賛成しなかった)。この場合の区分所有者の買取請求権行使に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、その決議の日から2週間以内に買取指定者の指定がなされなかったものとする。
1 DがAに対して買取請求権を行使し、裁判所がAの請求によってAの代金支払についての期限の許与を認めた場合には、Aの代金支払義務とDの所有権移転登記及び引渡しの義務は、同時履行の関係に立つ。
2 DがBに対して買取請求をした場合におけるBからCに対する再買取請求は、復旧決議の日から2月以内にしなければならない。
3 DがCに対して買取請求をし、CがA及びBに対して再買取請求をしたときには、A、B及びCがDの有する建物及びその敷地に関する権利を3分の1ずつ取得する。
4 地震による甲マンションの一部滅失によって、Dの専有部分が失われている場合には、Dは、買取請求権を行使することはできない。
≪解説≫
・選択肢1:買取請求者の所有権移転登記及び引渡し義務が代金支払い義務より先行するので同時履行の関係は解消されるので当設問は正しくない。買取請求権は形成権であり相手方の承諾の意思表示を必要とせず一方的に法律行為(買取)が成立するものであり。設問にある代金支払義務と所有権移転登記及び引渡しの義務は同時履行の関係にではない。なお、設問前半の「DがAに対して買取請求権を行使し、裁判所がAの請求によってAの代金支払についての期限の許与を認めた場合」は区分所有法第61条第13項に「裁判所は、償還若しくは買取りの請求を受けた区分所有者、買取りの請求を受けた買取指定者又は第九項本文に規定する債務について履行の請求を受けた決議賛成者の請求により、償還金又は代金の支払につき相当の期限を許与することができる」規定されている
・選択肢2:区分所有法第61条第7項に「決議賛成者以外の区分所有者は決議賛成者の全部又は一部に対し建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる。この場合において、その請求を受けた決議賛成者は、その請求の日から二月以内に、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる(関連部分抜粋)」と規定されており当設問は正しくない。設問では「再買取請求は、復旧決議の日から2月以内にしなければならない。」とあり請求の日とされていない
・選択肢3:区分所有法第61条第7項に「買取請求者から請求を受けた決議賛成者は、他の決議賛成者の全部又は一部に対し、第十四条に定める割合(議決権及び共用部分の持分割合)に応じて当該建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる」と規定されており当設問は正しい。設問では「A、B、Cは議決権及び共用部分の持分割合が等しい」とされておりA、B及びCがDの有する建物及びその敷地に関する権利を3分の1ずつ取得する
・選択肢4:区分所有法第61第7項に「復旧決議に賛成した決議賛成者以外の区分所有者は、決議賛成者の全部又は一部に対し、建物及びその敷地に関する権利を時価で買い取るべきことを請求することができる」規定されており、たとえ設問にあるような専有部分が失われている場合にも敷地に関する権利は保有しているので当設問は正しくない
≪答え≫ 3
共用部分の復旧(建物価格の2分の1を超える部分が滅失した場合)に関する設問で区分所有法第61条第7項等からの出題である。共用部分の復旧に関する事項を理解していれば容易に正答は得られる
〔問 10〕 一団地内に下図(省略)のとおり、専有部分のある建物であるA棟、B棟及び附属施設である集会所が存在し、A棟及びB棟の団地建物所有者が土地及び附属施設である集会所を共有している。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 集会所は、当然にA棟及びB棟の団地建物所有者によって構成される団地管理組合における団地共用部分となる。
2 A棟及びB棟の団地建物所有者によって構成される団地管理組合は、当然に集会所の管理を行う。
3 A棟については、A棟の区分所有者だけによる管理を行うものとしたままで、B棟については、A棟及びB棟の団地建物所有者によって構成される団地管理組合が管理を行うものとすることはできない。
4 A棟及びB棟の団地建物所有者によって構成される団地管理組合がA棟及びB棟の管理を行うものとする場合において、A棟の管理とB棟の管理について、規約で異なる内容を定めることができる。
≪解説≫
・選択肢1:区分所有法第67条第1項に「一団地内の附属施設たる建物は、前条において準用する第三十条第一項の規約により団地共用部分とすることができる」と規定されており、団地共用部分とするには規約で定めることが必要であり当設問は正しくない。設問に「当然に団地共用部分となる」とある
・選択肢2:区分所有法第65条に「一団地内に数棟の建物があって、その団地内の土地又は附属施設が区分所有者の共有に属する場合には、それら団地建物所有者は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」と規定されている。つまり、附属施設及び建物の管理を行うための団体(管理組合)が存在すれば規約で定めなくても当然に集会所の管理を行うことができるので当設問は正しい
・選択肢3:団地内の専有部分のある建物については、団地規約を設定することにより団地管理組合の管理の対象とすることができるが、特定の専有部分のある建物だけ団地規約により団地管理組合の管理の対象とすることはできないので当設問は正しい
・選択肢4:この設問は団地の一括管理方式に関するものである。各棟の管理が異なるなら別々の規約を定めればよく区分所有法でこのようなことは禁止されておらず当設問は正しい。例えばA棟は居住専用マンションだが、B棟は複合用途型のマンションの場合、A棟とB棟で異なる内容の規約を定め団地管理組合で管理することは可能である
≪答え≫ 1
団地管理組合に関する設問である。誤った選択肢を見出すのは容易であるが、団地の一括管理に関して正確な知識を持つ上での良問である。区分所有法における団地の規定は大変難解なので他の参考書などで理解をすることをお勧めする
