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-- Saint Magical Critique --

第32話

「危険な恋のトライアングル」




主なゲストキャラクター

おなかぽんぽんだぞー、おーい水



 このあと、CDなどで『チャチャ』を代表する脚本家の一人になる山口宏氏の、初参加作品である。今から思うと意外なほど遅いのだが、ひょっとすると本放映を見てから参加を決めたのかもしれない。

 それはともかく、アクセス編四本の中でこの話を置いてみると、この話が「浮いている」。浮いているけれども、逆にもっとも『チャチャ』らしい話になっているのも確かだ。「しんぎたーい」とか、「うんぺっぺだよー」とか、しいねちゃんの妄想の繰り返しのお遊びとか(リーヤが一人勝手な世界にいるのがいかにも)、「もしもし」とか、ノロワレアーマーに追われてのほうきの迷走飛行とか(そのあと川から上がって服を絞っているチャチャがご愛敬)、体重計で悩んでいるどろしーとか、「ちからバカ」で落ち込むリーヤとか、わずかなきっかけからギャグに転がしてしまう演出はいかにも桜井さんらしい。ほかにもこれまた多数のチャチャファンを転ばせて某ネット上に「PPP」なる謎の組織を生むに至った大チャチャコスプレ小チャチャなんてのもあった。

 とはいえ、この話は(前回までまったくそんなそぶりもなかった)アクセスとどろしーの因縁を描くれっきとした設定編でもあるのだ。しいねちゃんを抱きしめるどろしーは、『チャチャ』全編を通じて一番かっこいい場面であるかもしれない。(それを考えると、みん先生の原作でのアクセスの弄ばれ方は少々気の毒でもある)

 だが、それを描く手法に「しいねちゃんの妄想」を使うことによって、そのシリアスな部分をそっくり包み込んでしまっている。24話も設定編を「全然関係ないギャグ」で描いてしまった話だったけども、佐藤さんの24話がある程度設定編としての筋を通した(大魔王とソーゲスの下りなど)イメージがあるのに対し、この話では設定編の部分を使って遊んでしまっている印象が強い。同時に次の34話に対する一種のパロディーとしても見ることができるのである。この取り合わせは24〜25話とも共通していて、チャチャにおける「設定編」が、他のアニメと比べても特異な位置づけにあったことを物語る。

 ついでにいえばこの回の敵・ノロワレアーマーも感情を持たないおかげでチャチャたちの話の方に介入しないで済んでいる。アクセスがいる以上そうなるのは自然なことでもあるのだが、山口脚本の場合「戦い」が実質「戦い」でなくなってしまう傾向が(偽物話だった45話を別にすると)ひときわ強いように思われる。このあとのパンダ大王にしろ、ハリケーンケンちゃんにしろ、(プリンセス編のあとだが)モスキーちゃんにしろ、戦うというよりは、誤解だったり変にチョッカイ出して遊んでいるという印象が強い。暗黒チャチャにしても正体の方は似たり寄ったりだったし。

 あと、ノロワレアーマーの部分で思ったのだけど、チャチャというのは意外にリーヤに対してわがままな一面があったりする。何か某ゲームの「わがままなお姫さま」を思い出したりしてしまう。(そういえば、『バウンティソード』の監督って山口さんだったっけ)幼なじみで遠慮がないといえばそれまでだが、「友情」をテーマの一つにしていた(らしい)作品に置いては新鮮な感じがしたことをつけ加えておこう。このあたりが36話でさらに発展されていくことになるのだが。

 新ED『チャチャにおまかせ』が使われ始めた回でもある。



■執筆:鈴谷 了



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