Paul McCarney's Standing Stone Cover Photo

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ポールの純クラシック作品、第3弾

ポールが作曲した新しいクラシック作品『スタンディング・ストーン』のスタジオ レコーディングアルバムが、日本先行で 9/26 にリリースされた。
ポールの純クラシック作品としては、91年に初演されたロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック・オーケストラ創立150周年記念として依頼され、指揮者カール・デイヴィスとの共作で完成させたオラトリオ『リヴァプール・オラトリオ』、 95年に初演されたピアノ小品曲『リーフ』に続く、3曲目の作品となる。 今回の作品は、ポールの作品を(ビートルズ時代から通して)一貫してディストリビュート している EMI レコーズの設立100周年記念作品として依頼されたもので、 ポールは4年の歳月を傾け、地球の起源〜生命の誕生〜人類の足跡をたどった 70分を超える「交響詩」を完成させた。

「交響詩(Symphonic Poem)」という形態をとったことについて、ポールはクラシック 専門雑誌のインタビューで次のように語っている。

「これは交響曲じゃ無くて、交響詩なんだ。交響曲って言うと、 4楽章構成ではあるけれど、明確なストーリー(物語)としての要素は 持っていないだろう? 物語という要素を持てば、それは音の付いた詩(tone-poem)と呼ばれる傾向に あるんだけど、多くの人達は tone-poem というと、単に詩と考えてしまうんだ。 けれど、交響詩(Symphonic Poem)と呼んであげれば、 音楽がくっついていることがわかると思うんだ」

作品の制作過程

EMI 創立100周年記念のクラシック作品

1993年、ポールは1997年に創立100周年を迎える EMI のための、記念の作品を EMI CLASSICS 社の Richard Lyttelton 社長から依頼された。 EMI にしてみれば、ポールは他のミュージシャンにつきものの販売網の移動を伴う レコード会社移籍が無く、ビートルズ時代から一貫して作品のディストリビューションを EMI グループに任せてくれているドル箱スター。 EMI が自身の創立記念作品をポールに頼むのは、ポールというアーティスト自身と EMI というレコード会社との絆の強さを証明するものと言える。
ただ、この時期、ポールは自身のソロアルバム Off The Ground を完成させ、 同時に89〜90年に続く2度目のワールドツアーが行われていた。 充実かつ多忙なポールの活動もあって、この時点では EMI としては 「良くて 15 分くらいの作品が受け取れれば」と考えていたそうだ。 しかし、1991年に初演された『リヴァプール・オラトリオ』で、著名なクラシック作曲 Carl Davis との共作を通して純クラシック作品作りの魅力を醍醐味を味わっていた ポールは、壮大なシンフォニック・ポエム(交響詩)として作品を完成させた。

とっかかりはケルト風の叙事詩の創作から

ポールはビートルズ時代から曲の中にストーリーを持ち込んだ作品が多い (例えばRocky Roccoon や Maxwell's Silver Hammer など)が、 クラシック作品でもその傾向はそのまま引き継がれている。
オラトリオ、すなわち聖譚曲は通常宗教曲だが、 『リヴァプール・オラトリオ』の中で描かれたのは、 ポールが生まれ育った時代のリヴァプールでの生活だった。
そして、今回の作品でも創作のスタートはストーリーの要素を持った叙事詩だった。
ポールは、60年代からの友人でもある詩人の故 Allen Ginsberg の勧めで、 ニューキャッスル在住の詩人 Tom Pickard と共作した。 詩の創作に際して、ポールはパーキンソン病によって亡くなった旧友、 Ivan Vaughan の死が大きな影響を与えていると語っている。 Ivan Vaughan は、ポールをジョンと引き合わせた人物だった。
「ポールの人生を変え、決定づけたともいえる彼の死をどう捕らえているのか、 それを語るために、そして彼のために詩を書いたことが、その後、 スタンディング・ストーンの骨格となる叙情詩を書くきっかけになった」 とポールは語っている。
書き出しの地球の創世にあたる部分の着想のきっかけは、ポール自身が94年に描き上げた 2枚の油絵 Standing Stone Story にある。(この油絵は CD のブックレット中に 写真で収録されている。) テーマは「時代の夜明け」、描かれているのはアイルランドの Meath 州の Newgrange にそびえ立つ石門だった。