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〔問 11〕 大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより区分所有建物の全部が滅失した場合における被災区分所有建物の敷地に関する次の記述のうち、民法及び被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(平成7年法律第43号)の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 区分所有建物に係る敷地利用権(区分所有法第2条第6項に規定する敷地利用権をいう。)が数人で有する所有権その他の権利であったときにその権利を有する者(以下「敷地共有者等」という。)は、政令の施行の日から起算して3年が経過する日までの間は、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
2 敷地共有者等の集会を招集する者が、敷地共有者等の所在を知ることができない場合には、集会の招集の通知は、滅失した区分所有建物の敷地内の見やすい場所に掲示することによって行うことができる。
3 敷地共有者等のうち5分の1を超える議決権を有する者は、政令の施行の日から起算して1月を経過する日の翌日以後当該施行の日から起算して3年を経過する日までの間に、敷地の共有物分割の請求をすることができる。
4 敷地共有者等の集会において敷地売却決議をするときは、売却の相手方となるべき者の氏名又は名称及び売却による代金の見込額を定めなければならない。
≪解説≫
・選択肢1:被災者区分所有法第2条に「大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより専有部分が属する区分所有建物の全部が滅失した場合において、その建物に係る敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であったときは、その敷地共有者等は、その政令の施行の日から起算して三年が経過する日までの間は、この法律の定めるところにより、集会を開き、及び管理者を置くことができる」と規定されており当設問は正しくない。設問に「規約を定め」とあるが、これは規定されていない。敷地共有者等集会は再建決議や敷地売却決議が行われるまでの暫定的な管理を目的とするものであるから規約を定めることまでは求めていない
・選択肢2:被災者区分所有法第3条に「敷地共有者等集会については区分所有法第一章第五節(一部を除く)の規定を準用する」と規定されており、同法第五節35条第4項には「建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる」と規定されているので当設問は正しい。区分所有建物の全部が滅失した場合には、当然に集会の招集の通知を受け取るべき敷地共有者等の所在を知ることができないので設問にあるように敷地内の見やすい場所に掲示せざるをえない
・選択肢3:被災者区分所有法第6条第1項に「政令で定める災害により全部が滅失した区分所有建物に係る敷地共有者等は、その政令の施行の日から起算して一月を経過する日の翌日以後当該施行の日から起算して三年を経過する日までの間は、敷地共有持分等に係る土地又はこれに関する権利について、分割の請求をすることができない。ただし、五分の一を超える議決権を有する敷地共有者等が分割の請求をする場合その他再建決議、敷地売却決議又は第十八条第一項の決議をすることができないと認められる顕著な事由がある場合は、この限りでない」と規定されており、当規定のただし書きにより条件付きで敷地の共有物分割の請求をすることができるので当設問は正しい
・選択肢4:被災者区分所有法第5条に「敷地売却決議においては、売却の相手方となるべき者の氏名又は名称及び売却による代金の見込額を定めなければならない」と規定されており当設問は正しい
≪答え≫ 1
◆ 民法関連 (問12~問17)
問12~問17までの6問は民法に関して、時効、転貸、売買契約、瑕疵担保、抵当権、相続から幅広く出題されている。本年は珍しく不法行為に関する出題はないが転貸借に関する出題はある。
1 BがAに対し管理費の支払請求訴訟を提起すれば、その訴えが却下された場合でも、時効は中断する。
2 管理費債権の一部について、すでに消滅時効が完成しているにもかかわらず、Aが時効完成の事実を知らないで、Bに対し、滞納額全額を支払う旨の承認書を差し入れたときは、以後、完成した当該消滅時効の主張は認められない。
3 Aが自ら破産手続開始の申立てをし、破産手続開始の決定がなされた場合、Bが滞納管理費債権について破産債権として届出をしただけでは、時効は中断しない。
4 BがAに対し書面で支払の催告を行う場合、内容証明郵便によるものでなければ、時効中断事由としての催告の効力は生じない。
≪解説≫
・選択肢2:民法第152条第1項に「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」と規定されており、また、「滞納額全額を支払う旨の承認書を差し入れ」は判例により承認に該当するので設問は正しい。
・選択肢3:民法第147条第1項に第4号に「破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、その事由が終了するまでの間は、時効は、完成しない(完成猶予となる)」と規定されており設問は正しくない
・選択肢4:催告を行う場合、必ずしも内容証明郵便によらくても口頭や普通郵便でも有効であるので設問は正しくない。ただし、口頭での請求や内容証明でない郵便物での請求では、後に裁判になった時に明確な証拠を示せないので不利になることがある
≪答え≫ 2
管理費債権の消滅時効に関する出題である。良問である。選択肢3は改正民法では正しいかも
1 Bが101号室を、Aの承諾を得ずにCに転貸した場合において、Bの転貸がAに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情の存在をBが主張立証したときは、AはBとの賃貸借契約を解除できない。
2 Bが101号室を、Aの承諾を得てDに転貸したとき、Aは、Bに対して賃料の請求をすることができるが、Dに対して直接賃料の請求をすることはできない。
3 Bが101号室を、Aの承諾を得ずにEに転貸したとき、BE間の転貸借契約は無効である。
