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空談寸評

『浦安鉄筋家族』

TVアニメシリーズ、スタジオ・ディーン、浜岡賢次原作/大地丙太郎監督




へーげる奥田



 アニメ『浦安鉄筋家族』は、同じ大地丙太郎監督の『すごいよ! マサルさん』で成功した、深夜番組『ワンダフル』のアニメ枠内で放送された7分間のシリーズである。『マサルさん』の場合はもちろん放送前から原作を全話読んで知っていたが、『浦安鉄筋家族』はまったく読んだことがなかった。原作のコミックスを本屋の店頭でしばしば見ていたが、最近の本屋はみなコミックスに紐がかかっていて中を見ることができない。連載の少年チャンピオンは読まなくなって20年近くなる。今回の寸評の表題について、原作コミックスにするかアニメ版にするか迷ったのだが、初めて本格的に作品に接したのがアニメ版だったことからこちらをあげた。

 まったく予備知識のない作品を最初に観たときの感覚をあとから思い出すのはけっこう好きだ。最初にオープニングを見たとき、見知らぬ子供らがやたらと走っていた。いま見ればどれもなじんだ顔なのだが、当時はこりゃいったい何だと思ったものである。しかも私の場合、連続ものの作品をちゃんと第一話から続けて観ることは実は少ない。けっこうイイカゲンな性格なのだ。この作品の場合も途中から観始めたため、基本設定だとか作品の世界観だとかなにもわからず眺めていた。とはいえ、ほとんど一話完結であるから苦労はない。大地監督のノリも勝手知ったるものであり、すぐにすんなりと入り込むことができた。

 この作品、とにかく舞台が小学校、主人公が小学2年生ということもあってか、やたら小学生的ギャグの世界である。「放送上の都合」で色は変えてあるが、ウンコがやたらと登場する。原作コミックスからしてそうなのだが、なぜかこの作品に描かれる浦安の町にはなぜか多くの犬が徘徊し、その犬のものとおぼしきウンコがところかまわず落ちているのだ。余談だが、やたらと犬およびそのウンコが描かれているものの、どうやら原作の浜岡氏は実際の犬の排便シーンを見たことがないらしい。稀に描かれる犬のウンコシーンでは、馬や牛のようにフンをボタボタ落としているが、犬を飼ったことのある人ならこれが実際とは異なることは一目瞭然である。まあ別にいいのだが。

 そうそう、この『浦安鉄筋家族』においてウンコといえば「国会議員」である。実のところ原作コミックスでは、実在人物の似顔キャラが少しだけ名前を変えて「小学生的ギャグ」を演じることが多いのだが、アニメ放送上ではいろんな問題があったらしく、登場したのは畑正憲氏の似顔キャラ「松五郎」、それも名前を「虎五郎」に変えての出演だけだったように記憶している。やたらと1WGPチャンピオンベルトを賭けて戦いたがるプロレスラー・橋友選手も、主人公・小鉄の兄イが縦笛を吹くとどこからともなく現れるジャイアント馬場キャラの「大巨人」も、実在人物への配慮からか登場しなかったし、除霊を生業とする「ボギー愛子」もオープニングにしか姿を現さなかった。で、「国会議員」なのだが、原作の彼はなぜか登場するたびに毎回必ず大量のウンコを噴出する。モデルは誰あろうA・猪木であって、それだからこそ「国会議員」の呼称が生きるのだが、アニメではなんだかナゾの外国人に変えられていた。だから最初に観たとき、なぜ彼が国会議員で、ウンコばっかりするのかぜんぜん理解できなかったのである。情報通の友人に聞き、やっと事情が飲み込めた次第であった。

 アニメ版は『すごいよ! マサルさん』よりさらに短い時間での構成で、すごいテンポで展開したのち何だか唐突に終わる。原作も同様で、やけに強引な展開から唐突にすぱっと終わってしまうのだ。観ているほうはあっけにとられているのだが、まあこれで何年も続いているのだから問題ないのだろう。アニメを観て以来なぜかいやにハマッてしまい、単行本を片端から買って読んでいるうちに、こういう構成がいやに気に入ってしまった。何年もかわらず永続的に小学生ギャグを展開する『浦安鉄筋家族』は、慣れると座り心地のいい世界なのかもしれない。個人的には、語尾に「ちょー」とかをつけて会話し、そのへんの街角でやたらと遭難するやや知恵遅れ気味の担任教師・春巻先生が非常に気に入っている。LDが出たら少なくとも第一巻は買うんだと心に決めている作品だ。





1998/11


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