4.海外における宮崎・高畑アニメ事情 〜国別編〜

 日本以外の各国で宮崎・高畑アニメがどのようにリリースされ、どう受けとめられているかについて、順番に見ていくことにします。各国に住んでいるファンのみなさんに、突然でまた短い時間で書いてもらったので、情報の間違いや思いこみがあるかもしれません。そのあたりを頭に入れて、各国からのレポートを楽しんでくださいね。


★★★★★★ 北米編 ★★★★★★

【アメリカ】
 アメリカには、MLのメンバーも数多く住んでいます。そのわりにあまり恵まれていないような気もします。細かい情報も探れば、いろいろありそうですが、今回は簡単に私がまとめてご紹介します。
 「ナウシカ」のコミックスは、VIZ社から出版されていて、来年の2月には完結する予定です。ビデオは、「カリオストロの城」「Warriors of the Wind」「となりのトトロ」の3本がリリースされています。トトロは、結構売れたみたいです($20しないんだもの、そりゃ売れますよね)。
 まだまだ、アニメは子供が見るものという意識や、ディズニーアニメがよいアニメなどというのが一般的ですが、大学を中心としたJapanimationファンは急速に増殖しつつあります。しかし、意外と(ホントに意外でした)、宮崎・高畑作品は、ほとんどリリースされていません。リリースされない理由は、MLでの一般的な理解によると、徳間書店はトトロのように大ヒットにするために大きな配給会社と組みたいと考えているが、大きいところからはまだ色好い返事が返ってこない。一部のアニメファンのために小さな会社と契約するよりは、何年でも出さないで待っていようという企業戦略のようです。本当のところはわかりませんが、企業論理としてはなかなか納得がいく(ファンとしては、私、怒っています)説明じゃないかと思います。
 余談ですが、アメリカのファンって、すごく開放的で、アニメ映画見るときも、そりゃもう大変なんですって。ミシガン大学のとやまりょうこさんがアニメクラブの「ラピュタ」上映会に行ったときなんか、400人で、手をたたいたり、口笛吹いたりとそれはそれはにぎやかだったそうです。パズーがシータを助け出したときなんか、本当に「おおさわぎ」だったそうです。そして、最後に熱烈な拍手のなか、上映会は興奮のうちに終了したそうです。

【ハワイ】
 もちろん、ハワイはアメリカですが、日系人が多い、大陸から離れている、教えてくれそうな友だちがいた、9月に私が旅行に行ったという諸々の理由により、別立てにしちゃいました。
 御存知のように、ハワイにはアジア系、特に日系の人が多く住んでいます。今回情報を寄せてくれたのも、Dennis Fukushima君です。日本関係の本屋、CDショップ、レンタルビデオショップがたくさんあって、当然、宮崎・高畑アニメについても、日本語版、英語版の本やビデオを買ったりレンタルすることができます。「ナウシカ」の編集版「Warriors of the Wind」は、ケーブルTVで放送されたので、多くの人が見ているということです。また、当然、アメコミショップがあって、VIZ社から出ている英語版「ナウシカ」も売られています。私もハワイに行ったときに、この手のお店に行って、マンスリーで出されている「ナウシカ」を記念に1冊買ってきました。
 ハワイでは、日本のマンガやアニメはわりとポピュラーなようです。でも、そのわりに、イベントとかはあまりないみたいです。TVでは英語吹き替えが、レンタルビデオショップからは字幕版を楽しむことができるみたいです。
 ハワイにもアニメクラブはありますが、小さいクラブがほとんどです。ときどき、アニメクラブ主催の上映会が図書館やコミュニティセンターで行われますが、宮崎・高畑アニメの上映は、いつも評判がいいです。そんな集まりでは、アニメに関するいろんな情報交換が行われますが、多くの人はそれほど詳しいわけではありません。「アニメージュ」や「ニュータイプ」など日本の雑誌を読んでいる人もいますが、それでも1、2カ月遅れになってしまいます。
 Dennis君が言うには、アメリカ本土ではアニメビデオも手に入りにくいので、大勢で集まってみることが多いが、ハワイでは入手は比較的容易なので、家で一人や友だち数人と楽しむことが多いということです。
 それでも、日本語がわからないので、米国の会社が日本から権利を買って、英語版を出すまで、ファンは待っていなくてはなりません。今は、ドルに対して円が強くなってしまったので、配給会社が権利を購入するための金額が実質的にかなり高額になってしまったという、米国のアニメファンには不幸な経済環境も、普及しない原因のひとつにあげてくれました。

