インタビュー「土と風」 -花水の人々
地域を支えているのは、ほとんどが全日制の市民で、地域に根ざしているという意味では「土の人」。地域に関心はあるが、通勤や通学などで昼間は地域にいない人は「風の人」。この「土の人」、「風の人」の両方の交流ののため、地域のさまざまな人や活動を取り上げていきます。
第1回 花水福祉コミュニティづくりグループ
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| 小川久美子さん(サロンチーム、チーム土と風) 1980 年(昭和55 年)福岡県生まれ 慶應義塾大学総合政策学部4 年 |
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| 荻野俊夫さん(福祉村を考える会、 福祉マップ作りチーム) 1929 年(昭和4 年)小田原生まれ。昭和 31 年から花水へ。小学校の先生として40 年間勤めた。地域の歴史についても造詣が深 い。インタビューの中に出てきた「町内福祉 村」の会長でもある。なぎさふれあいセンタ ーにある町内福祉村では、月・金曜日 午後 1 時〜4 時、コーディネーターが、困ったこ とは何でも相談を受け付けている(電話21 −3401 ) |
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| 現在の扇の松(袖が浜) |
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荻野:小川さんとは昨年の8 月にはじめてお会いしたのですが、若い方のフレッシュな考えがコミュニティの新たな動きになるのではないかと思いました。
小川:荻野さんは、地区社協の会長で町内福祉村の会長でもあるわけですが、そういう役がなくても参加されましたか?
荻野:自分の課題として、若い力が地域の中では必要であると思っていたので、みんなで出来ることがあれば、参加したいと思っていました。
フィリピンに負けている日本
小川:私の場合、小さい頃から、貧しい国の子どもたちの助けになりたいといろいろボランティアをやっていたんですが、大学に入ってフィリピンに行って孤児院を手伝う機会があったんです。ホームステイした家で、どの子がその家の子かわからないぐらい、お隣同士が互いに面倒を見合って、「一緒に暮らしている」という感じで、私は、それがすごく楽しかった。日本は負けているなと思ったんです。私のしたい暮らしはそういう暮らしで、この活動のチラシをみたとき、自分たちの暮らしをもっと自分たちが気持ちよいように作っていこうという考え方がすばらしいと思いました。「みんなでまちを作っていけるんだ」、どんなことが出来るのかなと思い参加しました。
荻野:フィリピンのような近所の人との付き合いが、昔はあった。それが、いつのまにか崩れてしまったわけだけど、お互いに助け合うことは花水でも出来るだろうと思ってきている。「福祉コミュニティづくりグループ」のよさは、いろいろな年代の人たちが集まっていることであると思います。新しい時代の中にあって、自分の目標を持ちながら活動している姿はいいなと思います。
「助けあい」はそんなに難しいことではない
小川:荻野さんにお会いして、地域にずっと住んでいて、ずっといろいろな活動をしていらっしゃる人たちが見守ってくれているのだなと思いました。「助けあい」というのは、何か大きなことをしなくてはならないとずっと思ってきたのですが、この活動を通して「助けあい」はそんなに難しいことではないことを学びました。地域の人たちと付き合うリズムや人との関係のとり方などを荻野さんから学んだと思っています。
荻野:FM ナパサに出演した宮坂さんがおっしゃった「住んでいてよかったまち、住みたいまちにしていきたい」という気持ちが大切だと思います。多くの人がそうであると思っていても、なかなか先立って動く人は多くない。でも、自分が主になって動きだすということが出来れば、地域が変わっていくのだと思います。
小川:それは面倒くさいというか、手間がかかりますよね。それを始めようとしたのが、この活動だと思いますが、この1
年間のやられたご感想はいかがでしょうか?
