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空談放言


ゲーム「アヴァロン」とは

そのゲームシステムとルール



 押井監督の実写映画『アヴァロン』はもうご覧になったであろうか。私は3回ほど観たが、そのたびに思うのは、この作品において描かれているゲーム「アヴァロン」を、観客ははたして理解できているのだろうかという点である。私の場合、押井監督の手による『アヴァロン』小説版も読んだので、その世界観、ゲームのしくみなどといった予備知識があった2回目の鑑賞時には問題なくクリアーにわかった部分が、なんの予備知識もなく観た1回目の鑑賞時にはあまりよく理解できなかったという感じであった。

 幸いにも、私の場合は「ロールプレイングゲーム」というものに関してはそれなりの経験を持っており、銃器や兵站学についてもぜんぜん知らない訳ではないのでまだなんとかなったし、鑑賞自体も1度や2度や3度で終わらすつもりはないのでまだ理解は易いと言える。しかし、たいていの鑑賞者にとっては、予備知識なしで一度だけ観て終わり、という鑑賞態度だろう(むろんこれが正常な鑑賞態度だ)。はたしてこれで『アヴァロン』が理解できるのだろうか!?

 この点を鑑み、映画『アヴァロン』のストーリーに影響することなく、あくまでその作中ゲーム「アヴァロン」のゲームシステム、およびそのルールについて、事前レクチャー用テキストを用意することにした。

 注意していただきたいが、あくまでも先入観なしで完全に白紙の状態で映画『アヴァロン』を鑑賞したいと考えている方は以下の文章を読むべきではない。少なくともストーリーや映画に設定されたギミックの効果を損なうことなく書いたつもりではあるが、それがひとつの先入観となることは確かであろうからだ。逆に、軽い気持ちで映画『アヴァロン』をちょっと観てみようと思っておられる方、「もしかすると将来貸しビデオ屋に並んだら観てみようか」程度の認識でおられる方、またすでに1〜2度観たけどよくわからないといった方にあっては、ためしにご一読されるのもよいかと存ずる。








<<<<< 以下、ネタバレ防止用改行 >>>>>




















Ver.20010212

1.ゲームのシステム

 1.1 ゲームの概要

    1.1.1  プレイヤーは、ゲーム「アヴァロン」のプロバイダに対して「アクセス料金」を支払い、「端末(ブランチ)」を利用する。

    1.1.2  プレイヤーは、「端末」を使用することにより、大脳皮質への低周波による直接励起によってゲーム内の時空間を体感し、ゲーム内の仮想世界に没入する。

    1.1.3  プレイヤーは、ゲーム内の仮想世界において、自分が設定したキャラクターとなってその役割を演じる。キャラクターの能力・特性・装備等のデータは、ゲーム終了後も保存される。

    1.1.4  ゲーム内では、一定のシナリオに準拠したイベントが用意され、プレイヤーはそこにおいて、「戦闘」を行って「戦技」を競う。なお、ゲーム中使用する武器は第二次世界大戦前後の携行兵器に限定される。

     

 1.2 ゲームの目的

    1.2.1  プレイヤーの原則としての目的は、多種多様に用意されたゲーム内部の仮想世界において戦闘を行い、ゲームシステムがゲームのシナリオに準拠して設定した目的を完遂するべく行動することである。

    1.2.2  ゲームシナリオにおいて設定された「目的」とは、特定の「目標(フラグ)」を破壊もしくは殲滅すること、またはシナリオにおいて設定された何らかの条件を満たすこと、である。

    1.2.3  プレイヤーは、必ずしもゲームのシナリオの規定にしたがった「目的」を完遂する必要はない。出現する任意の「敵」を適宜倒して経験値を稼ぎ、キャラクターの成長、レアアイテムの獲得、経験値そのものの換金等を目的とすることも、広義の「ゲームの目的」と言える。

    1.2.4  ゲームの模様は、記録され、ゲーム実行中でない他のプレイヤーに対して放映される。このことによって、英雄的なプレイを行ったプレイヤーは、ゲームマニアの間で賞賛を受ける。この賞賛も、広義の「ゲームの目的」と言える。

 

 1.3 ゲームの終了

    1.3.1  ゲームは、次の要件によって終了する。

     a)「セーブポイント」に到達してのログアウト

     b)プレイヤーの演ずるキャラクターの「死亡(デッド)

     c)プレイヤーの演ずるキャラクターの「撤退(リセット)