4 Bが101号室を、Aの承諾を得てFに転貸したときでも、AとBが賃貸借契約を合意解除すれば、Aは合意解除をもってFに対抗することができる。
≪解説≫
・選択肢1:民法第612条に「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる」と規定されているが、最高裁判例(昭和28年9月25日)では「賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用・収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事由があるときは、賃貸人は、民法第612条第2項により契約を解除することができない」と規定されており設問は正しい。設問にある「当該行為を賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情を立証したときは」は単純に「背信行為がなければ」と解釈してももよい
・選択肢2:民法第613条第1項に「賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う」と規定されており設問は正しくない。賃貸人は賃借人のみならず転借人へも直接賃料の請求をすることはできる
・選択肢3:民法第612条「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない」と規定されているが、Aの承諾を得ずにEに転貸したときBE間の転貸借契約は無効となり契約の解除をすることができるが、解除されるまでは転貸借契約も有効なので設問は正しくない
・選択肢4:民法第613条第3項に「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない 」と規定されており設問は正しくない。転借人は転借権をもって賃貸人に対抗することができるので転借人はそのまま賃貸家屋を利用し続けることができる
≪答え≫ 1
1 BがAに対して707 号室の引渡債務の強制履行を裁判所に請求するには、Aの責めに帰すべき事由によって同室の引渡しが遅滞している必要がある。
2 Aの責めに帰すべき事由によって707号室の引渡しが遅滞している場合において、BがAに対して履行遅滞による損害賠償を請求するには、相当の期間を定めて同室の引渡しを催告しなければならない。
3 Aの責めに帰すべき事由によって707号室の引渡しが遅滞している場合において、Bが履行遅滞を理由として本件売買契約を解除したときには、Bは、Aに対し、707号室の引渡しが遅滞したことによって生じた損害の賠償を請求することができない。
4 Aの責めに帰すべき事由によって707号室の引渡しが遅滞している場合において、Aが707号室をCに売却し、AからCへの同室の所有権移転登記がなされたときには、Bは、Aに対し、履行不能によって生じた損害の賠償を請求することができる。
≪解説≫
・選択肢1:民法第414条第1項に「債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる」と規定されているが、この強行履行は債務者Aの責めに帰すべき事由によるものである必要はないので設問は正しくない。単に債務が不履行の状態であればよい
・選択肢2:民法第415条第1項に「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」と規定されておりBがAに対して履行遅滞による損害賠償を請求するには相当の期間を定めて同室の引渡しを催告しなければならないことはなく設問は正しくない
・選択肢3:民法第541条に「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる」と規定されており、また、民法第545条第4項に「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない」と規定されており併せて設問は正しくない。設問に「引渡しが遅滞したことによって生じた損害の賠償を請求することができない
・選択肢4:民法第415条に「履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる」と規定されており、また、民法第415条第2に「債務の履行が不能であるとき、債権者は債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができる」と規定されており併せて設問は正しい
≪答え≫ 4
民法からの出題でるが奥が深い。民法の規定はともかく、このような場面に遭遇したらどうするかを判断することを考えてみること。
1 AB間の賃貸借契約に基づき、Bが賃借人となった301号室に隠れた瑕疵があったときは、特約のない限り、Bは、Aに対し、隠れた瑕疵について損害賠償の請求をすることができ、又は賃貸借契約の解除をすることができるが、当該排水管の修繕を請求することはできない。
2 AC間の負担付でない使用貸借契約に基づき、Cが借主となった301号室に隠れた瑕疵があったときは、Aが隠れた瑕疵の存在を知らない場合は、特約のない限り、Cは、Aに対し、担保責任を追及することができない。
3 Aが死亡し、相続人D及びEの遺産分割協議に基づき、Dが単独で取得した301号室に隠れた瑕疵があったときは、共同相続人であるEは、Dに対し、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
4 Fが強制競売によって取得した301号室に隠れた瑕疵があったときは、Fは、Aに対し、隠れた瑕疵について損害賠償の請求をすることはできない。
≪解説≫
・選択肢1:民法第562条に「売買契約では引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と規定されており、また、民法第559条に「この節の規定は売買以外の有償契約について準用する」と規定されている。賃貸借契約は賃料を払うので「有償契約」なので売買契約の規定が賃貸借契約にも準用されるので排水管の修繕を請求することもできるので設問の後半により設問は正しくない。設問に「該排水管の修繕を請求することはできない」とある
・選択肢2:使用貸借契約の貸主の担保責任は民法第596条に「第551条の規定は、使用貸借について準用する」と規定されており、民法第551条には「贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない」と規定されており設問は正しい。つまり、Cは、Aに対し、担保責任を追及することができない
