テイバー彗星情報(C/1996Q1, Tabur)
(96/12/20)
 今日早朝(12月20日)観測を行った。12月15日早朝以来5日ぶりの観測である。この観測では11月7日以来久しぶりに写真撮影を行った。ただし、彗星が暗いので焦点距離105mmだけで、露出時間は1分、2分、3分、5分で撮影した。過去、1987年末に焦点距離105mm、露出時間5分で当時明るくなっていたボレリー彗星(19P/Borrelly)を撮影し、9等級だった彗星の像を確認することに成功している。10等級より暗いと思われるテイバー彗星の像を確認できるかはわからない。
 望遠鏡では彗星は10等級、コマ直径2分だった。KenkoArtosでは彗星の像は確認できなかった。空の状態は最微等級5.5等、シーイングも透明度も良好だった。このため、望遠鏡で確認した彗星の像は確実と考えている。

(96/12/16)
 彗星はへび(頭)座とヘルクレス座との境界付近にあった。光度は9等から10等と見積もったが、これより暗いかもしれない。コマ直径は3分、拡散状だった。

(96/12/4)
 テイバー彗星はへび(頭)座に移動していた、高度は8等、コマ直径は8分で、さらに暗くなっていた。尾は北に10分ほどの短いプラズマの尾を確認できた。観測の限界が近づいているようだ。おそらく12月いっぱいで観測は終了するだろう。

(96/11/21)
 彗星はかんむり座γ星の北約1度の位置にあった。光度は7.5等、コマ直径は5分で、北に15分ほどの短い尾を観測した。彗星は次第に暗くなっているようだ。今日は月齢10で、そろそろ明け方の空でも月光の影響が気になる頃である。11月初めとは違って彗星がかなり暗くなっているので月光下の観測はたぶん無理だろう。

(96/11/19)
テイバー彗星はかんむり座α星ゲンマの北約1.5度の位置にあった。光度は7等、コマ直径は5分で北に20分ほどの短い尾が確認できた。明け方と夕方の両方の空で観測に成功している。

(96/11/17)
 彗星はかんむり座をゆっくりと南南東に移動している。光度は7等、コマ直径は8分。東の空に雲が多かったため、彗星の観測は充分にとれず、尾は確認できなかった。この観測で観測日数は28日、観測回数は30回となった(夕方の西の空と明け方の東の空の両方で観測できたときは観測日数は1日、観測回数は2回としてカウントしている)。

(96/11/16)
 テイバー彗星はかんむり座にあってゆっくりと南南東に移動している。光度は6.5等、コマ直径は8分で、北に1.5度ほどの短い尾を確認した。核から北にジェットが伸びているようである。結局現在までダストの尾は確認できていない。

(96/11/16)
 今朝のテイバー彗星の観測は目覚めが遅かったため、5時16分から5時22分と遅い時間になった。既に東の空が白み始めているのがわかった。しかし、テイバー彗星のあるかんむり座はある程度高い位置まで上っており、見つけるのは楽だった。彗星の光度は6.5等、コマ直径は7分で、北に1度ほどの短い尾が伸びていた。観測開始が遅かったため、双眼鏡観測だけで望遠鏡観測は行っていない。

(96/11/14-15)
 テイバー彗星はかんむり座をゆっくりと南下している。明け方の空の高度は日の出1時間前で地平線から10度ちょっとであるが、透明度に恵まれれば充分に観測可能である。ただ、私の家は東側を道路が通っており、街灯の影響をかわす必要がある。
 今朝の観測では彗星の光度は7等、コマ直径は7分、尾は確認できなかった。昨日の観測では2度ほどの尾を確認している。今朝の空の透明度は昨日に比べて明らかに落ちている。空が明るいので双眼鏡よりも倍率の高い望遠鏡のほうが明らかに見え味は良かった。
 彗星は明らかに暗くなりつつあり、次第に地球から遠ざかっていることを実感した。11月中は彗星の観測を続けようと思うが、どこまで観測できるかはわからない。12月の航海が最後の観測チャンスになるだろう。