ピアノによるデモ〜コンピュータでの作曲

ポールは叙事詩のテーマをもとに、ピアノでベースとなるテーマ作りに入った。 『リヴァプール・オラトリオ』では、ポールが口ずさんだメロディを Carl Davis が ピアノで弾き直しポールに確認して採譜する、という完全な二人三脚スタイルを とっていたが、今回は始めの段階ではタッグを組む相手は全く決まっていなかった。 そこで、今回の『スタンディング・ストーン』では、はじめはピアノによる レコーディングデモをジャズ・ミュージシャンである Steve Lodder が譜面に起こす という形態をとっていた。
その後、ポールはキーボードをコンピュータに接続し、鍵盤からリアルタイム入力した データを譜面の形で出力する方法に変更。 この名誉ある仕事を託されたのは、Apple 社のコンピュータ Macintosh と Midi/Audio シーケンスソフト CUBASE だった。 ポール自身の(ロック・ポピュラーミュージック界における)新作 Flaming Pie の ドキュメンタリービデオである『In The World Tonight』の中では、 ポール自身がパソコンを操作して、その一部を披露するシーンもあった。
しかし、ちょっとした入力の揺らぎを無理に譜面に反映させようとするコンピュータの 宿命とも言える癖によって、プリントアウトされた譜面はとんでもない代物だった。 この譜面の整理を託されたのが、『リヴァプール・オラトリオ』でも一部のアレンジを 担当した David Matthews だった。

バックアップチーム名は『ポリトビューロー』

作品を創作していく過程で、クラシックの正式な教育を受けているわけではないポールを 多くの人がバックアップしている。
サクソフォン奏者兼作曲家の John Harle は、作品の原案を具体化していく過程で 大きく貢献している。ポールの弁によると、Harle は作品の構成に対する アドヴァイスをしてくれたほか、コンピュータのアウトプットを整理する際にも 一部助力している。
最終段階になると、著名で多彩な作曲家、Richard Rodney Bennett がチームに加わり、 スーパーヴァイザーとしてオーケストレーションの統括を行った。
David Matthews、John Harle、Richard Rodney Bennett によるポールのバックアップ チームには、なぜか「ポリトビューロー(ソビエト連邦共産党政治局)」という チーム名が授けられたが、これは「ポール」と「ポリトビューロー」の語呂合わせから 出て来ていると思われる。 チームは、自分たちの個性を押しつけること無く、他の大作曲家の手法を真似ることを 要求することもなく、マッカートニーの作品のオーケストレーションを手助けした。

アビーロードでのレコーディングはロンドン交響楽団

こうして1997年3月3日〜4日、完成した『スタンディング・ストーン』のリハーサルが ビートルズのホームグラウンドとも言えるロンドンのアビーロード・スタジオで行われ、 譜面とコンピュータの中で奏でられていたメロディーが、 はじめてフルオーケストラで演奏された。
続いて4月、Lawrence Foster 指揮でフルオーケストラ構成の London Symphony Orchestra と200人構成の London Symphony Chorus によって、 アビーロード第1スタジオでレコーディングが行われ、今回のアルバムに収録された。 レコーディング・プロデューサーは『リヴァプール・オラトリオ』に引き続いて John Fraser が担当した。

そしてライブ…今秋ロイヤルアルバートホール

ライブでの初演は、97年10月14日、ロンドンのロイヤルアルバートホールで開催される EMI 100周年記念チャリティ・ガラ・コンサートにて、レコーディングと同じく Lawrence Foster 指揮で London Symphony Orchestra によって初演される。
このコンサートでは、同曲の他に、前作のピアノ曲 A Leaf、そしてポールの手による 以下の3つの小品も同時に披露される予定になっている。 また、アメリカでの初演は 97年11月19日、ニューヨークのカーネギーホールで 行われ、この模様は http://www.standingstone97.com/ で RealPlayer で見ることができる。