    1.3.2  ゲーム終了により、プレイヤーの演じるキャラクターのデータは保存され、プレイヤーの意識は現実的な肉体に戻る。ただし、「死亡」あるいは「撤退」によるゲーム終了の場合、そのゲーム中に獲得した経験値等のデータは保存されない。

    1.3.3  何らかのアクシデントで、ゲーム終了後、プレイヤーに意識が戻らないケースが生ずる可能性がある。この状態に陥ったプレイヤーは、意識不明のまま回復不能となる。この状態となったプレイヤーは「未帰還者(ロスト)」と呼ばれる

 

 1.4 「経験値」

    1.4.1  プレイヤーは、「アヴァロン」の「フィールド」において、敵対キャラクターを攻撃、破壊もしくは殺戮することによって「経験値」を得ることができる。

    1.4.2  獲得できる「経験値」は、「敵」の種類によって異なる。戦闘能力の乏しいキャラクターを倒しても、原則として少ない経験値しか得られない。また逆に、シナリオ上の最終目的敵キャラクターである「フラグ」を破壊したとき、その「フィールド」で最も多くの経験値を得ることができる。また、フィールド上で獲得したボーナスコンテナのアイテム等を経験値に交換することもできる。

    1.4.3  プレイヤーが獲得した「経験値」は、その数量に応じ、次の要素に振り分けることができる。

     a)キャラクターの成長(レベルアップ)

     b)ゲーム中に自分のキャラクターが使用する武器・弾薬への交換

     c)相当する現金への換金

     

     

2.キャラクター

 2.1 「パーティ」

    2.1.1  プレイヤーは、「アヴァロン」をプレイするにあたって、そのフィールドに対する参加単位として、他のプレイヤーのキャラクターとグループを形成してこれに臨むことができる。この任意集団を「パーティ」と呼ぶ。

    2.1.2  「パーティ」の人数は任意である。最低人数の「パーティ」は1名であるし、「パーティ」の構成人数に上限は設けられていない。

    2.1.3  経験値は、「パーティ」を単位として、その生存者メンバーに対して与えられる。「パーティ」内部にあっては、その都度協議によって各メンバーに経験値を配分する。従って、あまり多人数の「パーティ」では、獲得する経験値が逓減するため、多くの場合「パーティ」の最大構成人数は6名程度が現実的と言われている。

    2.1.4  ゲームの実行において、フィールドはチーム個別に独占的に割り当てられるとはかぎらない。したがって、ゲーム実行中に他の「パーティ」に遭遇する場合もあり得る。他のパーティと遭遇した場合、両パーティは敵対行動をとることが多い。場合によっては他のパーティを襲撃してその装備データを略奪する「プレイヤーキラー」といった行為を行う悪質プレイヤーも存在する。

 

 2.2 「職業(ジョブクラス)

    2.2.1  「アヴァロン」をプレイするにあたり、プレイヤーは、自分のキャラクターを次のいずれかの「職業(ジョブクラス)」として規定する。「職業(ジョブクラス)」によって、装備・携行できる兵器や、キャラクターの「能力(スキル)」に差異がある。

     a)戦士(ファイター)

     b)司教(ビショップ)

     c)魔道師(メイジ)

     b)盗賊(シーフ)

    2.2.2  「戦士(ファイター)」は、最も一般的なクラスであり、標準的な突撃銃(アサルトライフル)を装備・携行することができる。通常の戦闘能力に優れ、比較的少ない経験値の獲得でレベルアップすることができる。多くのプレイヤーはこのクラスを選択する。「戦士(ファイター)」の中でも、狙撃のスキルを特化して上昇させたキャラクターは、「狙撃手(スナイパー)」と称されるが、これは俗称であり、ゲームシステム上の正式なクラス名ではない。

    2.2.3  「司教(ビショップ)」は、指揮能力にすぐれたクラスであり、「パーティ」を指揮することでその能力を発揮する。拳銃(ハンドガン)や軽機関銃(サブマシンガン)を装備・携行することができる。「司教(ビショップ)」のレベルアップには、非常に多くの経験値の獲得が必要である。レベル13を超え、高位聖職者(ハイビショップ)の俗称で呼ばれるようになった「司教(ビショップ)」は、戦士なみの戦闘能力を有することとなるが、その絶対数は非常に少ないという。