荻野:時間をかけなくてはならないと思います。多くの人々ともっと話をしていかなくてはならないと思っています。私たちがやっていることが、1つ1つ地域の人たちに注目され始め、それが何かにつながっていくと思うのです。小中学校の子どもたちに福祉のことを知ってもらう機会にしたりすることも大切であると思います。
小川:この1年を通して、私たちの中で学んだり、私たちの中で広がったことも大きいですが、他の人たちが何かを行うきっかけや引き金になって広がっていったら面白いことですよね。
荻野:他の地域の人が花水のことに注目をしてくれているのをあちこちで聞きますが、よい地域にするためにどのような取組みをしていったらよいのかわからないというところだと思います。私たち自身も学びながら、模索しながら、ということだと思いますが。花水に住んで46年ですけれど、地域の変貌などを見てきました。中にいると、その変化はわからないものですが、どうですか花水は。
花水のよいところは地域活動に積極的なこと
小川:ここにはじめて来た時には、きれいな所だなという印象がありました。昔ながらの商店街なども残っていて、きれいだけでなく、昔から住んでいる人たちの暮らしもあるのだなぁと感じました。長く花水に住んでいる荻野さんに、昔から変わらない花水のよいところをお聞きしたいのですが。
荻野:よその地域の人から聞いても、花水は落ち着いていてよいところであるとよく聞きます。人物でゆかりのある人も村井弦斎さんとか中勘介さんとかいらっしゃいますが、明治には別荘地だったわけです。すばらしいまちを作る素質があったのではないかと思います。マンションに引越してきた方が、すばらしい風景などに対して、引越してよかったと言っていました。こころの故郷としてもすばらしい花水にならなくてはと思っています。
小川:1つのものごとを見る場合に、年代によって、そのよさを感じる視点が違うのだということが分かりました。違う視点を持っていることを知りえたことが本当によかった思いますし、収穫だったと思います。
荻野:花水の人たちのよい部分は、多くの人たちが地域の活動に積極的に参加してくれることだと思います。地域の人たちに、地域の各団体がやっていることに目を向けてもらいたいとお願いしたい。自分たちのまちをよくするためには、みんながそういった活動に参加しなくてはならないということを知ってもらいたいですね。自治会の人たちが、その名の通り、自分たちなりの問題意識を持って、問題を発見したならばお互いにその問題を追及していくこと、そのことがまちをよくすることにつながると思います。隣の人と協調する、助け合うことが当たり前に出来るようになるとよいですね。
「土と風」に期待すること
高橋龍正(編集部):この情報誌は、「チーム土と風」が担当して、装い新たに発刊することになりました。地域を支えているのは、ほとんどが全日制の市民で、地域に根ざしているという意味では「土の人」。地域に関心はあるが、通勤や通学などで昼間は地域にいない人は「風の人」。この「土の人」、「風の人」の両方の交流の場として情報を発信していこうと思います。この情報誌に期待することは何でしょうか。
小川:地域にどんな人がいるのか、どんなことをやっているのかを知ることが、楽しいことに気付いてほしいなぁと思います。人付き合いは面倒くさい、と先ほど言いました。これは私たち若い人特有な考えだと思いますが、きっかけさえあれば、付き合っていくことで自分の中でプラスになっていくことがあると思います。私はこの活動に参加して、荻野さんや皆さんの顔を知れたし、お人柄も知れたし、その先で自治会活動などにも関心を持つことも出来ました。人につながっていける、それが楽しいことであるということを知るきっかけになればと思います。
荻野:土と風の情報誌はすばらしいテーマだと思います。農家の人たちは土(土壌)のことを真剣に考えているんですよ。人間を育てる本当のおおもとであると思う。でも土なくして人間は語れないけど、土を変化させるものは風だと思います。松の梢を吹いていく風のすばらしさ。明治29年の写真でみる「扇の松」は、すばらしい枝振りでしたよ。変化はそこに暮らしているとなかなか気付かないものですが、大きなスパンで見るとその変化が分かります。
小川:松が変化をあらわしているように、「土と風」では変化しているものも変わらないものも両方伝えていくことが出来ればと思います。
荻野:読者の皆さんがその中でどうあるべきかということを自問自答していけるような情報誌になればよいですね。それらが喜ばれるものになればと思っています。それと同時にコミュニティづくりも活発になればと思います。
小川:私たちも、もっと精進しなければいけないですね(笑)。
情報誌「扇の松の木下で」第3 号(2002 年11 月3 日発行)より
於:花水公民館
記録:中島民恵子(イラストも)