・選択肢3:民法第911条に「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」と規定されており、瑕疵ある相続財産を取得した相続人は,他の共同相続人に対して担保責任を追及することができるので設問は正しい
・選択肢4:民法第570条に「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは売主の瑕疵担保責任が認められる。ただし、強制競売の場合は、この限りでない」と規定されており買受人は隠れた瑕疵について損害賠償の請求をすることはできないので設問は正しい
≪答え≫ 1
瑕疵担保責任や損害賠償についての出題である。範囲が賃貸借契約、使用貸借契約、遺産分割や強制競売と多方面で広く特定のテーマに関して知識をまとめておく必要がある。
1 抵当権設定登記後に、206号室が全焼し、保険会社からAに火災保険金が支払われた。この場合には、Bは、Aに支払われた火災保険金に対して、抵当権に基づく物上代位権を行使することができない。
2 抵当権設定登記後に、AがC銀行から金銭を借り受けるに当たり、206号室にCのための抵当権を設定する場合には、Bの承諾を得なければならない。
3 抵当権設定登記後に、Dが、206号室にBの抵当権が設定されていることを知らずに、Aから同室を購入しその旨の登記がなされた。この場合には、Dは、同室にBの抵当権が設定されていることにつき善意であったことを理由として、Bに対し、抵当権設定登記の抹消を請求することができる。
4 抵当権設定登記後に、Aが206号室をEに賃貸し、Eが同室に居住し始めた。その後、Bの抵当権の実行による競売において同室をFが買い受けた場合には、Eは、Fの買受けの時に直ちに同室をFに引き渡さなければならない。
≪解説≫
・選択肢1:物上代位は民法第304条第1項に「先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」と規定されており、物上代位は抵当権についても先取特権の規定を準用されている。設問では「払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」となっておらず抵当権に基づく物上代位権を行使することができないので設問は正しい
・選択肢2:民法第373条に「同一の不動産について数個の抵当権が設定されたときは、その抵当権の順位は登記の前後による」と規定されており、追加して抵当権設定する場合はすでに抵当権を設定している抵当権者の承認は不要なので設問は正しくない
・選択肢3:民法第177条に「不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と規定されており、買主が善意であってもすでに登記がされていれば、売主に抵当権設定登記の抹消を請求することができないので設問は正しくない。設問に「購入者Dは、同室にBの抵当権が設定されていることにつき善意であったことを理由として、抵当権設定者Bに対し、抵当権設定登記の抹消を請求することができる」とある。適切な取引時に登記簿を閲覧してもし抵当権が設定されていれば売主側で抹消してもらってから購入すべきである
・選択肢4:民法第395条に「抵当権者に対抗することができない賃貸借により抵当権の目的である建物の使用又は収益をする者であって次に掲げるものは、その建物の競売における買受人の買受けの時から六箇月を経過するまでは、その建物を買受人に引き渡すことを要しない」と規定されており直ちに競売買受人へ引き渡す必要はないので設問は正しくない。設問に「賃借人Eは、買受人Fの買受けの時に直ちに同室をFに引き渡さなければならない」とある
≪答え≫ 1
抵当権からの出題である。割と基本的な設問であり容易に正答は得られる。
1 CがAより先に死亡していたときは、B及びDが102号室の共同相続人となる。
2 Cが相続の放棄をしたときは、B及びDが102号室の共同相続人となる。
3 Cが相続人の欠格事由に該当したときは、B及びDが102号室の共同相続人となる。
4 C及びDがAより先に死亡していた場合において、Dに子Eのみがあるときは、B及びEが102号室の共同相続人となる。
≪解説≫
・選択肢1:民法第887条第2項に「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と規定されておりCの子Dが代襲相続をするので設問は正しい
・選択肢2:民法第939条に「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と規定されており、相続放棄した場合にはそもそも相続権が発生しないので代襲相続により相続権が下の世代に移るということもない相続人の子は相続できないので設問は正しくない
・選択肢3:民法第887条第2項に「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定(欠格事由)に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と規定されており、Cが相続人の欠格事由に該当したときはDは代襲相続することができるので設問は正しい。設問に「B(配偶者)及びD(相続を放棄した者の子)が102号室の共同相続人となる。」とある
・選択肢4:民法第887条第2項に「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる」と規定されており、また、同条第3項に「前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する」と規定されている。従って、被相続人の子Cがすでに亡くなっていた場合は、被相続人Cの孫が相続人になると定めているのでDに子Eのみがあるときは102号室の共同相続人となる(再代襲)ので設問は正しい
≪答え≫ 2
◆ マンション維持保全に関する諸法令(問18~問24)
例年の通り不動産登記法、マンション建替え等円滑化法、都市計画化法、建築基準法、水道法、消防法等から出題されている。