    2.2.4  「魔道師(メイジ)」は、強力な攻撃兵器を装備・携行することのできるクラスである。しかし一般の銃撃戦等には向かず、パーティの支援なしに戦闘行為を行うことが難しい。また「魔道師(メイジ)」が大型火器を携行することのできるレベルに達するには多くの経験値が不可欠であるため、多くの場合、専門の護衛用「戦士(ファイター)」が専従することとなる。高位の「魔道師(メイジ)」はRPGなどを装備することができるようになり、最大4発の弾頭を携行することが可能となる。「魔道師(メイジ)」がこのレベルになるとパーティの攻撃力は飛躍的に大きくなるが、同時に弾薬の補給費用も膨大になるため、ほとんどのパーティでは1人ないし2人程度の「魔道師(メイジ)」が参加するにとどまっている。

    2.2.5  「盗賊(シーフ)」は、斥候、索敵、地雷・罠(トラップ)等の発見・解除等を行う職業(ジョブクラス)である。「パーティ」に所属することでその能力を発揮するタイプの職業(ジョブクラス)である。携行火器には厳しい重量制限があり、短機関銃級の武器しか所持できない。

     

 2.3 システムキャラクター

    2.3.1  「アヴァロン」のゲーム空間には、いくつかのシステムが提供するキャラクターが存在する。それは一定のパターンによって活動し、プレイヤーとの関わりをもつ。

    2.3.2  「フラグ」は、当該フィールドの最終的なキャラクターであり、多くの場合重装火器をもつ戦闘車両や、軍用機などである。これを撃破することで「作戦終了」となり、このあと無事セーブポイントに到達すると、そのフィールドをクリアしたこととなる。

    2.3.3  「正規歩兵(トルーパー)」は、「アヴァロン」で最も標準的な敵キャラクターである。強力な突撃銃等で武装し、その戦力はあなどれない。たおすことによってある程度の経験値を得ることができる。

    2.3.4  「掠奪者(ルーター)」は、拳銃程度の火器を携行し、指揮系統をもたず、自動的に襲撃してくる雑魚キャラクターである。戦闘に関する練度も低く、弾薬さえ十分なら問題にならない相手だが、倒してもたいした経験値を得ることはできない。

    2.3.5  「住人(ニュートラル)」そのフィールドにおける「一般市民」といった役どころのキャラクター。戦闘能力はなく、戦闘状況から逃げまどうといった行動を基本とする。「住人(ニュートラル)」を殺傷すると、経験値減点等のペナルティの対象となる。

    2.3.6  「ゲームマスター(GM)」は、厳密にはゲームフィールドのキャラクターではなく、またそれが人工人格なのかプロバイダ側の担当者なのかは不明。ゲームをプレイしようとするプレイヤーとのインターフェースを担当し、「端末(ブランチ)」に設置してあるモニタに現れる。その相貌は、多くの場合初老の男性であるようだ。

     

     

3.その他

 3.1 フィールドのクラス

    3.1.1  戦場(フィールド)には、クラスC、クラスB、クラスAの3つのレベルが存在し、それぞれゲーム難度や獲得し得る経験値に差がある。プレイヤーは、自分のキャラクターのレベルによって、プレイするフィールドのクラスを決定する。

    3.1.2  「クラスC」は、初心者向けのクラスであり、コンバットシューティングかサバイバルゲームの延長のような内容でなる。

    3.1.3  「クラスB」は、「アヴァロン」本来のゲームスタイルを低レベルのキャラクターでプレイするためのフィールドである。得られる経験値は中程度。

    3.1.4  「クラスA」は、「アヴァロン」本来のゲームスタイルをプレイするための上級者向けフィールドである。強力な「フラグ」の湧出など、難度は高いが、得られる経験値は大きく、経験値を換金するようなプレイヤーは、このフィールドでプレイすることが必須である。

     

 3.2 転職

    3.2.1  プレイヤーが、自分のキャラクターのジョブクラスを変更したいとき、「転職(クラスチェンジ)」することが可能である。しかし、いままでのジョブクラスで獲得したスキルは保存されず、経験値も0からの計測となるので、メリットはあまりないといえる。

 

 


2001/02


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