「ここにいてもいいの?」

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ドンッ!
黒い黒い黒い黒い漆黒の絶望という名の羽根で剥き出しの生身を覆い鈍色を放つ鋭く柔らかな金属製らしき太く細い刺を何本も何本も何本も外と裡へと突き出してあたかもそうすることでしか自我を守れないのだと信じきっているようなポーズは無論のこと無意味ではあったけれど硝子の心の持ち主はただそうすることしかできないかのように未来を見据えるべき両の目を固く固く固く閉じ運命を切り開くべき白い両の手でか細く脆い自らの両肩をしっかりと抱きかかえ朧な未来へと続く道に踏み出すべき両の足をぎゅっと抱えて少年はねっとりとした闇の中にただ蹲っていた。

ドンッ!
白い白い白い白い天井を落ち窪んだ眼窩の奥の黄色くどんよりと濁った眼球を動かしもせずただ呆然と眺めているのかいないのかわからぬ様子でどろりと混濁とした意識のなかいつ終わるとも知れぬ検査という名の蹂躪を甘んじて受け続け受け続け受け続け憎悪という名のラベルがべったりと貼りついた架空のナイフを周りすべての他人に向けると同時に汚されたと信じきっている醜い自分の肉体に深々と食い込ませ薔薇色のこれも想像上の血を噴き出しながら人形の少女は身じろぎもせずただじっとベッドの形をした棺の中に横たわっていた。

ドンッ!
水。水がゆっくりとたゆたっている。
還るべきところ。還すべき命。
ヒト?ニンギョウ?まるで灼けつくよう。
白い少女がつとその顔を上げた。
その目、その貌。

ドドンッ!
そして、ゆっくりと細く白い光条が塗り込められた闇の内臓を切り裂いていく。光は輝きと力強さを増し、闇は狂ったかのように断末魔の悲鳴を上げる。軋り。叫び。うねり。怨み。様々なモノを撒き散らして、滅びゆく闇を敢然と断罪する光、光、白き光。光に照らされた少年と少女らの瞳に映るものは果たして。

…ここにいてもいいの?


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