PIANO

Sergei Rachmaninoff



ラフマニノフ(1873-1943) はロシアで生まれ、その後アメリカに渡って活躍した 19世紀末から20世紀前半の作曲家・ピアニストです。一応ロマン派後期の最後の方に属する作曲家です。 曲を聴いてみればわかりますが、抒情的とよく言われます。 感傷的な気分になれる曲が多いのが特徴といったところです。 さらにその奥に鐘の音をはじめとするロシアの音楽の表現が随所に見られます。 特に後期の作品では、アメリカに渡ってからも祖国に対する思い入れが消えなかったラフマニノフの心意気が伝わってくるかのようです。

ラフマニノフはやっぱりピアノ協奏曲第3番だ、と言う人は最近かなり多くなってきました。 今年公開された映画「シャイン」なんかで3番がよく出てきたのも記憶に新しいところです。 3番のメロディの持つ華麗さ、底を流れるようなロシアの旋律、魅力的な所は数知れない曲です。 ただ、ラフマニノフの曲の中でよりラフマニノフらしさがあるのは、 ピアノ協奏曲第2番だと個人的には思っています。 どちらかといえば第3番はアメリカ人好みの曲とも言えます。 僕だったら第3番よりもむしろ第1番を選んでしまうかもしれません。

ピアノを弾いている手前、ラフマニノフも弾きたいと考えたのは当然のことですが、 僕のようなへたっぴには非常に難しいんです。プレリュードであれだけ苦労するようではちょっと・・・。

ちなみに僕の結構聴く(聴いた)曲は次の通りです。 「ある程度なら聴いた曲」も合わせるともっと多いのですが、 特に有名な曲を並べてみます。独断と偏見が結構入ってしまうことになりますが、 お許しを。

    ピアノ協奏曲第1番(Op.1)
この曲は初期の作品のため、十分ラフマニノフらしさが出ているとは思えませんが、 いかにも若いときの作品のような感じの情熱のこもった曲です。 ちょっとグリーグっぽいななど思ったのは僕だけでしょうか? 第1番はラフマニノフ19才の時の作品で、モスクワ音楽院時代の作曲です。

    ピアノ協奏曲第2番(Op.18)
この曲はラフマニノフの代表作です。 映画の主題曲に使われたなんて話を聞くと、ムードあるからな、 なんて思ってしまいますが、 へたをすると BGM としての存在感しかなくないなんて言われてしまうのが、 この曲の最大の短所です。でも、この曲はとりあえずムードで聴く。 聴いていくうちに、曲の中のひとつひとつの構成要素の重要性にも目が向くようになっていきますよ。
    ピアノ協奏曲第3番(Op.30)
ちょっと前に、映画の「シャイン」で使われてからは2番よりむしろ3番の方が有名になってしまったかも。 ピアノを弾く立場からは「こんなの難しくて弾けないな、どうやって弾くの?」の一言です。 第1楽章もいいですが、特に第3楽章のフィナーレは盛り上がってかっこいいです。 いかにもアメリカ人が好きそうな曲で、 きっと彼はアメリカに渡った後この曲を弾く毎に拍手喝采を受けていたことでしょう。

    ピアノ協奏曲第4番(Op.40)
ピアノ協奏曲としては最後の曲です。40年に改訂された版が通常演奏され ますが、改訂が悪影響を及ぼしたのか、ちょっと技巧に走りすぎの曲になっています。 アメリカに渡ってピアニストとしての生活がメインになってからの曲なので、 全体的に、他のピアノ協奏曲とはだいぶん雰囲気が違います。 個人的には改訂前の27年版の方がもとのオリジナルの良さが残っていて良いです。

    パガニーニの主題による変奏曲(Op.43)
これは晩年の曲です。 ピアノ協奏曲第4番よりもこちらの方が名曲に感じます。 数あるパガニーニの変奏曲の中では一番有名な部類ではないでしょうか? 特に第18変奏は有名です。

    前奏曲(Op.3-2, Op.23, Op.32)
有名なのは Op.3-2 と Op.23-5 ですか。 他にもかっこいい曲やきれいな曲は何曲もあります。 僕が挑戦していて昔から苦労しているピアノ曲です。 個人的には 2,5,6,7 番あたりは好きですね。