対象となる法令の範囲が広く専門的な事項を習得するのは困難であるが、過去問を通じて特定のテーマに関する知識に関しウエブを通じて習得する他、民法と同様に宅建試験と試験範囲が重複する不動産登記法、都市計画化法や建築基準法はYouTubeで無料にて公開されている宅建試験講座のサイトを繰り返し聴講するのも方策である。
〔問 18〕 敷地権付き区分建物の登記等に関する次の記述のうち、不動産登記法(平成16年法律第123号)、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 敷地権付き区分建物の敷地権が地上権である場合に、敷地権である旨の登記をした土地には、当該土地の所有権を目的とする抵当権の設定の登記をすることができない。
2 敷地権付き区分建物には、建物のみを目的とする不動産の先取特権に係る権利に関する登記をすることができない。
3 敷地権付き区分建物の所有権の登記名義人の相続人は、区分建物と敷地権とをそれぞれ別の相続人とする相続を原因とする所有権の移転登記をすることができる。
4 規約敷地を新たに追加し、敷地権である旨の登記がなされた場合には、当該規約敷地に、既に区分建物に登記されている抵当権と同一の債権を担保する敷地権のみを目的とする抵当権設定の登記をすることができる。
≪解説≫
・選択肢1:民法第73条第2項に「敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権(一般の先取特権、質権、抵当権)に係る権利に関する登記をすることができない」と規定されているが、敷地権は、地上権であり、敷地権(地上権)である旨の登記をした土地には、敷地権(地上権)を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができないが、当該土地の「所有権」を目的とする抵当権の設定の登記をすることはできるので 設問は正しくない。設問に「敷地権が地上権である場合に、敷地権である旨の登記をした土地には、当該土地の所有権を目的とする抵当権の設定の登記をすることができない」とある。難問である
・選択肢2:不動産登記法第73条第3項に「敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう)に係る権利に関する登記をすることができない」と規定されており「不動産の先取特権」は含まれていないので設問は正しくない。先取特権は「債務者の一般財産に対する一般の先取特権」、「動産に対する動産の先取特権」、「不動産に対する先取特権」の3種に分かれが、不動産の先取特権は登記することができる。設問は「建物のみを目的とする不動産の先取特権に係る権利に関する登記をすることができない」とある
・選択肢3:区分所有法第15条第2項に「共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない」と規定されており、また、不動産登記法第73条第1項に「敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ)に係る権利に関する登記は、第46条の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する」と規定されている。これらから区分建物と敷地権とをそれぞれ別の相続人とする相続を原因とする所有権の移転登記をすることがでないので設問は正しくない。常識的に考えても誤りであることは判断できる。設問に「区分建物と敷地権とをそれぞれ別の相続人とする相続を原因とする所有権の移転登記をすることができる」とある
・選択肢4:不動産登記法第73条第に「敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない」と規定されているが、規約敷地が追加し登記された場合は、当該規約敷地にすでに区分建物に登記されている抵当権と同一の債権を担保する敷地権を目的とする抵当権を追加して登記する事ができるので設問は正しい
≪答え≫ 4
登記に関する出題であるが教科書通りの知識では正答を得るのは難しい。地上権や不動産の先取特権に関する知識も求められる。
ア 組合が分配金取得計画について認可を申請しようとするときは、分配金取得計画について、あらかじめ、総会において出席組合員の議決権及び敷地利用権の持分の価格の各4分の3以上の特別の議決を経る必要がある。
イ 組合が分配金取得計画について認可を申請しようとするときは、分配金取得計画について、あらかじめ、売却マンションについて賃借権を有する者の同意を得なければならない。
ウ 分配金取得計画においては、売却マンション又はその敷地の明渡しにより当該売却マンション又はその敷地に関する権利(組合員の有する区分所有権及び敷地利用権を除く。)を有する者で、権利消滅期日において当該権利を失うもの(売却マンション又はその敷地を占有している者に限る)の受ける損失の額を定めなければならない。
エ 分配金取得計画においては、組合員が取得することとなる分配金の価額を定めなければならない。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
≪解説≫
・選択肢ア:マンションの建替え等円滑化法第141条第2項に「組合は、都道府県知事等の認可を申請しようとするときは、分配金取得計画について、あらかじめ、総会の議決を経なければならない」と規定されており、設問にある4分の3以上は誤りで普通決議(過半数以上の決議)でよいので設問は正しくない。設問に「総会において出席組合員の議決権及び敷地利用権の持分の価格の各4分の3以上の特別の議決を経る必要がある」とある
・選択肢イ:マンションの建替え等円滑化法第141条第2項に「売却マンションの敷地利用権が賃借権であるときは、売却マンションの敷地の所有権を有する者の同意を得なければならない」と規定されており、設問にある「売却マンションについて賃借権を有する者の同意を得なければならない」とは規定されておらず設問は正しくない
・選択肢ウ:マンションの建替え等円滑化法第142条第5項に「売却マンション又はその敷地の明渡しにより売却マンション又はその敷地を占有している者が受ける損失の額定めなければならない」と規定されており設問は正しい
・選択肢エ:マンションの建替え等円滑化法第142条第3項に「組合員が取得することとなる分配金の価額を定めなければならない」と規定されており設問は正しい
従って正しい選択肢はウとエの二つである。
≪答え≫ 2