【カナダ】
 カナダは、マンガやビデオの市場としては、米国とほぼ一体と考えることができるでしょう。カナダからは、ワーテルロー大学アニメ研のメンバーのKarl Nikolai Zaryskiくんにお願いします。「セーラームーン」の英語ビデオを出せ出せと、権利を持っている会社に働きかけている忙しい合間を縫っての登場です。
 カナダで、宮崎・高畑アニメが映画館で上映されたことはないだろうとのこと。全国的なロードショウがなかったことだけは確かだそうです。発売されているビデオは、アメリカと全く同じで、「となりのトトロ」と「カリオストロの城」、そして、「Warriors of the Wind」だけだそうです。
 カナダで、宮崎・高畑作品を見る唯一の方法は、ファンサブ・テープ(ファンが作った無許可の字幕ビデオ)を手に入れるか、大学やSF大会で上映される小規模で非公式なショーで見るしかないのです。
 正式なビデオは、徳間書店が許可を与えない限り、ここカナダでは見ることができません。そして、徳間書店はどこか大きな配給会社が関心を示すのをひたすら待っているようですが、今の所その気配はなさそうです。だから、彼は、自分が持っているファンサブテープを友だちに見せて、宮崎アニメのファンを増やしているそうです。


★★★★★★ 欧州編 ★★★★★★

【イギリス】
 イギリスのファンは、同じ英語圏であるアメリカのファンに比べてずっと恵まれています。 ラピュタの英語吹き替え版は2回もテレビで放映されるし、今年の夏には宮崎駿監修の字幕版「ナウシカ」が上映されるしと、アメリカのファンをうらやましがらせています。

【フランス】
 フランスでは、1995年の6月に「紅の豚」が封切られました。当初の計画では、1994年の2月に公開される予定だったので、フランスのファンにとっては、待ち望んだ劇場公開でした。残念ながら、客の入りは思わしくなかったようです。配給会社は「この興行が当たれば、宮崎アニメ全作品を公開する」なんて、景気のいいことを言っていたそうですから、期待していたファンは残念だったに違いないでしょう。
 フランスでは、毎年「アヌシー国際アニメーション・フェスティバル」が開催されます。この映画祭では、1994年「紅の豚」、1995年「平成狸合戦ぽんぽこ」と2年連続ジブリ作品が大賞を受賞しているので、アニメージュにもその記事が掲載されているので、御存知の方も多いと思います。

【スウェーデン】
 宮崎・高畑作品は、スウェーデンでは、これまで映画館で公開されたことはないそうです。ビデオは、「風の谷のナウシカ」のおぞましい編集版「Warriors of the Wind」がスウェーデン語で発売されているだけです。
 Perくんは、何年かまえに、スウェーデンの映画配給会社に「となりのトトロ」や「魔女の宅急便」を配給してくれるように働きかけてみたそうですが、どこも関心を示さなかったそうです。 日本のアニメは急速に世界に普及しつつありますが、スウェーデンではまだまだだそうです。スウェーデンでは、日本のアニメは暴力的だというふうに考えられていて、アニメは子供が見るものと考えられているスウェーデンでは受け入れられないのです。でも、スウェーデンでは、性的な描写は(場合によっては、子供でも)、OKだそうです。でも、暴力的な表現はダメだそうです。
 今年になって、ケーブル/衛星放送の映画チャンネル「Cable 1000」で、「となりのトトロ」と「紅の豚」がスウェーデン語に吹き替えられて放送されました。でも、翻訳と声優はひどかったようです。