Story of Standing Stone

『スタンディング・ストーン』の詩は、ポールのルーツであるケルト風の要素を持つ 叙事詩で、4編のパートから成り立っている。
各楽章に付けられたタイトルとストーリーは、次のようなものになっている。
第一楽章:混沌の時代を過ぎて
Movement I. : After Heavy Light Years
地球・生命誕生前夜。その後、火が起こり雨が降り、細胞が成長し、人類が誕生する
  1. ファイアー/レイン
    Fire / rain. Allegro energico
  2. セル・グロウス
    Cell growth. Semplice
  3. `ヒューマン'のテーマ
    `Human' theme. Maestoso

第二楽章:驚き目を覚ます男
Movement II. : He Awoke Startled
地球の様子に驚き戸惑う人。瞑想の瞬間を経た後、クリスタル・ボードに乗り、 航海に出発。迷いながらも、やがては解き放たれる
  1. メディテーション
    Meditation. Contemplativo
  2. クリスタル・シップ
    Crystal ship. Con moto scherzando
  3. シー・ヴォエージ
    Sea Voyage. Pulsating, with cool jazz feel
  4. ロスト・アット・シー
    Lost at Sea. Sognando
  5. リリース
    Release. Allegro con spirito

第三楽章:神秘的な色彩が溶け込み柔らかな地形線を形成
Movement III. : Subtle Colours Merged Soft Contours
形容し難いような穏やかなるその地。その後、安全な避難所・港/ 一本石の柱(スタンディング・ストーン)に辿り着き、安らかなる一時が巡ってくる。 やがて使者(メッセンジャー)が訪れ、悲嘆、昏睡、衰微/闇の時を迎える
  1. セーフ・ヘイヴン/スタンディング・ストーン
    Safe haven / standing stone. Pastorale con moto
  2. ピースフル・モーメント
    Peaceful moment. Andante tranquillo
  3. メッセンジャー
    Messenger. Energico
  4. ラメント
    Lament. Lamentoso
  5. トランス
    Trance. Misterioso
  6. エクリプス
    Eclipse. Eroico

第四楽章:ストリングがかき鳴らされ、ホルンが吹かれ、ドラムスが叩かれる…
Movement IV. : Strings Pluck, Horns Blow, Drums Beat
衰微/闇の時を迎えた地球の様子。やがて、天上の栄光、 気取りのない素朴なダンス、愛を囁くデュエット、祝いの席・饗宴の時
  1. グローリー・テールズ
    Glory tales. Trionfale
  2. フューガル・セレブレーション
    Fugal celebration. L'istesso tempo. Fresco
  3. ラスティック・ダンス
    Rustic dance. Rustico
  4. ラヴ・デュエット
    Love duet. Andante intimo
  5. セレブレーション
    Celebration. Andante

Catalog Data

Paul McCartney's Standing Stone
Jap: ToshibaEMI/EMI-Classics TOCP-50300 2,548yen 97/Sep/26
UK: (CD)EMI-Classics 5564842 97/Sep/29
UK: (AnalogLP)EMI-Classics EL 5564841

関連リンク

EMI Classics Sir Paul McCartney: Standing Stone
本作の CD リリース元である EMI Classics の Standing Stone 紹介 Page です。 EMI Classics の Web Page では、ポールは全部 Sir 付で書いてあるのね…

Paul McCartney's Standing Stone 97
11/19 に行われたアメリカでの初演を紹介している公式 Web Page です。
VH-1 による中継映像の一部を Real Video で見ることができるほか、 The Making of Standing Stone などの映像もあります。

MPL Communications Paul McCartney Page
ポールの楽曲出版会社、MPL Communications のポールのBiography pageです。 ポールに関する Discography や Offcial Fanzine、FAQ などが揃っています

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Update - November 25 1997