(96/11/13)
 台風24号(Dale)は関東の東海上に抜け、日本付近は西から冬型の気圧配置になった。これにともなって関東では晴天が広がりるとともに北西の季節風が吹き始め、気温も急速に低下した。空の透明度は低空まできわめて良かったため、西の空に見えているテイバー彗星(C/1996Q1,Tabur)とヘール−ボップ彗星(C/1995O1,Hale-Bopp)の観測を行った。最微等級は3等から4等で、さすがに市街光の影響を受ける。
 テイバー彗星は現在かんむり座に見えている。光度は6等から6.5等、コマ直径は15分で、北に1度程度の短い尾が確認できた。さすがに暗く、小さくなっている。

(96/11/7)
 今朝の月齢は約25で、東の空に月が上っていた。しかし、月は細くなっており、月光の影響は少なかった。最微等級は5等である。既に北西の季節風は弱まっていたが、冷え込みは厳しかった。星は地平線近くまで確認できた。
  テイバー彗星は北東の空の地平線から10度ほどの位置にあった。彗星の天球上の移動は1日当たり1.5度ほどまで小さくなっており、昨日の夕方からそれほど動いていなかった。光度は6等、コマ直径は15分で、北に約2度のプラズマの尾が伸びていた。夕方には確認できなかった核も存在が確認できた。核光度は8等。双眼鏡観測のほか、望遠鏡観測、写真撮影も行う「三位一体」の観測に成功した。三位一体の観測は10月22日朝以来16日ぶりである。
  テイバー彗星は11月中は明け方の空の地平光度が10度程度であるが、空の状態が良ければ充分に観測可能であることが確認できた。月は間もなく夕方の空に回り、明け方の空に月光の影響はなくなる。23日朝までは月光の影響をかわせるはずである。彗星はこの間うしかい座からかんむり座へと移動するが、地球からも太陽からも遠ざかって急激に暗くなる。月末には9等級まで暗くなるだろう。おそらく今月中が眼視観測は最後のチャンスになるだろう。

(96/11/6)
 現在テイバー彗星(C/1996Q1,Tabur)は夕方の北西の空と明け方の北東の空の両方で観測できる。そして位置の関係上11月の中頃までは夕方の西の空のほうが地平光度が高くなる。今日この夕方の空のテイバー彗星の観測を行った。この彗星の観測は10月26日朝以来11日ぶりになる。観測場所は海洋研究所で、市街光の影響を強く受け、しかも冷たい北西の季節風をまともに受ける中での観測だった。
 彗星はうしかい座を南東に進み、東の端に近いうしかい座δ星の北約2度の位置に移動していた。光度は6等、コマ直径は15分、北に30分角の長さの尾が伸びているのを確認した。核は確認できなかった。強烈な市街光の影響だろうか、尾が短くなった。ダストの尾は確認できない。
 テイバー彗星の軌道であるが、観測期間が伸びて放物線仮定でない軌道が計算されている。楕円軌道が計算されており、離心率は0.998程度である。

(96/10/26)
 10月23日早朝にテイバー彗星を観測して以来関東では天気が悪かった。特に南関東で天気が悪く、一昨日から今日まで断続的に雨が降った。これに対して北関東では天気が良かったが雲が多い傾向があったようである。昨夜は南関東では雨が降ったが北関東では天気の崩れは小さかった。明け方には晴天が広がり、3日ぶりのテイバー彗星の観測を行った。
 テイバー彗星はうしかい座λ星の東約1.5度の位置まで移動していた。光度は5.5等。コマ直径は15分と目測した。尾は北に3度ほどプラズマの尾が伸びているのを確認した。望遠鏡観測も行ったが、ジェットは確認できなかった。満月の月光の影響と、天文薄明に入っていたこともあり、写真撮影は行っていない。
 天気は日の出後に北関東でも崩れ始め、日中は厚い雲に覆われた。そして西よりの風が強くなった。寒冷前線の通過であろう。

観測をまとめたのもはこちら


東京大学海洋研究所 大洋底構造地質部門
東京大学大学院 理学系研究科 地質学専攻 D1

原口 悟


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