【スペイン】
 スペインからは、カタロニア地方に住むAlbert Sala君に紹介してもらいます。彼は、「宮崎駿メーリングリスト」に入ったばかりなんですよね。彼の自己紹介のメールの返事に、「スペインの様子教えて」なんて、聞いちゃいました。やはり、宮崎・高畑氏のアニメは、それほど普及していないみたいです。
 スペインで今一番人気のある漫画は、「電影少女」です。宮崎作品では「紅の豚」が発売されています。小さい頃に「アルプスの少女ハイジ」をテレビで見たことがあるそうです。でも、「ナウシカ」も「ラピュタ」も他の面白そうな作品は、スペインではまだ見ることができないそうです。
 と、ここから本題からはずれ、マンガの話となります(要するに、宮崎・高畑アニメの話題はこれくらいしかないのでしょう)。日本のコミックスを20冊くらい持っているそうです。関係ないけど、面白そうだから、Albert君が持っているスペイン語版のタイトルをあげるね。「電影少女」「タッチ」「気まぐれオレンジロード」「エンジェル」「人魚の森」「オリオン」「ブラックマジック」「アップルシード」「ドミニオン」「めぞん一刻」など。これだけ出ていて、なぜ、「ナウシカ」ないのでしょう。

【ドイツ】
 ドイツからは、大のジブリアニメファンのMartin Opitz君が解説してくれます。
 「名作シリーズ」は、ドイツでは繰り返し放送されています。
 「ハイジ」は、70年代から繰り返し放送されてきました。実を言うと、ほんの数週間前にも放送していましたよ。みんなにアニメをひとつだけあげてごらんって言うと、きっと真っ先に浮かんでくるのが「ハイジ」だということです。それくらい、ドイツでもよく知られているアニメです。「ハイジ」は、それはもう完璧にドイツ語に翻訳されていて、テーマソングもドイツ語だそうです。このテーマソングは、ドイツ人の姉妹に歌われて、チャートインしたこともあります。「ハイジ」は、「母を訪ねて三千里」とともに、Martin君の青春のシリーズだそうです。
 「母を訪ねて三千里」も、「ハイジ」と同様、何回もテレビで放送されています(Martin君は、このアニメも好きで、特にペッピーノがかわいいって。ストーリーもとても好きなんだって)。
 「赤毛のアン」は、今までテレビで2回放送されたことがあります。(Martin君は、これもお気に入りで、次々と展開するストーリーにどきどきしていたようです。最後のエピソードが好きだそうです)
 名作シリーズでは「あらいぐまラスカル」も放送されていました。その他には、「名探偵ホームズ」なんかも放送されました。
 「セロ弾きのゴーシュ(Goshu der Cellist)」も、80テレビで2回ほど放送されたそうです。 ビデオが発売されている作品は、「Sternenkrieger」「Hardyman raeumt auf」の2つです。それぞれどんな作品かわかります? 「風の谷のナウシカ」「カリオストロの城」です。
 「風の谷のナウシカ」のドイツ語版の吹き替えの出来はとてもいいということです(ナウシカを14回も見ている熱烈なジブリファンのMartin君が言うのだから確かでしょう)。Martin君が悔しがっているのは、編集版である英語版の「Warriors of the Valley of Wind」から吹き替えてしまったことです。日本版から吹き替えていたら、完璧なものになったのにだって。そんなに出来がいいのなら一度見て見たいものですね。Martin君にナウシカのことを喋らせると、スペースがいくらあっても足りないので、この辺で次の作品に行きましょう。
 「カリオストロの城」の吹き替えも出来はいいみたいですが、カットされているかもしれないとのことです。日本語版を見たことがないので、わからないそうです。なんてもったいない...
 ついに、マンガ「風の谷のナウシカ」がドイツ語で登場! ドイツの有名なコミックスの出版社カールセン社がナウシカのマンガの翻訳出版権を獲得したそうです。Martin君は早くも興奮気味です。その出版社が以前に「アキラ」のマンガを出したそうですが、その翻訳はいい出来だったそうですから。マンガが売れて、アニメの完全版「ナウシカ」が映画館で上映されたら最高ですね。その出版社は、「アキラ」権利を獲得して、素晴らしい吹き替え版を作って、ドイツの映画館で上映したそうだから、ナウシカにもチャンスありってとこですね。と、ステキな話ばかりが続くと、おきまりの「それだけは勘弁してくれ」のコーナーです。出版社は、「ナウシカ」という素晴らしい名前を、その方が日本人の名前らしく聞こえるという理由だけで「ナオミ」に変えてしまったのです。どう思います、みなさん。

