レコードの素晴らしさ



実は今 CD を聴いている。それも、大昔の録音の。 先日、「SERGEI RACHMANINOFF The Complete Recordings」という 10 枚組みの CD を買ってしまった。 そう、僕の好きなラフマニノフの自作自演集である。ラフマニノフ自身が演奏に参加している曲を集めてある録音だ。 本人の作曲した曲だけでなくショパンをはじめ多くの作曲家の曲を集めており、内容もピアノ曲から交響曲まで多彩である。 ラフマニノフは実は第二次大戦中まで生きていた人で、アメリカには彼自身の演奏の録音が結構残っているのである。 モノラルの雑音混じりの録音で一万円以上するのは、ちょっと高いが、クラシックの作曲家の生の演奏が聴けるのは嬉しい。 ショパンでもモーツァルトでも、みんな録音できるようになる前にこの世を去っているから彼らの演奏を聴くことは不可能である。 その点ロマン派後期ながらつい半世紀程前まで生きていたラフマニノフは演奏の録音が今でも聴ける貴重な人なのである。 今までも何回もラフマニノフの自作自演集は出ているが、まとまった全集に近い形式のものを買ったのはこれが初めてだ。

今世紀前半のピアノの演奏は一般に癖のある演奏が多いらしく、決して模範的とは言えないかもしれないが、 それでも聴いているうちに感動してきてしまう。 オーケストラにしろピアノにしろ、演奏しているのはまず今は生きていない人たちなのである。 この人たちの意志はすでに今はないが、 それでも演奏をして聴衆に伝えたかったものはこの通り立派に伝わっているのである。 自分の命を超えて世の中に残すことの素晴らしさを考えざるを得ない。 何しろ、この CD の中で一番古い録音は 1919 年で、あのタイタニック沈没からたった 7 年後である。 僕自身がなかなか残せないものだけに、静かに感動しながら耳を傾けてしまうのである。

さて、これから 75 年前のラフマニノフ自作自演のピアノ協奏曲でも聴きますか・・・。昔の人たちの想いを想像しながら。



syasuki@yk.rim.or.jp