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空談寸評

『ふしぎ魔法 ファンファンファーマシィー』

TVアニメシリーズ、東映アニメーション、小中千昭 シリーズ構成・脚本




へーげる奥田



 う〜ん、とうとう終わってしまったか。って、リアルタイムで観ながら撮ったビデオを後から観なおしたところ、ぜんぜん違う裏番組が撮れていたので全地球人がにくい。きー。

 最近、ほとんどアニメとか観なくなった。というよりも、テレビ番組そのものを観なくなったのだ。帰る時間がやたら遅かったりするもので、つい自由な時間にできる格闘ゲームとかをやってしまう。おかげで定期的に観るのは深夜の番組とかニュース番組とかばかりである。

 そんな状態なので、コミックマーケットに行っても知らないキャラクターがずいぶん増えた。その女の子も、1998年夏のコミックマーケットではじめて知った。「あやしい本屋」というCGとかを作っているサークルの本をふと目に留め、ちょっと興味をもった。ちょっと興味をもった目であたりを見回すと、このキャラクターはあちこちで取り上げられていることに気がついた。けっこう身の回りにいたのに、今までぜんぜん気づかなかった。しかしなお、それがなんという番組のなんというキャラクターなのかさっぱりわからなかった。

 買い込んだ同人誌とかで、その女の子が「ぽぷり」というあだ名の人工精霊召喚魔法を使う少女であることを知り、またその番組が『ファンファンファーマシィー』という名であることを知ってもなお、いったいどうすればその番組を観ることができるのかなかなかわからなかった。新聞のテレビ欄を毎日みても、それらしい番組はやっていない。これはきっと衛星放送とかでやっているのかなと半ばあきらめたところで、実はそれが『週刊アニメDXみいファぷー』なる番組の3本立てアニメのひとつとして放映していることを知ったのだ。

 そういえば何ヶ月か前、「ニャロメ復活」とか言って一般新聞に小さな記事が載っていたのを見た記憶がある。なるほどと思ってちょっと見てみたのだが、『ファンファンファーマシィー』の秀逸さにかなりびっくりしたものだった。不勉強ながら、小中千昭氏という人物を私はそれまで知らなかった。だいたい私は人の名をあまり覚えないのだ。ただ、この人物が『ファンファンファーマシィー』の脚本をすべて書いていること、この人物はむしろ特撮関係の脚本で有名な人であることなどを知ったのはずいぶん後になってからである。

 アニメ『ふしぎ魔法 ファンファンファーマシィー』は、正々堂々子供向けに作られた作品だが、そのキャラクターの魅力、作画や演出の品質は大人の鑑賞にも十分たえる。しかしここで強調したいのはやはりその脚本の秀逸さである。ときには演劇調に、ときにはミステリアスに、精神の深奥にふれる静かな迫力をもってしっとりとした世界観を構築しているその手腕はまさに一流の仕事だ。そのテーマは多岐にわたるが、人が心を世界に向け、世界を読んでいこうとする能動性の発揮を実感する。ご本人からのメールの言によれば、記号学などの現代思想が作風の根底にあるというのだが、そういった系列の反人間的思想潮流とは異なり、それこそがリアルでいきいきとした「生」の原理であるといった現象学とか生の哲学に通じるものがこの作品には強烈に感じられるのだ。……とか書いていて、これはにごったまなざしだよなあ、そんなコザカシい小理屈なんかこねながら観る自分はかなり不幸だなあなどと思う。ともかくも、『ほんのなかのぼうけん』の「いちばんすきなまほう」のくだりや、最終回に通じるいくつかのストーリーに私はいい歳こいてひどくカンドーした。これ以上のくだらん解説なんかはいらん。以上解説おわり。

 まあ、観ていた者には紹介不要だろうが、このアニメ作品は、小学館の子供雑誌に連載されている『ファンファン・ファーマシィー』という童話を原作としている。あいにく原作を読む機会に恵まれていないが、いつか読んでみたいものだ。そして、まだ見ぬいくつかのエピソードを含めて、レーザーディスクとかの発売を切望する作品である。





1999/02



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