無謀な富士登山(その1)
きっかけ
きっかけは、会社の先輩のこの言葉。
おまぁ、人間なら富士山登っとかにゃぁいけまーが!
(訳:あなた、人間なら富士山に登るものですよ。)
 
 そっかぁ、人間なら登らなくちゃいけないのか。人間修行の身としては登らなくては! …と、安直に富士登山を決めたのでした。
 非常に安直に決めたので、準備も適当でした。たぬきは、普段から山登りやトレッキングをするアクティブな生活を送っていません。当然、登山に必要な装備など持っているはずもなく、とりあえず揃う物でなんとかすることにしました。
登山にあたって準備した物は以下の通り。
  • 靴 … 普段、町中で履いているGTホーキンスのトレッキングブーツ
  • 服装 … ジーンズに長袖のシャツ(脚にまとわりつくジーンズは山登りに不向き)
  • 明かり … 懐中電灯(あとで友人に、言えばヘッドライト貸してあげたのに、といわれた)
  • 雨具 … 唯一山登り仕様のカッパ(とっても助かりました)
  • 酸素 … 近所のダイエーで購入
  • 食料 … 母上お手製のおにぎりとミネラルウォーターのペットボトル数本
 これだけを見ても、いかにいーかげんな計画だったかがわかると思います。
 明かりなんて懐中電灯ですよ。実際に山登りを始めると、まわりの登山者はみなさんヘッドライト装着で両手は空けてあるか、片手に杖を持ってます。しかし、たぬきは懐中電灯で片手がふさがっているので杖なんて持てません。登山しているあいだ、杖が使えたら楽だろうなぁ、と何度思ったことか。かくして、無謀な富士登山は始まったのでした。
登山開始
 夜道を車で登山口の五合目を目指します。御来光狙いのため、出発は深夜を考えていました。途中の道は、ついさっきまで雨が降っていたらしく、濡れています。「登る途中で降られなければいいけど」という心配をしながら、五合目の駐車場に到着。
 いざ、車を止めようとすると、どこにも空きがありません。富士山に登れるのは夏の限られた間だけなので、登山者が集中して混み合うのです。この駐車場に来るまでに、途中で路駐している車を沢山見かけましたが、自分もその列に加わるしかないようです。1キロほど駐車場から下ったところで、やっと路中の列が切れたので、その後に駐車しました。
 雨は降っていないものの、濃い夜霧が出ているのでカッパを着用して登山口を目指します。駐車場から1キロほど下っているので、それだけ余分に登らなくてはなりません。なんか、損した気分。
 やっと、登山口にたどり着きましたが、既に気持ちは「帰ろうかなぁ」になってます。
しかも登山口から5分も歩かないウチに右のふくらはぎがツリました。前途多難な予感です。
夜霧の中で
 最初こそ、「駐車場空いてねー」、「こむらがえりかよ」、「夜霧が冷たいよ」と、帰りたいオーラ放出しまくりでしたが、周囲の人たちが登るペースにつられてなんとか登りつづけます。
 その周囲の人たちの数が、ハンパじゃありません。
 登る前は、暗い夜道をひとりでとぼとぼ…なんて想像してたのですが、実際には、登山道に行列ができてぞろぞろと登っていきます。しかも、ちょっとした急坂な箇所になると渋滞ができるほどです。まぁ、そのおかげで懐中電灯一本しかなくても、周囲の人たちのヘッドライトに照らされて、わりと明るい中をのぼることができました。
 つらかったのは、周囲の景色が全く変わらないこと。山を登る人のヘッドライトの列こそ見えますが、それ以外は夜霧に包まれて星さえ見えません。普通の山登りなら、周囲の景色で気分を盛り上げるということもできるのですが、深夜、夜霧に包まれての登山は単調な作業でしか有りませんでした。
 ところが一瞬だけ、強風に煽られて夜霧が晴れた瞬間がありました。眼下に広がる裾野の夜景。眼前に光の絨毯がひろがります。周囲からあがるどよめき。けれど、すぐにまた濃い夜霧に包まれてしまいました。晴れていれば、あの光景を眺めながら登ることが出来るんだなぁ。そう思うと、夜霧がさらに恨めしく思われます。
 この霧の問題はそれだけではありません。自分たちは御来光を目指して登っているのですが、朝までに霧が晴れなければそれを見ることもかないません。霧が晴れることを祈りながら登り続けます。
夜が明けて
 八合目を超えたあたりから、くらくらとめまいがするようになってきました。これが噂に聞く高山病というやつかぁ、とか感心しながら、こまめに酸素を吸入しながら登山を続けます。
 そんなふうに頻繁に休憩をとっていたので、九合目あたりで夜が明けてきました。
 霧の方も晴れてくれないので、御来光はおあずけです。御来光がムリとわかったので、急ぐ必要もなくなり、更にペースはおちます。九合目では、これまで無視してきたバカ高い缶コーヒーを買って飲む程の余裕(?)っぷりです。
 暖かくて甘〜いUCCの缶コーヒーを飲んでいると、先程までのくらくらが嘘のように治まりました。どうやら、高山病などではなく、単に血糖値が下がっていただけみたい。昨晩から、水以外なにも採っていないのだから、当然と言えば当然です。気が緩んだオイラはは、更にもう一本奮発しちゃいました。
山頂到着
 血糖値も上がり元気になったオイラは登り続け、やっと山頂に到着しました。
 登り続けている間は体を動かしているから暖かかったのですが、山頂に到着してじっとしていると寒くてたまりません。しっかり休みたかったオイラは、山頂のレストハウス(といっても山小屋程度のもの)に入りました。
               