【イタリア】
 イタリアからは、「アニマニア」という同人誌を作っているクラウディオ君です。
 イタリアで一番人気のあるのは、「アルプスの少女ハイジ」だそうです。70年代の後半から何度もテレビで放送されたそうです。
 「未来少年コナン」も放送されて好評だったそうですが、残念なことに、全国ネットではなく、ローカルネットのみの放送だったそうです。でも、数年前にグラナタプレス社がビデオ化の権利を獲得して、ビデオ全7巻を発売しています。でも、あんまり売れていないみたいです(しくしく)。しかし、現在、全国ネットのテレモンテカルロがコナンを放映しているそうです。12月18日は、第3話の放送だ!
 国営放送のRAIが1980年代なかばに、「風の谷のナウシカ」を放送したことがあります。大成功だったと思うでしょ? 残念ながらダメだったんです。イタリアでは、アニメっていうと、みんなディズニーのこととしか思わないんです。そう、ディズニーだけ。で、RAIの担当者はどうしたか。「ナウシカ」をじょきじょきと切り刻んで、なんとシリーズものにしてしまったのです。1回何分だと思います。5分ですよ、5分。でも、イタリアのナウシカファンも負けてはいません。LDの映像と、イタリア語の吹き替え(なぜか出来がよかった)を組み合わせて、ようやくまともなものを見ることができたそうです。今でもこの10年も前に放送された「素晴らしいシリーズ」のことを覚えているファンがいて、クラウディオ君は、つい数日前にそんなナウシカファンと出逢ったそうです。
 「ナウシカ」のマンガは、さっきも出てきたグラナタプレス社が発行しています。A4サイズの23巻で、各巻50ページです。値段は5000リラ(320円)と、イタリアのマンガとしてはちょっと高めなんだそうです。でも、ファンは迷わず買っているそうです(当然)。残念なのは、ナウシカのファンはまだまだ少ないことです。イタリアのファンは、全く知らない宮崎駿の変わった描線を持った名作よりも、「気まぐれオレンジロード」や「ドラゴンボール」などの「軽い」マンガの方が好きなのです。:-((( 事実、グラナタ社はナウシカのマンガを発行することによって、多額の損失を出しました。それでも、グラナタ社はナウシカを発行し続けました。そしてついに、今年の夏に最終巻が出ました(パチパチ)。彼らもナウシカが本当に好きなんですね。
 この他に、宮崎・高畑作品で広く知られているものは、「太陽の王子ホルス」と「名探偵ホームズ」です。
 ファン活動としては、高畑作品の「火垂るの墓」は、Yamato Videoが去年出しました。また、去年、広島と第二次世界大戦を題材としたテレビの特別番組の中で、野坂昭如氏のインタビューと一緒に、いくつかのアニメのシーンが放送されていました。
 これ以外の作品は全く知られていません。イタリアで唯一の創作アニメ・マンガ雑誌「Kappa Magazine」に数カ月前「宮崎駿の新作アニメ『耳をすませば』近日登場!」という風に書かれていましたが、それ以後は記事も出ていないそうです。
 でも、状況は変わりつつあるらしいです。
 同人誌「アニマニア」では、ジブリの作品にイタリア語の字幕をつけて、みんなに見せたいなんて思っているそうです。


★★★★★★ アジア・オセアニア編 ★★★★★★

【香港】
 香港での宮崎作品の話題は、Keng Fai Chu君にロンドンからお願いしましょう。香港では、宮崎アニメはとても人気のようです。ちょっと、興奮気味のレポートですが、彼の宮崎アニメに対する思いが伝わってきそうです。本人の口から説明してもらいましょう。