マンションの建替え等の円滑化に関する法律(「マンション建替え等円滑化法」と略す)からの出題である。最近は敷地売却事業からの出題に偏っており、マンション建替え等円滑化法の後半「第四章 マンション敷地売却事業」を熟読しておく必要がある。
1 特定用途制限地域は、用途地域内の一定の地区における、当該地区の特性にふさわしい土地利用の増進、環境の保護等の特別の目的の実現を図るために、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域である。
2 特定街区は、市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める街区である。
3 高度利用地区は、建築物の容積率の最高限度及び最低限度並びに建築物の高さの最高限度及び最低限度を定める地区である。
4 準都市計画区域については、都市計画に、用途地域を定めることができない。
≪解説≫
・選択肢1:「特定用途制限地域」は都市計画法第9条第14項に「用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする」と規定されており設問は正しくない。設問は「特別用途地区」に関する規定である
・選択肢2:「特定街区」は都市計画法第9条第20項に「市街地の整備改善を図るため街区の整備又は造成が行われる地区について、その街区内における建築物の容積率並びに建築物の高さの最高限度及び壁面の位置の制限を定める街区とする」と規定されており設問は正しい
・選択肢3:「高度利用地区」は都市計画法第9条第19項に「用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区とする」と規定されており設問は正しくない
・選択肢4:「準都市計画区域」は都市計画法第8条第2項に「用途地域を定めることができる」と規定されており設問は正しくない。設問に「用途地域を定めることができない」とある
≪答え≫ 2
建築基準法からの定番の出題である紛らわしい用途地区と補助的地域区域の内容が問われている。何遍も復習して覚えるより仕方がない。
〔問 21〕 建築基準法(昭和25年法律第201号)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 共同住宅に設ける昇降機の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者)は、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
2 共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏又は天井裏に達するものとするほか、その構造を遮音性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
3 防火地域又は準防火地域内にある共同住宅で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。
4 共同住宅の住戸及び住戸から地上に通ずる廊下、階段その他の通路には、非常用の照明装置を設けなければならない。
≪解説≫
・選択肢1:建築基準法第12条第3項に「特定建築設備等(昇降機及び特定建築物の昇降機以外の建築設備等をいう)で安全上、防火上又は衛生上特に重要であるものとして政令で定めるもの及び当該政令で定めるもの以外の特定建築設備等で特定行政庁が指定するもの所有者は、これらの特定建築設備等について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者に検査をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない」と規定されいる。ただし、設問にある特定建築設備等とは、特定建築物の昇降機だけでなく、換気設備、消防設備等も含めて特定建築設備等といっており、これらを検査できる者は、国土交通省令によりそれぞれの対象の違いに応じて①建築設備検査員資格者証の交付を受けた者、②防火設備検査員資格者証の交付を受けた者、③昇降機等検査員資格者証の交付を受けた者と定めらている。建築基準法ではひとまとめにして「建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者」としているので設問にある「昇降機の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者)は、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者に検査をさせる」は誤りである。
なお、
設問にある特定建築設備等とは、特定建築物の昇降機だけでなく、換気設備、消防設備等も含めて特定建築設備等といっており、これらを検査できる者は、国土交通省令によりそれぞれの対象の違いに応じて①建築設備検査員資格者証の交付を受けた者、②防火設備検査員資格者証の交付を受けた者、③昇降機等検査員資格者証の交付を受けた者と定めらている。建築基準法ではひとまとめにして「建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者」としているので設問にある「昇降機の所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者)は、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は建築設備等検査員資格者証の交付を受けている者に検査をさせて」とあり正しくない。全く人騒がせな出題である
・選択肢3:建築基準法第65条に「防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる」と規定されており設問は正しい
・選択肢4:建築基準法施行令第126条の四に「建築法に定める居室及びこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路には、非常用の照明装置を設けなければならないが、一戸建の住宅又は長屋若しくは共同住宅の住戸は除く」と規定されており設問は誤っている。通常のマンションは普通の照明は設置されているが非常用の照明まで設置することは義務づけられていない。ひっかけ問題である
≪答え≫ 4、1(1は後から追加されたもの)
