考証5 ダルクス人ってどんな人?


 このゲーム内で、唯一特定の人種として名前が出てくるのがダルクス人。被差別人種として扱われ、ダルクス模様など独自の文化を持ち、多くがラグナイト掘りの重労働に駆り出されたことから、工学的知識が深い人が多い、とされています。

 現実の歴史として、被差別人種として扱われてきたことがあるのがユダヤ人と黒人。特にユダヤ人は、お金を直接扱う卑しい仕事とされてきた金貸しをやらされていたことから、金融業界に人材を輩出し、現在でもその方面で隠然たる勢力を持っているとか持っていないとか。人のやりたがらない仕事を押しつけられた結果、その方面の才能を花開かせた、という意味では、業界は違えどもユダヤ人がダルクス人のモチーフになった…しばらくはそう考えていました。

 ところが、英語版、Valkyria Chroniclesをプレイした結果、それだけではないことが判明したのです。

 11章までのロージーが、イサラを何と呼んでいたか。日本語版では、「ダルクス人」か、「油くさいダルクス人」あたりが多かったと思います。英語版ではどうか。ダルクス人に相当する"Darcsen"もありますが、もう一つ、よく使われたのが、"Dark-haired"。「濃い髪の色の人」という意味ですね。

 そこで、鏡を見てみる…いや、見るまでもなく、私の髪の色も濃い、というか、黒です。

 詰まるところ、ダルクス人差別のモチーフには、実は、黒い髪のアジア人差別があった、というのが私の考察結果。確かに、実際の世の中でも、過去には黄禍論など、アジア人差別の話がありましたし、私は現在アメリカで、工学系の優秀な人が多く住む地域に住んでいますが(かといって私が優秀なわけではないのはお約束)、実際彼らの多くはアジア系。インド人まで含めてしまうと、むしろ、アングロサクソンの方が少ないのでは?と思ってしまうくらいです。

 となりますと、このゲーム(北米版)をプレイしたアングロサクソンの人たちから見れば、ダルクス人はアジア人に見えてしまうかもしれないんですね。このゲームは、アジア人から発した、反アジア人差別のメッセージ、という意味合いも含んでいる…のかもしれません。ちなみに、少なくとも私が生活している限りでは、アジア人差別というものに遭遇したことはありません。もっとも、黒人差別的な事件は未だにあるらしいですし、私のいる環境が環境だから、というのはあるのかもしれませんが…

 ちなみに、このロージーの"Dark-haired"という呼び方、結構ないいがかりですよね。第7小隊の面々の顔グラフィックを見ても、ダルクス人ではないのに、ダルクス人より髪の色が濃い人が、少なからずいます。

 もう一つ余談。少なくとも私が見る限りのアメリカにおいては、きれいな黒髪は差別の象徴どころか、むしろ美しさの象徴です。下手すると金髪より珍重されます。日本でわざわざ脱色とかしている方もいらっしゃいますが、あれ、アメリカ人基準では、ものすごく損なことをしてますよ。髪の色を変えたところで、どうせ顔を見れば、ほぼ一発でアジア人と、わかってしまいますし…


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