    練習曲集「音の絵」(Op.33, Op.39)
練習曲でもすごく難しい曲です。特に Op.39 はそうです。ちょうどこの曲を作曲した頃は ロシア革命の頃で、祖国を捨てる直前と言われていますので明るい曲はほとんどないですが、 その中にもラフマニノフらしさが現れていて、はっとさせられます。また、曲に対するイメージ が湧きやすい曲集でもあります。特に Op.39-1 なんか、 まるで 50 年以上前のヨーロッパの街中を夜中に昔の箱型の自動車で疾走しているような曲です。

    ピアノソナタ2番(Op.36)
ラフマニノフのピアノ曲の最高峰といったところでしょうか。 第1楽章は難しいところが多く苦労しそうなですが、 第2楽章は旋律のきれいな楽章ですし、第3楽章の最後は圧巻です。 この曲の第1楽章は、どういうつもりで作られたのかわからないのですが、 時代背景からこのような曲を作曲する必要性にせまられたのでは、と勝手に解釈しています。

    組曲1番(Op.5)
2台のピアノのための曲をラフマニノフは何曲か書いていますが、その中でも初期の曲です。 鐘の音のモチーフを用いた、いかにもロシア的な曲で、 しかもラフマニノフの初期の曲風にショパンの影響を残した感じが加わった、 と言えばぴったりしてそうです。 結構ラフマニノフ好きの人には2番より1番の方が好き、という人も多く、 ラフマニノフを語るには欠かせない曲の一つとなります。 いずれにせよ、ラフマニノフがロシアの人であること、 そしてロマン派後期の人であることを再認識させてくれる曲です。

    組曲2番(Op.17)
2台のピアノのための組曲で、 ピアノでここまで効果を持たせることができるのかと感動してしまいました。 第2楽章と第4楽章は特にお薦めです。二台のピアノがオーケストラと化します。 第2楽章はロマン派後期の音楽としてのピアノの演出の限界に挑戦したような印象を受ける曲です。 また、第4楽章はかっこいいの一言に尽きます。 きっと、演奏者にとっても弾きがいのある曲でしょう。 弾きたい曲のひとつですが、二台のピアノで合わせるのが大変そう。

    交響曲第一番(Op.13)
初演が失敗して本人が生きている間は演奏されなかった曲です。 でもなかなかどうして決して駄作ではない曲だと思います。 この曲もロシアを感じさせる曲です。

    交響曲第二番(Op.27)
抒情性豊かな交響曲です。 ラフマニノフの交響曲の中では一番ポピュラーです。

    交響曲第三番(Op.44)
アメリカで晩年作曲された交響曲。 ロシアへの思いが感じられる曲です。

    交響詩「死の島」(Op.29)
ベックリン作の絵画「死の島」から得たイメージを曲にしたものです。

    交響的舞曲(Op.45)
英語名で「シンフォニックダンス」と呼ばれることもあります。 オーケストラ用に編曲したものと2台のピアノで弾くものとがあります。 組曲よりもずっと後に作曲された曲ですが、この曲もロシアを感じさせる名曲です。 終楽章は特にオケ版で聴きたいところです。

    悲しみの三重奏曲第一番
初期の作品で、作品番号もついていない曲です。単一楽章で構成される曲です。

    悲しみの三重奏曲第二番(Op.9)
チャイコフスキーの死を悼んで書かれた曲です。

    チェロ・ソナタ(Op.19)
チェロとピアノのためのソナタです。 チェロだけでなく、ピアノも楽しめる曲です。

    ヴォカリーズ(Op.34-14)
ラフマニノフは結構声楽曲も作曲しているのですが、その中でももっとも有名な曲の一つです。 ラフマニノフらしい短調のきれいな曲です。



ここまで偉そうに言いたい放題書いてしまいました。 今までに、これはと思った CD を今後紹介していきたいと思っています。 ラフマニノフが好きな人、 興味を持った人、 よくわからないけれど何となく聞きたくなった人、 疑問がある人 etc 是非メールを下さい。

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