建築基準法からの出題であるがざっと読むと選択肢4は正答のように判断しかねない。確かにマンションの廊下や階段は照明されているが非常用の照明装置なのか注意する必要がある。
1 貯水槽水道とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であって、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。
2 水道事業者は、その供給規程において、貯水槽水道の設置者の責任に関する事項を適正かつ明確に定めなければならない。
3 全ての貯水槽水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
4 貯水槽水道のうち、水槽の有効容量の合計が10㎡を超えるものの設置者は、水槽の掃除を1年以内ごとに1回、定期に、行うこととされている。
≪解説≫
・選択肢1:貯水槽水道とは水道法第14条第2項第5項に「水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であって、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう」と規定されており設問は正しい
・選択肢2:水道法第14条第2項に「貯水槽水道が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること」と規定されており設問は正しい
・選択肢3:水道法第34条の二の第1項に「簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない」と規定されているが、設問の「全ての貯水槽水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない」とは規定されていないので設問は正しくない
・選択肢4:水道法施行令第55条項に簡易専用水道は「水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと」と規定されており設問は正しい。なお、水道法により貯水槽水道のうち水槽の有効容量の合計が10㎡を超えるものは簡易専用水道とされている
≪答え≫ 3
この設問は水道法を一通り理解していないと容易を得るのは難しい。選択肢2が誤りなのか選択肢3誤りなのか判断に迷うところであるが常識を働かす必要がある。
1 甲住宅については、消防設備士免状の交付を受けている者又は消防設備点検資格者に、定期に、消防用設備等の点検をさせなければならない。
2 乙住宅については、その関係者が、定期に、自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
3 甲住宅については、1年に1回、消防用設備等の点検の結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない。
4 乙住宅については、消防長又は消防署長は、消防用設備等が適法に維持されていないと認めるときは、乙住宅の関係者で権原を有するものに対し、その維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる。
≪解説≫
・選択肢1:消防法第17条の三の三に「防火対象物である共同住宅の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない」と規定されており、延べ面積については消防法施行令第36条第2項に「消防法第17条の三の三の消防用設備等又は特殊消防用設備等について消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検をさせなければならない防火対象物は、次に掲げる防火対象物とする」とあり、次に掲げる防火対象物に「共同住宅で延べ面積が千平方メートル以上のもののうち、消防長又は消防署長が火災予防上必要があると認めて指定するもの」と規定されており設問は正しい
・選択肢2:消防法第17条の三の三に「防火対象物である共同住宅の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない」と規定されており、設問にある乙住宅(延べ面積1,000㎡未満の共同住宅は「その他にもの」がこれに該当するので設問は正しい
・選択肢3:消防法施行規則第36条の六第3項に「共同住宅の防火対象物の関係者は点検を行つた結果を3年に1回消防長又は消防署長に報告しなければならない」と規定されており設問は誤っている。設問に「1年に1回」とある
・選択肢4:消防法第17条の四に「消防長又は消防署長は、消防用設備等が設備等技術基準に従って設置され、又は維持されていないと認めるときは、当該防火対象物の関係者で権原を有するものに対し、当該設備等技術基準に従つてこれを設置すべきこと、又はその維持のため必要な措置をなすべきことを命ずることができる」と規定されており設問は正しい
≪答え≫ 3
当設問は消防法だけでなく消防法施行令からも出題されており難解である。ざっとみると全設問は正しいと考えられが選択肢3で消防用設備等の点検の結果の報告タイミングを知っているかがポイントとなる。
〔問 24〕 マンションの照明設備における、防犯上の設計に関する次の記述のうち、「共同住宅に係る防犯上の留意事項及び防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針について」(平成13年3月国土交通省通達)によれば、適切でないものはどれか。
1 共用廊下・共用階段の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
2 駐車場の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において概ね3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
3 共用玄関の存する階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
4 児童遊園、広場又は緑地等の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、地面において概ね3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