 「宮崎」という名前は、香港の若い世代(14〜25歳)にとっては、「楽しさ」を意味しています。宮崎作品は、ボクたちの子供時代そのものです。宮崎氏は、香港の若い世代の間では、非常に尊敬されており、確固たる名声を築いています。宮崎アニメは、ビデオショップでは常に求められていて、いつも成功を約束されているようなものです。宮崎アニメは、エンターテイメントを超えています。まるで、美しさ、心地よさ、喜びに関する神の啓示のようにも感じます。
 香港では、航空会社のキャセイ・パシフィックがスポンサーとなって、全ての宮崎作品をテレビで放映するという特別番組を毎週流しています。宮崎氏の作品は、香港とマカオに住んでいる若者に夢を与えてきました。香港の若者にとっては、宮崎氏はスクリーン上にボクたち子供の物語を描くことを通じて、喜びをもたらしてくれたお父さんのようなものです。ボクたちは宮崎作品を見ることを通じて、自分の中にある純粋さや楽しさを再発見しているのです。ボクたちは体は大きくなったけれど、宮崎作品を見ると、子供時代の純粋な夢が今でも必要なんだということを改めて思い出します。そして、まだまだ、子供の時のように、夢や理想、そして真の友情を必要としているんだということに気づかされるのです。
 香港やマカオでは、宮崎作品はビデオで売っています。また、ポスターも売られていて、もちろん一番の売れ行きです。ナウシカのテーマは、広東語に翻訳されて、ポピュラーソングにもなりました。ハイジの主題歌も同じく広東語に翻訳されていて、これは彼のお母さんのお気に入りだそうです。
 おそらく、香港の人々が最初に出会った宮崎作品は「アルプスの少女ハイジ」だろうということです。現代の人間が、これほどまでに、自然の美しさや子供の純粋さ、そして友情の尊さに対する純粋な感性を持っていることが信じられませんでした。初期の頃から、宮崎氏は愛、それも純粋な愛を持ったアーチストとして知られていました。その作品は、子供の心に純粋な喜びを運んでくるのです。南アフリカから来たボクの友人は、ハイジのかわいく、すばらしい表情に驚いています。この美しい作品を見た人は、いろいろなことを思い出すのですのです。登場人物は素晴らしく、木や、羊や、犬や、建物さえも、宮崎氏の絵筆にかかると、美と愛の存在となってしまうのです。
 香港の全ての世代の人々が、宮崎アニメの次の作品がリリースされるのを心待ちにしています。ボクたちにとっては、宮崎氏は、「Father of Dream」です。アニメを通じて、宮崎氏の純粋さ、愛、夢がボクたちの心の中に流れ込んでくるのです。宮崎氏の名前は、人気があり尊敬された名前として、香港の子供の心の中にしっかりと刻み込まれているのです。

香港からは、もうひとり、Shun CHAN君に、今度はデータ的な側面から解説してもらいましょう。

<劇場公開>
「天空の城ラピュタ」
 英語吹き替え、中国語字幕バージョン  1987/6/26 - 1987/7/16
 広東語吹き替えバージョン       1987/7/31 - 1987/9/10
 配給収入 1300万香港ドル

「風の谷のナウシカ」(「Warriors of the Wind」とは別物)
 日本語の音声、英語/中国語字幕   1988/2/12 - 1988/3/10
 配給収入 1070万香港ドル

「となりのトトロ」
 日本語の音声、広東語字幕      1988/7/15 - 1988/8/17
 配給収入 1100万香港ドル

[火垂るの墓」            1989/7/22 - 1989/8/23
 配給収入 370万香港ドル

「魔女の宅急便」           1990/1 - 1990/2
「おもひでぽろぽろ」         1991/12
「紅の豚」              1992/12
「平成狸合戦ぽんぽこ」        1995/1 - 1995/2

【フィリピン】
 フィリピンからは、ナイスミドルのIsagani Riveroさんに登場願いましょう。フィリピンでは、宮崎・高畑アニメのファンはまだまだ少ないようです。
 アニメとマンガに関する限り、フィリピンはアメリカと同じような状況にあるといえます。まず、テレビで放映されたり映画館で上映されるメインストリームのアニメと、それだけでは満足しない「ヲタク」アニメがあるということです。アメリカと似ているもう一つの点は、フィリピンでも「ドラゴンボール」と「セーラームーン」が大人気というところです。また、「仮面ライダーブラック」や「パワーレンジャー」などの戦隊ものも人気です。
 メインストリームには、宮崎駿作品がこれまで放映/上映されたことはほとんどありません。フィリピンでは、高畑勲氏の方が有名です。それは、去年テレビで「フランダースの犬」が放映されて、たくさんの子供たちが好きになってしまったからです。
 ヲタクアニメに関しても、とても悲しいことですが、状況はあまり変わりません。フィリピンで一番の人気は、高橋留美子さん(らんま1/2)です。宮崎・高畑ファンもいますが、そんなに多くはありません。

