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マイクロプロセッサについて一言



性能を求められる通信系や画像処理用途などのデータ処理用プロセッサでは、MIPS 系が健闘しています。 有名なのは R4101/4300 系や R4650/4700 系のプロセッサや PlayStation に使用されている R3000 系です。 特に現在 100MHz〜200MHz までの周波数帯では、64-bit CPU の R4XXX 系の性能がもっとも発揮できます。 この周波数帯では、これらのチップは相当優秀なチップと言えます。 逆に 32-bit CPU の R3000 系は、100MHz 未満の周波数帯に属するチップで、 この周波数帯では他のアーキテクチャでも優秀なチップが存在するため特にアドバンテージはないようです。 また、通信系では最大手のルーターメーカーである CISCO 社が MIPS 系を採用していることや、 画像処理技術を必要とするハイエンドプリンタで MIPS 系が多く使用されていることも主流となっている原因と言えます。 また画像処理が得意な Nintendo64 にも R4300 が使用されています。 そう言えば、PlayStation も R3000 系で、ゲーム機関係は MIPS の天下ですね。 ただ、MIPS 系は NEC、東芝、NKK、LSI Logic、IDT、Siemens 等多くの会社が供給しているだけに、 どちらかというと同じ系列のプロセッサ同士で競争している印象を与えます。

MIPS が強い理由は構造が単純なためチップサイズを小さくでき、性能の割に安い製品を供給できるからのようです。 確かに、命令セットの考え方、スーパースカラ構成を持つチップが少ないこと、MMU 機能の単純さ、 どれから考えてもアーキテクチャが教科書にでも書いたように単純な構成をしており、 比較的小さなトランジスタ数でかなりの性能のプロセッサを実現できています。 あと、MIPS 系の強いのは FPU でしょうか。特に最近出た R5000 などは FPU 重視の姿勢を感じます。 やはり、設計した MIPS 社の親会社 Silicon Graphics 社の画像技術の影響を感じます。

他のチップでは、Motorola 社の PowerPC 系が比較的強いようです。 特に PowerPC 603e 系は優れた性能を持っています。 ただ、68000 系を設計した Motorola 社としてはまだ不満の残るできでしょう。 そのほか、パソコン向けと重なりますが、 PowerPC 750 や PowerPC 604/604e 系もチップとしては優秀なのです。 しかし、プロセッサ開発の方向性を見るとちょっと的が絞れていない印象を持ちます (というよりやっぱりワークステーション・パソコン向け?)。 プロセッサの基本構造で凝りすぎた事と、その割に MMU 等に構造的に弱い点を残していることが弱点です。 方向性の異なるワークステーション向けの構造から離れ切れず中途半端な点が見られることも弱みです。 キャッシュが 4-way とか 8-way を実現しているだけにもったいないです。 いずれにせよ今後 Motorola も力を入れることになるかもしれません。 その時どんなチップが出てくるか楽しみです。

それ以外のチップではあまり話を聞きませんが、 SUN の microSparc/Sparclite 系あたりもこのジャンルに入れたい部類でしょうか。 ただ、レジスタ・ウィンドウとかを使っている場合ちょっとプログラムは作りにくいかもしれません。 やっぱりちゃんとしたワークステーション向けのプロセッサなのでしょうか。

これらのチップを用いてシステムを作るなら、やっぱり MIPS 系のチップがお薦めです。 何といっても安い! 100 MHz 以上の動作周波数で値段が 4 桁というのは以前なら考えられなかったことです。 たとえば、NEC なんか R4300 を任天堂向けに 1000 円台の前半で供給するなんて新聞に発表しているのを見ると、 こんなに安くて良いのだろうかと思ってしまいます。 でもきっと他のメーカも似たような感じなんでしょうねえ。 大口だけでなく、ばら売りでも安く売って欲しい!

100 MHz そこそこのスピードで良いからとにかく安くシステムを作りたいというのであれば、 お薦めは NEC の R4300 か NKK の R4645 あるいは 米国 IDT 社の R4640 ですね。 32-bit バスなので、比較的簡単にシステムを作れます。ただし、32-bit バスだけのことはあって、 性能は悪くなりますので注意しましょう!あと、どれもマルチプレクス・バスなのでバス分離が必要です。 また、これらのチップは内部のキャッシュサイズもトータルで 16KB 〜 24KB 程度であまり大きくありません。 性能的な犠牲は覚悟の上で使用しましょう。 外部バスの周波数も内部動作周波数の 1/8 まで落とせるので、 性能が落ちても良いなら結構容易にシステムが組めます。 それとこれらのチップは QFP のパッケージ品がほとんどなので、個人で作るには半田付けが大変!! これらのチップはどれも一長一短があって、優劣つけ難くどれでもOKです。

R4300/4645/4640 の 2 倍程度のシステム性能を得たいと思うなら、絶対 R4700 です。 NKK と IDT で出しています。 なにしろちょっと前までワークステーションのメイン CPU として幅を利かせていたんですからねえ。 それと PGA パッケージ品もあるので、ちょっと一台作る程度には良いですね。

さて、これらのプロセッサを使うときコンパイラはどれを使えばいいかというと、 やっぱり GNU の C コンパイラを使うのがいいでしょう。ただですからね。 他のコンパイラはお金を出さないと手に入りません。それも高価です。

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