≪解説≫
・選択肢1:共同住宅に係る設計指針の第3 2(6)イ に「共用廊下・共用階段の照明設備は、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする」と規定されており設問は適切である
・選択肢2:共同住宅に係る設計指針の第3 2(8)イ に「駐車場の照明設備は、床面において概ね3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする」と規定されており設問は適切である
・選択肢3:共同住宅に係る設計指針の第条第項に第3 2(4)イ に「共用玄関の存する階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする」と規定されており設問は適切でない
・選択肢4:共同住宅に係る設計指針の第3 2(10)イに「児童遊園、広場又は緑地等の照明設備は、地面において概ね3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする」と規定されており設問は適切である
≪答え≫ 3
「共同住宅に係る防犯上の留意事項及び防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針について」(「共同住宅に係る設計指針」と略す)からの出題である。設問では数値が問われているが当指針に目を通しておけば容易に正答を得られる。
◆ 標準管理規約等(問25~問33)
標準管理規約から8問、標準管理委託契約書から1問の出題である。標準管理規約は平成28年3月に大幅に改正されているが、今回は大部分が改正された箇所からの出題であり、今後、改正された規約をベースに勉強するとよい。規約のコメントも含め繰り返し学習しておけば高得点が期待できる。特に注意すべき点は以下の通り。
・設問はすべて「適切か否か」が問われている。「適切か」という言葉に捕らわれて自分の過去の役員としての経験等により判断してはならない。ここの部分は受験生がマンション管理士としての能力を持っているかと問うているのではなく標準管理規約(コメントを含む)をどの程度理解(記憶)しているかを問うている。従って、現実の管理組合運営で「適切でない」事項でも規約で規定されていれば「適切である」と判断する必要がある。早合点は禁物である。
・設問は規約本文からだけでなくコメントから出題されることもある。学習する際はコメントだからといって読み飛ばすことなくコメント記載事項も含めて標準管理規約が提示されている前提で注目し習得すること。
・標準管理規約は区分所有法に基づいて作成されているが、標準管理規約には規定されているが区分所有法ではそこまでは規定されていない場合がある。例えば、規約に違反した区分所有者に対し理事長が理事会の決議を経て行為の差止訴訟を提起することができるが、区分所有法では総会の決議が必要となる。これは、区分所有法では理事会や理事長に関して規定していないことによるが、このように問われた場合、早合点して「総会の決議が必要」としないように注意する必要がある。設問が「標準管理規約によれば・・・」とあれば「理事会の決議で可」とすべきである。
〔問 25〕 甲マンションの302号室の区分所有者Aが、断熱性の向上のために窓ガラスの改良を行いたい旨の工事申請書を管理組合の理事長に提出した。この場合の理事長の各々の対応に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。
2 理事長は、当分の間、管理組合で計画修繕工事の予定がないため申請を受け付けるとともに、申請書の添付書類として施工予定業者からの仕様書及び見積書を提出するようAに回答した。
3 理事長は、当分の間、管理組合で計画修繕工事の予定がなく、かつ、当該工事の実施に当たっては、Aの責任と負担において実施することが条件であることから、理事長の判断により申請を承認する旨Aに回答し、次回の理事会でその承認の報告をすることとした。
4 理事長は、当分の間、管理組合で計画修繕工事の予定はないが、申請内容が既設のサッシへの内窓の増設であり、専有部分内の工事であって共用部分や他の専有部分に影響を与えるおそれはないことから、申請の必要がない旨Aに回答した。
≪解説≫
・選択肢1:標準管理規約第17条に「理事長は、専有部分の修繕等の申請について、理事会の決議により、その承認しようとするとき、又は不承認としようとするときは、理事会の決議を決定し経なければならない」と規定されているが、同条コメント⑨には「近い将来に建替え等の検討の可能性があるマンションにおいては、修繕等について理事長の承認を求めてくる区分所有者に対して、近い将来に建替え等が検討される可能性がある旨の注意喚起を行うことが望ましい。なお、注意喚起があった上で、実際に修繕等を行うか否かはあくまで当該区分所有者の判断である」とありこれを根拠に設問は正しいと解釈する。ただし、設問では申請者の意見を聞かず理事会で一方的に決議するように受け取られるのでこれを正答にするには疑問が残る
・選択肢2 : 標準管理規約第17条第2項に「区分所有者は、設計図、仕様書及び工程表を添付した申請書を理事長に提出しなければならない」と規定されており、設問では工程表を提出するように回答していないので設問は正しくない。なお、見積書の提出も不要である。設問に「申請書の添付書類として施工予定業者からの仕様書及び見積書を提出するよう」とある
・選択肢3:標準管理規約第22条コメント④に「承認の申請先等は理事長であるが、承認、不承認の判断はあくまで理事会の決議によるものである(第54条第1項第五号参照)」とコメントされており、設問にある「理事長の判断により申請を承認する旨を回答する」ことはできないので設問は正しくない
・選択肢4:標準管理規約第7条第2項の三に「窓枠及び窓ガラスは、専用部分に含まれないものとする」と規定されており、「専有部分内の工事である」とは言えないので承認の必要があるので設問は正しくない。設問に「専有部分内の工事であって共用部分や他の専有部分に影響を与えるおそれはないことから、申請の必要がない旨Aに回答した
≪答え≫ 1
ここから8問は標準管理規約からの出題である。規約に規定されているかどうかを問うている設問であり正答を得るのは比較的容易である。
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