【オーストラリア】
 オーストラリアでは、日本のアニメはまだまだ普及していません。合法的に見ることが出来るアニメは、英語に吹き替えされたものだけで、そのほとんどは、セックスと暴力的なものばかりです。
 一般のオーストラリア人は、日本のアニメって、セックスと破壊行為と、殺人ばかりのマンガだと思っています。オーストラリアの会社は、家族みんなで見ることができる宮崎、高畑アニメをリリースしようとはしていません。
 「Manga Video」や「Kiseki Video」のような会社による暴力アニメの猛烈なマーケティングのせいで、宮崎・高畑作品のように芸術的な作品は、市場を形成できないでいます。一般の人は、ディズニー・アニメだけが家族向けのアニメだと思っています。
 オーストラリアでは、宮崎・高畑アニメは、「Warriors of the valley of Wind(「風の谷のナウシカ」の吹き替え、大きく編集されたバージョンです))」が、何年も前に発売されただけです。
 オーストラリアにある日本の領事館は毎年、無料で日本の文化的な映画を上映する「日本映画祭」を開催していますが、少数の観客しか集まらないのが常でした。しかし、人々に家族向けのアニメを上映するという道がのこされていました。パース市では、日本映画祭では「火垂るの墓」が上映されましたが、これが、宮崎、高畑アニメが一般に上映された唯一の例です。
 オーストラリアでは、アニメファンクラブに入っていないと、宮崎・高畑アニメを見ることができません。パース・アニメクラブ(JAFWA)では、2、3カ月に1回は、宮崎・高畑作品を上映しています。この上映会には、クラブの外の人も見に来ます。この地域に住んでいる多くのアニメファンだけでなく、ここで働いていたり、住んでいる日本人も見に来ます。
 オーストラリアには、SBS(Special Broadcast Service)というコマーシャル抜きで政府が経営しているTV局があります。ここは、オーストラリアに住んでいる他の国の人々のためや、オーストラリア人に他の国の文化がどんなものかを紹介するために、いろんな国の番組を放映しています。「ゴキブリたちの夜(?)(Twilight of the Cockroaches)」を放送したことがあります。オーストラリアのアニメファンの間には、宮崎・高畑アニメを放送してもらおうと議論が盛り上がりましたが、お二人の作品の放映権はとても高くて、とても買えないということでした。
 オーストラリアでもはやく宮崎・高畑アニメのような繊細で芸術的な作品を楽しむ人が増えたらいいのにと願っています。でもその前に、一般の人はアニメは暴力的なものだと思っていますので、まず最初にその偏見をなくしていくことが大事かもしれません。まじめなアニメクラブは、この問題を何とかしようと頑張っていますが、でも本当にそうしようと思ったら、この国にアニメを普及させようという企業が出てこないとだめですね。
 「となりのトトロ」の劇場公開、ビデオ発売がアメリカでは絶賛されているようですが、将来は、オーストラリアでも同じようにリリースされることを望んでいます。



 ここまで、12の国・地域における宮崎・高畑アニメの状況について整理してきました。このような現状は、これまであなた方が思っていたものと同じでしたでしょうか?それとも、意外だったでしょうか? 私は当然、スタジオジブリにも徳間書店にもがっぽり儲けていただいて、新たなる作品に向かってほしいと思いますが、もうすこし、何とかならないもんかなぁと思います。
 三蔵法師が苦労して天竺まで行ってお経をとってきたのはいいけれど、全部サンスクリット語で書かれていて、中国の人には読めませんでした、なんて、救われませんよね。
 どうです、もし宮崎・高畑アニメがサンスクリット語でできていたとしたら...        
         少なくとも、私には残酷すぎます。

 今度出すときは、この章が喜びの声で埋まっているのを祈りながら、世界めぐりを終えることにします。