 食堂のようなお店に入って、なにも注文しないというのも心苦しいので壁のメニューに目をやります。
 主だったメニューはこんな感じ。
  • おしるこ … バカ高円
  • ラーメン … ゲロ高円
 メニューこんだけ?しかも、この値段は…とビビるものの、小心者のオイラはおしるこを注文。
               
 すんごい薄いおしるこでしたが、体は温まりました。

 ふと落ち着いて周囲を見回すと、山小屋の中は暖をとる人で激混みでした。
               

 隣のおねーさんがラーメンを注文したので厨房の方に目をやるとオッチャンが、出前一丁の袋をあけてるところでした。
 インスタントラーメン? あんな高いのに!?
 山の上まで運ぶ労力や水が貴重なことを考えると仕方ないのかな。
 やがて運ばれてきたインスタントラーメンをおねーさんは美味しそうにたべてました。
 人が食べてると美味しそうに見えるんですよね。危うくオイラも注文してしまうところでした。
霧が晴れて
 8時頃になって、やっと霧が晴れてきました。山小屋を出て、登山道の方を見ると登ってくる人の列が見えます。
               
 山小屋にいた人たちも、続々とお鉢まわりに出発するようです。
               
ご休憩?
 オイラも続いてお鉢まわりに出発しました。…が、とっても眠い。夜を徹して登ってきたので、当然と言えば当然です。
 山小屋を出て、少し歩くと別の山小屋が見えてきました。
               
 看板を見ると、宿泊の出来る山小屋のようです。しかも、昼間の休憩も可能とのこと。1時間千円でお休みさせてもらうことにしました。

 ちょっとだけ…のつもりが気が付くと12時になってました。
 8時からの休憩なので4時間で4千円?
…とびびりながら、お会計に向かうと
 ご休憩なので1000円ですね。
びっくりして、4時間寝ていたことを言うと…
 じゃぁ、2千円でいいです。
…とのこと。黙っていれば千円だったのに失敗しっぱい。このあたりは結構いいかんげんなようです。
お鉢まわり
 体力も復活して、お鉢まわりに出発です。オイラは反時計回りにまわることにしました。
 眼下に雲が広がります。本当なら飛行機などからしか見られない景色が、目前にあるのはすごい迫力。
               

 草木が生える高度限界をこえた標高なので、荒涼とした景色が広がります。
   

 富士山火口で一番高くなっているところに、測候所が建っています。
    

 測候所の壁には今日の天候が掲示されていました。
                 
 気温16℃というと冬の気温です。

 記念撮影もして、反対側の坂を下ろうとすると…。
               
 凄い急坂でした。こちら側から登らなくて良かった。ふぅ。
そして下山
 火口をひとまわりしたので、下山開始です。お鉢まわりを始めたときには晴れていた霧が、またたちこめて来ました。
               

 八合目あたりまで来ると、高山植物が見られるようになります。
               
 景色に変化が出てくるので、山道が楽しくなってきたかな。

 そして、昨日登り始めた五合目まで帰ってきました。
               
 すっかり霧に包まれています。
 これで、全て終了…と思ったら。そうでした、車はまだここから1キロ下なのでした。
 もうひとふんばり。ふぅ。
まぁ、がんばれ
オマケ
 山頂にあったトイレ