’87年1月26日神奈川県民ホール
〜財津和夫ソロ・コンサート〜
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このソロ・ツアーは東京公演もあったらしいのに、なぜわざわざ神奈川県民ホールへ行ったんどろう?
元旦にソロ・アルバムをリリースした財津のソロ・コンサートでチューリップ、ビートルズ、ソロからの選曲はこの時期としてはまあ順当な選曲か。<セットリスト>
当時は全然知らなかったが京田誠一と嶋田陽一がバックにいて、この二人はその後の財津あるいはALWAYSのアルバム・プロデュースもしくはアレンジャーとして深くかかわる人たちだった。
「償いの日々」はレコードと同じく原みどりとのデュエット。なんの絡みも無く歌うときだけ突然現れ、歌い終わると名前だけ紹介されて引っ込んでしまった。まさしくこのためだけに呼ばれたという扱いだった。当時はトライアード・レーベルの新人歌手で、財津もただ単に新人売り出しの一環として相手を選んだだけなのだろうが(ちなみに「償いの日々」は原みどりのアルバムにも収録されています)。動きの限られたロボットのような振りが印象的な人だった。「夜のヒットスタジオ」にも一緒に出演したこともあった。
原みどりさんは現在も活動されているようで、公式ホームページもあります。
「YESTERDAY」などはあまりにも有名な曲なので、ビートルズ好きを自認するミュージシャンはむしろほとんどやらない曲だと思うけど、それをピアノの弾き語りという余りにもわかりやすい方法で、こぶしをまわしながら歌ってしまうところがすごいというか(笑)...この頃はそれだけ自信に満ちていたのだろうか。
「THE LONG AND WINDING ROAD」などポールの曲もやっているが、かつて九州のポール・マッカートニーといわれた財津和夫もこの頃の嗜好は完全にジョン・レノンに移行していたようだ。「IMAGINE」と「ACCROSS THE UNIVERSE」をエンディングに持ってきて、スクリーンに「IMAGINE」の歌詞を映すなどの演出がそれを象徴している。
しかし「ビートルズ」のこうした捉え方を見ていると最近のメディア、特に活字媒体でビートルズが取り上げられるときに財津がさっぱり相手にされないのがなんとなく分かるような気がする。昔はとにかくビートルズといえばチューリップ、財津だったのだが。
ところで財津の「リンゴ嫌い」は有名な話だが、チューリップ解散後におこなわれたビートルズ関係のあるイベントで、一緒に出ていた杉真理と調子に乗ってこの馬鹿は二人は(よりによってビートルズのイベントで)「世の中にリンゴ・スターを好きな人がいるなんて信じられない」とまで言っていた。客席にむかって「リンゴが好きな人は手を上げてください」と言ったとき確かに手を上げた人はいなかった。しかしそこまで言われて素直にハイと手を上げられる人はいないぞ。
香月利一さんは著書の中で「世界中でリンゴのことを嫌いなミュージシャンはいない」とまで書いていたが、いたんですね(笑)、極東に二人。
当時のリンゴ・スターの一般的なイメージといったら「大して才能も無いのに、元ビートルズというプライドばかり高い男」と言ったところか。そのあたりが財津の嫌いなところなのかもしれないが、リンゴ・スターがいなかったらビートルズもなかったというのも事実。
ただ、このことで(こういうイベントでこういうことを言ってしまうセンスはともかくとして)財津のことをとやかく言うつもりは無い。もともと昔の財津はこのくらいのことは平気でいう人だったのだ。むしろ最近の”人のよさそうなおじさん”ぶりのほうが残念だ(ただし以来ビートルズ・ファンとしての杉真理は信用しない事にしている)。
小田和正なんていまでも”とんがって”て全然いいおじさんていう気がしない。ほぼ同い年の財津和夫も少しは見習って欲しいものだ。
アンコールが終わって財津が引き上げるとき、女の子が一人(かなり豪華な)花束を手渡そうとしてステージに近づいていったのだが、係員に止められてしまった。何度も何度もステージ近寄ろうとする彼女を強行に阻止しようとする係員、気づかずさっさと引き上げてしまった財津...ちょっと(暗)な気分で会場を後にした。
山下達郎のコンサートに行った時、山下達郎は自分でファン一人一人からプレゼントを受け取り、ちゃんと自分で全部持って引き上げていった。チューリップのコンサートではいまだに花束を渡すのさえ御法度なのと比べたら...いまだに”アイドル・グループ”だからなのかもしれないが、基本的には気配りの差ではないかと。山下達郎ってホント気配りの人だと思った。あの(超大物)山下達郎なのに。
この時期財津としてはソロとしての人気の度合いを計っていたのではないかと考えられる。その後直ぐ解散したのではないところを見ると、ソロよりはまだ”チューリップ”のほうがましということだったのだろう。そうでなければZ’s TULIPでわざわざソロ活動する意味なんてないもんね。